50 優しくて悲しい夢8
一生懸命に作話しました。是非是非、お楽しみください。
「そろそろ家に帰らなければ。咲希が心配します。」
アマテラスと夜見は、大量の焼いた魚を持って帰った。
それを見て咲希はびっくりしたが、やがてにこにこ笑いながら言った。
「2人はほんとうに相性が良いのね。こんなに多くの獲物をとることができるなんて、息が合っていなければできないわ。」
「息が合っているなんて、これはアマテラスさんが全部………」
「家の中では暖かすぎるので、外に保存した方がいいですね。外に倉庫を作ります。もうすぐ日が落ちますので急がなくてはいけません。」
アマテラスはそう言うと外に出て、手で印を結び詠唱した。
「イシヨ、ツミアガレ。」
その目は黄金に輝いていた。
すると、どこからともなく四方の空中を飛んで、調度良い形にそろった石がそこに釜のように積み上がった。
中は空洞になっており、3人はそこに今日食べる分を除き焼いた魚を保存した。
「私はもう少し食べたけれど、とてもおいしかったわ。今日の夕食は楽しみね。咲希、たくさん食べるのよ。」
「それでは夜見さん、咲希さん、僕は自分の食べる分を少しいただいて、この森の中に行ってどこか寝るところを探します。そしてまた明日からは、あることを調べる旅に出なければなりません。」
「えっ、そうなんですか。私達は少しもかまいません。今晩だけでもこの家~小屋と言った方がいいかも知れませんが、この中で夕食を食べていただいて一晩過ごしてください。」
夜見が驚いて引き止めた。
「お若い女性2人が住む家に、得体の知れない男が泊めていただくのは非常に気がとがめます。」
「アマテラスさん。お姉ちゃんも私もあなたに会って、短い時間しか過ごしていないけれどよくわかったわ。あなたは悪いことは絶対にしない。ましてや私達に危害を加えることは絶対にないわ。違いますか? 」
「はい、そのとおりです。」
「『神』は嘘をつけないのですね。ですから問題ありません。」
「それでは今夜だけ、お言葉にあまえます。」
その日は夜遅くまで、いろいろな楽しい話題で3人は盛り上がった。
次の早朝になった。
まだ暗かったがアマテラスは、姉妹に気づかれないようにそっと小屋の外に出て、行ってしまおうとした。
小屋から少し離れた時、彼を呼び止める声がした。
「アマテラスさん。少し待ってください。」
咲希だった。
「行ってしまわれるのですね。あなたが出て行った時、お姉ちゃんは可哀想なほどがんばって、眠っているふりをしていました。お願いがあります。必ずまた私達の所に来てください。」
「はい。必ずここに戻って来ます。夜見さんにお伝えください。わずかな時間でしたが、僕の心の一部は夜見さんの手の中に有ります。」
「わかりました、お姉ちゃんに必ず伝えます。きっとすごく喜ぶと思います。でも長い時間が経つと喜びも消えてしまうから、そんなに待たせないでください。」
「はい。」
彼はそう言うと、森の中に消えて行った。
アマテラスの本心は、夜見の近くに留まりずっと一緒に暮らしたかった。
「神」ではあるが、普通の人間の夜見と普通の会話をするだけで、殺伐としたアマテラスの心は彼女の優しさに包まれて安らいでいた。
ただ、彼にはこの地域に足を運んだ目的があった。
実は、この地域から人間達の負の気持ちが大量に涌き上がっていて、神々の気持ちが非常に乱されていた。
負の気持ちは、自分を可愛く思い他人をねたみ、自分を上げて他人を蹴落とすためには何をしても良いというものだった。
人間の人口が増え、貧富の差が拡大する過程においては、しようがなかった。
しかし、「神」が平和な世界を阻害する人間達の負の感情を、そのままにしておくことは非常に難しかった。
アマテラスは森を抜けて、夜見と咲希が逃げてきた人間の平地の部落に行ってみようとした。
森のはずれに向かって歩き進んでいた時、彼の後ろで大きな音がした。
彼が振り返ると、早朝別れたばかりの咲希が森の茂みからそこに倒れていた。
彼女は全力で走り何回も倒れたようで、その顔や体には多くの傷があり、息が上がりとても苦しそうだった。
「咲希さん、どうしたのですか。」
「お願いです。お姉ちゃんを助けてください―――」
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