42 虚無との戦い7
一生懸命に作話しました。是非是非、お楽しみください。
虚無は結界の中に侵入するのを諦めた。
「これほど強い光で作られている結界はどうにもならない。光りの皇子に仕える高位の巫女が構築したに違いない。直接、光りの皇子を攻撃するしかないな。」
「虚無はすぐ諦めてしまって、てらす達を直接攻撃すると言っているわ。大丈夫かな。時間の壁の補強はもう済んだのかしら。」
「大丈夫です。てらす君を『闇一族』の最高術者二人が助けています。」
時間の流れの世界では、天てらす、夜登与、灰目九郎が最後の仕上げに取りかかっていた。
「時間の壁を、虚無に二度と消滅させられないよう強化します。僕が全ての壁に神聖の光りを当てますから、咲希さんが影で覆ってください。」
彼は精一杯の光りを放射しようとした。
一つ一つの時間は無限大に重なっており、その全ての壁に光りを当てるには莫大な光りが必要だった。
彼は両手を合わせ、両腕を前に突きだした。
「ワガヒカリ、スベテノ、ジカンノカベヲテラセ、コノヨノコトワリヲマモレ、カシコミ、カシコミモウス。」
その目は強い黄金色に輝き、彼が突きだした両腕の前の空間から、巨大な光りが時間の流れに向かって放射された。
やがて、時間の流れは太陽の光りの色に輝き出した。
天てらすは出しうる限りの最大の力を使っていたが、今回も前回と同様に彼の心は穏やかに保たれ、力が暴走することはなかった。
彼が黄泉の国において女王夜見のことについて想い出した何かが、彼の心をしっかりと安定させていたのだった。
「咲希さん、光りを影で覆って壁の中に吸収させてください。」
咲希も、女王とよく似た優美な仕草で右手をゆっくり前方に振り上げると、その前の空間から暗い影の固まりが前方に向けて発射された。
それは、右左交互の手で何回も繰り返された。
強い影で覆われた光りは、反対の性質ながら完全に溶け合って、無限にある時間の壁に吸収され一体となった。
突然、終わりにさしかかった時、エネルギーを使い切る寸前だった天てらすと夜咲希に、虚無が攻撃をしかけてきた。
人間の体である2人の体を消滅させようと力を放ってきた。
「そうはさせないよ。」
灰目九郎が2人の回りを暗闇の防壁で覆った。
虚無の力は暗闇に当たり消滅させたが、そこで止った。
「私の闇を消滅させると、虚無の力もそこで無くなるのですね。」
それ以降、何回も虚無が力を連射してきたが、その都度、暗闇の防壁が遮った。
とうとう、時間の流れの中で無限にある時間の壁が全て強化することができた。
咲希は限界を超えて影を作った影響で、その場に倒れ込んだ。
彼は咲希を抱きかかえ、九郎にとともに虚無と最後の戦いを始めた。
「虚無の回りを、僕の神聖の光りと九郎さんの影を当てて囲ってしまいましょう。最後には、完全に密閉してしまい出られなくするのです。」
「御意のままに、アマテラス様。」
彼は虚無の周辺を神聖の光りで囲むと、その光りを覆うように九郎が影を出した。
最終的に虚無の回りが、光りと影が溶け合った黒い物質に囲まれ、さらにその物質が虚無を完全に押しつぶしてしまおうとした。
最後に虚無が言った。
「光りの皇子、あなたはとても理不尽です。まだ想い出さないのですか―――我々が生まれたのは数千年前にあなたが強く望んだからです―――あなたに望まれて生まれた我々が、あなたに消される。それも運命かもしれません。」
天てらすは思った。
―――虚無は、過去に僕が強く望んで生まれた?
「アマテラス様、早く私達の時間に戻りましょう。」
九郎のその言葉に彼は我に帰った。
「九郎さん、それではお願いします。」
日巫女と登与が待っていた病院のフロアーに、咲希を抱きかかえた彼と九郎が戻ってきた。
意識が覚醒していた人々は、それぞれの心が移動した時間で天てらすの神聖の力と接触していた。そこで呼び止められ、体がある時間に戻されたのだった。
天てらすの姿を見た瞬間、数百人の拍手が涌き上がった。
「てらす様、お疲れ様でした。咲希さんは大丈夫ですか。」
「ほんとうに咲希さんはがんばってくれました。たぶん、気を失っているだけですので大丈夫だと思います。」
「いいなあ―――咲希さんは、てらすに抱き上げてもらって。」
登与にそう指摘されると、彼はあわてて咲希を開いているベッドの上に下ろした。
「うん! うん! うん! 」
灰目九郎が咳払いした。それに気がついて日巫女が言った。
「九郎もがんばったみたいね。」
お読みいただき心から感謝致します。
もし、よろしければ評価やブックマークいただくと、作者の大変な励みになりますので、よろしくお願い致します。
※更新頻度
平日は夜8時~11時までの1日1回更新(毎日更新できない場合はお許しください。)
土日祝日は1日3回更新(回数が少なくなる場合はお許しください。)




