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秘密結社ギャラクティカダーク 世界征服を企む組織はホワイト企業だった  作者: ソメヂメス
始動編 ギャラクティカダーク活動開始
12/220

サイコウエーブ

 ミリオール37世の遺言も終盤に入ってきた。


「……繁栄と滅びの歴史を止める事が不可能だとは思いたくは無い。イーマブルグ、もしくはこのメッセージを見ている心ある知的生命体の方々。願わくば生命と文明を守るためにギャラクティカダークのメインコンピュータに残したミリオネル王国の科学、文化を受け継いでいただきたい。……全宇宙の生命に幸あらんことを!」


「「幸あらん事を!」」


 ほぼ全員が右手を突き上げ声高らかに叫びメッセージは終わった。


「父上ぇぇぇぇ!」


 号泣するイーマブルグ殿下の周りに文系スタッフ、ミリオネル王国からの部下たちが集まり殿下を激励する。みんなが殿下を支持し、国王の意志を継ぐ誓いを立てている。一見美しい光景だが……。


「幸四郎さん、幸四郎さん!」


 今日子が和の一番外で腕を組んで険しい顔をしている幸四郎さんを引っぱって出入り口に連れて来ると俺は、感動と決意に打ち震えている一同に声をかける。


「みなさん! イーマブルグ殿下が落ち着くまで2時間ほど解散しましょう。午後5時に再度集合ということで」


「了解した、一同解散! 殿下、お茶の用意をしますのでこちらへ」


 ルーク様が号令をかけ全員退出すると俺たち3人はバイオプラントへ向かう。到着すると幸四郎さんが鋭い眼光で俺と今日子を見つめる。


「お前らは解ってるんだろう? ほぼ全員が洗脳状態にあった理由を」


 そう、ミリオール陛下の遺言は聞いている人間の精神に作用し、彼の理想こそが真理であり、嫡男であるイーマブルグ殿下に忠誠を誓う事が当然だと思うように細工されている。


「まあ、2時間もすれば崇拝レベルからは脱するだろうな。最後のメッセージだからメインコンピュータの生体メモリーに大量のサイコウエーブを込めて残したんだろう」


「まあ殿下が生きていれば忠実な部下を作るため、漂着した先の知的生命体が見つけた場合は悪用されないためだろうね」


 今日子がやれやれって感じの仕草で椅子にもたれかかると、幸四郎さんが俺に詰め寄る。


「真人、サイコウエーブってのは何だ? 人間を洗脳する効果があるのか?」


「今回はそういった用途で使用されましたが本来は精神が作る波動です。自分の脳波を使って特殊能力を使ったり、他人と共鳴させることで様々な効果を得る事が出来るんですよ」


 幸四郎さんが真剣な顔で聞いてる横で今日子はチョコ菓子をボリボリと食べている。デリカシー!


「地球人のは微弱だから、虫の知らせ、ツーカーの仲、神ってる、みたいに根拠の薄い事象しか起きませんがミリオネル王家の後継者は極めて強い人身掌握のサイコウエーブを持っているんです。仮に名付けるなら「超カリスマ」とでもつけましょうか」


「今回は王様が意図的に洗脳作用があるように調整してたけど、真人さんと僕が若干だけど介入したから、2時間もしたら効果が薄れると思うよ。まあ僕は命の恩人だし楽しいから、そんなの抜きでミリオネル王国と殿下のために頑張るけどね」


「ただ、俺たち以外があのままイーマブルグ殿下と一緒にいれば彼のサイコウエーブと共鳴して軽くて崇拝、最悪狂信者レベルまでいく危険性もありましたね。まあ軽〜く彼らに共感して力になりたいくらいのレベルに落ち着くでしょう」


 まあ、俺もミリオネル王家の面々には協力する気なんだけどな。スポンサーだし好きな研究させてくれるし、器が大きいところとか結構好きなんだよな。


「ところで何で俺たちにはそのサイコウエーブってやつが効いてないんだ? 何か理由があるんだろう?」


 至極まともな幸四郎さんの質問に答える、これからのために必要なことだしな。


「俺たちもサイコウエーブを使ってるからですよ、今日子の「電脳人間」俺の「バイオスキャナー」、幸四郎さんの嘘を見抜く能力だってサイコウエーブです。イーマブルグ殿下は無自覚ですけど「超カリスマ」をたれ流してます」


