65 世界の終わり~始まり~
一生懸命に作話しました。是非是非、お楽しみください。
登与は彼に向かって、何回も大声で叫び続けていた。
「てらす! てらす! 起きなさい! 目覚めなさい! 」
しかし、彼の意識は戻らなかった。
それでも彼女は諦めなかった。
何回も何回も大声で叫んでいるうちに彼女の声はかすれ、怒り狂う神の大嵐の中にいるだけで、その体力は完全に奪われていった。
ところが、意識もうろうとしてきた彼女は、瞬間的に光る物に気がついた。
彼女の体は無意識に動いた。
「登与!!! 」
大嵐の中、日巫女の叫び声が響いた。
ナイフが、登与の背中に刺さっていた。
アマテラスの意識と完全に重なり、大嵐を起している天てらすを止めるために、登与の代わりに日巫女が、てらすの命を奪おうと考えたのだった。
日巫女は急いで登与の背中のナイフを抜いて、傷口に手を当てた。
「ごめんなさい。登与。あなたに全ての責任を押しつけてしまった。そしてこんなことをしてしまった。」
「大丈夫、おばあちゃん。私にも責任あるから。そして、日巫女として当然のことをしただけです。でも、もう少し私にがんばらせて。傷はとても浅いから大丈夫よ。」
「ありがとう登与。」
傷の痛みに耐えながら、登与は最後の力をふりしぼった。
かすれていて、とても小さな声だったが、最強の言霊となって放たれた。
「て・ら・す・・て・ら・す・・起・き・な・さ・い・・目・覚・め・な・さい・・」
すると、だんだん天てらすの両目がきれいな黄金色になった後、やがてそれが消えて普通の茶色になった。
「冷たい! なんでこんなにずぶ濡れになっているのだろうか。あ―――っ、ここは陽光神社の社殿のような。屋根も壁もなくなってしまっている。」
「て・ら・す。元・に・も・ど・っ・た・の・ね。」
「登与さん。そんなにかすれた声になってしまって。僕を呼び続けてくれた声は聞こえていましたよ。」
「ア・マ・テ・ラ・ス・は・今・ど・こ・に。」
「あそこに、います。」
2人の上空に、数千年間の姿のアマテラスが浮遊していた。
アマテラスは登与の背中の傷に気がつくと、てらすに指で合図した。
彼はその意味を悟り、登与の傷に手を当てていた日巫女の手をとると、すぐに気を失ってしまった。
「お・ば・あ・ち・ゃ・ん・は・だ・い・じ・ょ・う・ぶ。」
「だいじょうぶです。それに、次に目が覚めた時には、ここで起きたことを全て忘れています。」
次に彼は。自分の右手を登与の背中の傷にあてると、治癒能力が発動してたちまち傷は消えた。
一部始終を見ていたアマテラスは満面の笑顔を見せて、空のどこかにとび去った。
登与から天てらすに向かって最強の言霊が放たれた時、黄泉の国の祭壇でも変化が起きていた。
夜見の秘術が効果を表し始め、その姿が少しずつ薄くなり消えようとしていた。
「姉様!!! 」
咲希が大声を上げると、彼女は自分の妹に向かって無言で優しく微笑んだ。
その時、夜見の国に異変が起きた。
真っ暗な闇の世界である夜見の国に、日の光が照らされた。
最初はまぶしくて、夜見の国の住民は誰も目を開けることができなった。
次第に光りに慣れて、咲希が目を開けると天空からアマテラスが消えかかっている夜見の所まで舞い降り、2人は数千年ぶりにきつく抱き合った。
最後は2人とも、たくさんのきれいな光りの点となり、だんだん消えて最後には何もなくなった。
夜見の国は、元の暗闇の世界となった。
神話高校の朝の登校時間で、全校生徒・教職員、地域の住民にとって非常に有名になっているイベントがあった。
「わー今日の朝も、非の打ち所の無い美形が並んで3人歩いているわ。」
「超イケメンの天君の両隣に、タイプの違う2人の超美少女、日登与さんと夜咲希さんが並んで登校するのよね。」
「ねえねえ、天君って日さんと夜さんのどちらが好きなのかしら。」
「それが不思議だけれど、たぶんあれは完璧に2人とも同じように好きだな。」
歩きながら、登与が彼に言った。
「結局、アマテラスはどうなったの。」
「転生者の僕から完全に離れて消滅しました。」
「どうしてそうなったのかしら。咲希さん知っている。」
「私にもわかりません。でもなんとなく、アマテラス様がずっとずっと探されていた大切な物………いや大切な人と巡り会えたからのような気がします。」
「その人は誰かしら。」
「誰なのかはわかりません。その人が消えてしまうことで、アマテラス様も消えてしまったのですね。たぶん黄泉の国の人です。女王である私も知らない人ですが。」
「アマテラスにとって、存在する理由が無くなったのですね。僕の中には神聖の力が残っていますが。」
お読みいただき心から感謝致します。
これで終わりです。スペシャルサンクス トウ ユー です。
もし、よろしければ評価していただけますと、次回作に生かしてさらに良いものを作り上げます。




