57 優しくて悲しい夢15
一生懸命に作話しました。是非是非、お楽しみください。
「叔父さん達、中に入ってください。」
夜見に言われて、2人の叔父は家の中に入った。
その後、居間のテーブルの椅子に夜見と九郎、次郎が先に腰掛けた。
「今、お茶を出します。」
咲希は奥でお茶を入れると、持ってきてテーブルに並べた。
夜見が聞いた。
「叔父さん達はよくここがわかりましたね。」
十郎が答えた。
「私達はアマテラス様に仕える身、その神聖の力が強い場所はすぐわかるんだ。」
九郎が言った。
「実は、ここにやって来たのは、かわいい姪達に会いに来たのはもちろんだが、それ以外に卑弥呼様からアマテラス様に、大切な言付けを預かっているんだ。」
「アマテラスさんは人が多い平地に出て、大量に涌き上がっている人間の負の気持ちを調べています。いつお帰りになるのかわかりません。」
寂しそうにそう言った夜見に九郎が言った。
「結婚したばかりの奥さんとしては寂しいな。でも、卑弥呼様のお話だと、アマテラス様はもうすぐ帰ってくるよ。神聖の力の動きでわかるそうなんだ。」
「そうですか、うれしいです。」
夜見が顔を輝かせた。
それを見て咲希が言った。
「お姉ちゃんはアマテラスさんが大好きだからね。」
十郎が話し始めた。
「おまえ達の両親が大熊に殺されてから、私達は大変心配していた。それから多くの人にねらわれて、森林の奥まで逃げて来て―――苦労したのだな。」
「はい、四六時中緊張しなければならない毎日が続きました。しかし、それも今となっては良い思い出です。『おかげで』と言っては変ですが、私はアマテラスさんの妻になることができました。」
「私も妻ではないですが、アマテラスさんのほんとうの妹になれました。だからもう安心です。それと、叔父さん達には言うわ。お姉ちゃんは怒るかもしれないけれど。ゆくゆくは、アマテラスさんの第2婦人になるつもりよ。」
九郎が言った。
「う―――ん。微妙な話しだな。兄さんは習わしに詳しいから、どうですか。習わしでは許されるのですか。」
「今の習わしでは、1人の夫が多くの妻をもつことは許されないことではない。ただ問題は、おまえ達が伝説になるほど美しい姉妹だということだ。姉妹2人とも妻にしたとなれば、倭の国中の男達から大変なしっとを受けることになる。」
「兄さん、しっとを受けるくらいなら、別に無視すれがいいんじゃないですか。」
「ところが、『神』がしっとを受けると非常にまずい。なぜかというと、誰もアマテラス様のお告げを聞かなくなるからね。」
「恐れ多い『神』のお告げを無視するのですか。」
「この2人の美しさはそれほどだということだ。」
「それでは、私はこのままずっと妹のままなの。私よりずっときれいなお姉ちゃんを妻にして、もう国中の男達の大変なしっとを受けているから、私が第2婦人になったって問題ないじゃない。」
「咲希。あなたは私以上に美しいから、アマテラスさんへの大変なしっとが、2倍以上になるということよ。でも大丈夫。なにかうまい手を考えてくれるわ。アマテラスさんは、あなたのこともたぶん大好きよ。」
「ありがとう。私、お姉ちゃんには絶対にかなわないわ。外見だけではなく、内面の心も完璧なんですもの。」
咲希のその言葉を聞いて、姉がにこにこ笑いながら言った。
「でも、咲希だから第2婦人になることを許すのよ。それ以外の女の人だったら絶対に許さないわ。何が何でも邪魔するわ。」
その後、その場が一瞬静まり返った。
「いらっしゃい。遠い所からお越しいただきありがとうございます。」
入口からアマテラスが入ってきた。
彼はその前から入りづらくて、タイミングを伺っていたようだった。
九郎と十郎はすぐに立ち上がり、彼に対して深くおじぎをした。
十郎が代表してあいさつした。
「アマテラス様、日々、神殿の中であなたのお告げを受け取らせていただいております。国中の人々の生活を助けていただいてありがとうごさいます。本日は、卑弥呼からの言付けを預かってまいりました。」
「僕のためにお骨折りいただきありがとうございます。卑弥呼さんからの言付けは、たぶん大変重要なことなんですね。早速、お伝えいただきますか。」
彼も座りテーブルに5人がそろった後、九郎が真剣な顔で言った。
「アマテラス様に最大の災難が訪れようとしています。それは御身の自由を奪い、永久に縛りつけてしまうかもしれません。是非、御注意を。」
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