「俺の「ジャッジメントアイ」に気付いていたのか」


「さっきミリオール陛下のサイコウエーブが流れているのに気付いて全員の脳波をスキャンした時に分かったんです。勝手に脳波を調べてすいませんでした」


「いや、必要な処置だ。ところでお前たち2人は脳改造の結果だとして、俺の場合は肉体再生の副産物なのかな?」


「推測ですが中枢神経の一部に破損があって再生時に変質したものだと考えられます」


 幸四郎さんが腕組みをして頷いている。まだ時間があるから今やってしまおうかな。


「幸四郎さんイキナリですけど今、中枢神経の端末化手術をしませんか? データをとりたいのと……」


 俺が言い終わる前に幸四郎さんは服を脱いでカプセルに入った。


「早速頼む、結果については後でいい。これでもお前たちの科学者としての能力は信用しているからな」


 やっぱり幸四郎さんは男前だな。幸四郎さんの場合一度改造されているようなもんだから今日子のサポートが必要だ。


「今日子、幸四郎さんの改造手術をするからサポートして……」


 静かだと思ったら今日子の奴、スピョスピョ寝てやがったので思いっきり鼻をひねり上げて起こしてやった。


「いひゃい! いひゃい! おひた!  起きました!」


「今から幸四郎さんの改造手術をするから基本操作を頼む、俺は生体データとサイコウエーブの解析に専念する」


「わかったけど、もうちょっと優しく起こせー!」


 レベル1は問題なく終わった、レベル2で心拍に軽微な異常と大脳に少しの負荷がかかっている。なんとかレベル3を完了したが肩で息してるし色々な数値がやばい。


「幸四郎さん、ちょっと休んだら? ピーチネクター飲む?」


「いらん! それより真人、俺の体のチェックを頼む」


 頰っぺたを膨らます今日子を無視して幸四郎さんの生体データをスキャンする。再生された四肢の神経が不完全だったのが完全になっているし間違いなく生物として強くなっている。


「肉体年齢が30そこそこです、老化速度は6分の1になってますね見た目も若く出来ますけどどうします?」


「いまの容姿が気に入ってるからこのままでいいよ」


 まあ、そう言うと思ったけどな。それよりも幸四郎さんのデータをスキャンして分かった事が2つある。


 1つはレベル3以上の改造でサイコウエーブを発現する確率が高くなることだ。幸四郎さんは無自覚だがもう一つ身につけている、二つ持ちはデータ的にも多くはないがレベル3になることによって身についたのは間違いないだろう。


 もう一つは普通の地球人にはレベル2が限界だということだ。俺と今日子が4に到達出来たのは脳に流れ込んでくる情報を処理する事が出来たからだ。


 レベル3以上はナノマシンによる中枢神経内部の処置が始まると大脳に膨大な情報が流れ込んでくる。


 その時に俺の場合は論文理解と計算力、生体加工の技術、今日子の場合はコンピューターの知識とプログラミング能力で無意識に処理されているらしい。


 今日子の見解だとレベル1、2で中枢神経に増設された生体メモリーにメインコンピュータを使うためのOSがダウンロードされるんだが知識や技術で処理する土壌がないと脳に負担がかかるようだ。


 幸四郎さんは元ゼロ戦のパイロットだけに一瞬の判断力と操縦技術があり、波乱の人生を生きた精神力があるのでかなりギリギリだが、レベル3をクリア出来た。


 文系スタッフはレベル2が限界かな。


 午後5時になったので大会議室に行くと、全員そろって俺たちを待っていた。そしてイーマブルグ殿下が俺の前に歩いて来て真剣な表情で質問する。


「マヒトよ、先程の父上のメッセージに込められた特殊効果についてわかっておるのだろう。全員に説明を頼む」


 聡明な皇太子様だな「超カリスマ」抜きでついて行きたくなる。

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