58 優しくて悲しい夢16
一生懸命に作話しました。是非是非、お楽しみください。
アマテラスは真剣な顔でうなづいた。
「卑弥呼さんの亀卜のうらないは、僕が認識していること以外に無意識に感じ取っていることを教えてくれます。大災難が起きることは確実だと思います。」
「私は妻として、アマテラスさんの敵が現れたのなら戦います。」
「私も妹として、お姉ちゃんと一緒にアマテラスさんを守ります。」
「アマテラス様、お願いがございます。」
十郎がおじぎをしながら言った。
九郎も同様におじぎをした。
「私達兄弟がアマテラス様を警護するため、しばらくお近くに滞在させていただいてよろしいでしょうか。もちろん、この家の中ではなく敷地の中に簡単なテントを張らせていただき、そこにいます。」
「ありがとうございます。僕は『神』ですので、案外人間の怖さを知らないのかもしれません。叔父様達に警護していただくと大変安心です。ところで、ここにいる4人は、1度試みただけで縮地の術を使うことができたのですね。」
「アマテラスさんは、縮地の術をすぐに使えるようになる人間は、ほとんどいないと言っていましたね。私達4人は血がつながっている一族です。何か関係があるのでしょうか。」
「もしかしたら、夜見さんの一族は『神』の血筋かもしれませんね。何か御先祖のことで知っていらっしゃることはありますか。」
十郎が答えた。
「私達の先祖は、倭の国よりももっと北の方の土地で、1年の半分以上太陽の光りが全くあたらない暗闇の世界で生まれたと聞いています。」
「そうですか。そうすると僕の妹神である闇の神、常闇の血筋かもしれません。何かの切っ掛けさえあれば、今みなさんの体の中に隠された『神』が使う神聖の力を、もっともっと使えるようになるはずです。」
次の日から、九郎と次郎の兄弟はアマテラスの家の敷地にテントを張って暮らし始め、周辺の警護をかかさず行った。
………
ある日、森の中の小川のほとりで座って、川の流れをぼーっと見ていた咲希を見つけて九郎が言った。
「咲希、美女がそのように物思いにふけっていると絵になるな。」
「あっ、九郎おじさん。」
いきなり話しかけられて、咲希は少し驚いた。
さらに九郎は唐突に言った。
「私は思うのだけど、夜見は確かに内面外面とも完璧に美しい絶世の美女だ。だけど咲希、姉には絶対にかなわないと思うことはないよ。咲希が夜見に勝ることはいっぱいある。」
「どんなことですか。」
「………」
「すぐ出ないようでは、だめじゃないですか。」
「違うんだ咲希。咲希と夜見のどちらが勝るか考えていたのだけど、結局、どちらも引き分けだな。」
「ほんとうなの。」
「ほんとうのことさ。だから、もしアマテラス様が今度の大災難を切り抜けることができたのなら、第2婦人にしてもらいなさい。そうして、3人で永遠に幸せに暮らしなさい。」
「九郎おじさん。ありがとう。」
………
アマテラスと夜見は、久し振りに花の咲き乱れる森の場所に来ていた。
あれから季節は夏になったが、花の種類はいろいろ変化して元気のあるよく目立つ色が多くなっていた。
その前に2人で座っていたが、夜見は自分の心の中にある大きな不安を彼に訴えた。
「『神』であるあなたを縛り、永久に縛りつけることなんてできるのですか。」
「できると思います。夜見さんを心配させないよう黙っていましたが、倭の国から遠い遠い異国に『神殺し』という言葉があります。読んだ字のとおりの意味で、人間が神を殺す、あるいは永遠に封印することができるのです。」
「強大な神聖の力をもつ神を、普通の人間がどうやって殺したり永遠に封印したりすることができるのですか。」
「僕達『神』の力を完全に否定し、殺したり永遠に封印できる物がこの世に存在します。それは緑色の物です。緑色の生物は大丈夫ですが、無生物は『神』の天敵なのです。」
「なぜ、そうなるのですか。」
「草木などの緑色は、『神』が生物をたたえ祝福した証拠としてつけるものなのです。だから無生物についている緑色は、『神』の意思に反してつけられ『神』の力を完全に否定するものなのです。」
それを聞いた夜見は、家に大事にしまってある美しい緑色の翡翠を早く捨ててしまわなければと思った。
気がつくと、夜見は自分の両膝に思いものを感じた。
彼が膝枕で目を閉じて眠ってしまおうとしていた。
「すいません。大変疲れていて、このまま眠っていいですか。」
「どうぞ。ごゆっくりお休みください。」
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