45 優しくて悲しい夢3
一生懸命に作話しました。是非是非、お楽しみください。
次の月曜日から、登与が高校に登校し始めた。
「日登与、無理せずに、だんだん体をならしていきなさい。」
その日の朝、担任はそうアドバイスした。
彼はとても心配になり、授業中何回も、隣の登与の方を見てしまったが、そのたびに登与に注意された。
「だめよ。どんなに私の顔が美しくても、授業に集中してね。」
昼休みになった。
「咲希さん。一緒にお弁当を食べよう。」
「はい、登与さん。てらす様もお仲間でいいですか。」
「そうね。てらす―――、こっちに来て一緒に食べよう。」
彼がお弁当のふたを開けると、登与がその中身をじろじろ見てきた。
「やっぱり、てらすのお母さんは料理上手ね。私の母親は完全に負けるわ。」
「そうですか、登与さんのお弁当もおいしそうですよ。」
「咲希さんのお弁当は、どうかな。」
今度は咲希のお弁当を見始めた。
すると、一人暮らしの咲希はコンビニで買ってきたお弁当だった。
「のぞき込んでごめんなさい。でも、咲希さん、手作りのお弁当よりコンビニのお弁当のほうがずっといい場合があるわ。そのお弁当、私の母親が作ったものよりは絶対においしいから。」
「登与さん。そんなことを言うと、お母さんに悪いです。私もてらす様の意見に大賛成です。登与さんのお弁当はとてもおいしそうです。」
「それではこうしない。3人のお弁当をそれぞれ5分間食べたら別の人に回すの。そらから5分間したらまた別の人に、ぐるぐる回してお弁当を食べ比べするのよ。」
「お箸も回すのですか。」
「そうよ。」
「あの………それでは間接キッスになってしまいます。女の子2人は良いのでしょうか。」
「別にいいわ。」
「問題はありません。」
登与と咲希があっさりと返事した。
登与は無理をして、元気よく振る舞っていた。
彼にはそのことがよくわかったが、できるだけ、気づいていないふりをした。
その日、彼は前のように、途中まで3人で一緒に帰ろうとした。
下駄箱で、咲希がとても真剣な顔で登与に言った
「登与さん、お願い事があります。今日は私と登与さんの2人、女の子どうしで帰っていただけませんか。てらす様、すいません。」
「咲希さんと話すのも久し振りだから、女の子どうし、じっくり話ながら帰りましょう。てらすがいると話せないこともあるよね。てらす、それじゃ先に帰って。」
「はい、わかりました。登与さん、咲希さん、さようなら。また明日。」
彼が見えなくなるまで学校から離れた後、登与と咲希は並んで歩き出した。
「咲希さん。ごめんなさい。休んでいる時にとても心配させてしまったわね。」
「いえいえ、私にとって大切なお友達の登与さんだから、どんなに心配したとしても少しも問題ありません。」
「ありがとう。」
「ところで登与さん。てらす様のことでお聞きしたいのですが。」
「どんなこと? 私が知っていて咲希さんが知らないことなんて無いと思うけど。」
「てらす様が、夢をよく見るようになったと言っていませんか。」
「えっ。なんでそんなことを聞くの。」
「このごろのてらす様は、睡眠不足で毎日大変そうでした。心配していたら、今度は2週間前に咲希さんが高校を休み始めてしまった。それに今日2人の様子を見ると、とてもぎこちないです。てらす様の夢が原因ではないですか。」
「………」
「もしかして、登与さんは大変に悲しい思いをしませんでしたか。」
「そこまでわかるの! 」
「登与さんに会っていただきたい人がいるのです。そしてその人は、登与さんのことを大変心配しています。」
「私の知っている人ですか。」
「たぶん御存知ですが、お会いするのは初めてだと思います。お願いします。是非、是非、会ってください。」
「咲希さんにそこまで言われれば、いやとは言えません。」
「ありがとうございます。ではここで。」
咲希はそう言うと、何もない空間に向かって言った。
「姉様、会っていただけるそうです。」
すると、そこに黄泉の国からの通過穴が暗黒に開き、そこから背の高い女性が現われた。
登与は思った。そして確信した。
―――何もかも完璧に美しい人。それだけじゃない。たぶんこの人の内面の心も完璧に美しいわ。この人は絶対にあの人、てらすが前に会ったかもしれないことを覚えていた人。黄泉の国の女王、夜見様!!!
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