41 虚無との戦い6
一生懸命に作話しました。是非是非、お楽しみください。
日巫女を先頭にして、人々が収容されている総合病院の施設に入ろうとした。
「日巫女様、よろしくお願い致します。」
市の担当官らしい数人が丁寧に挨拶した。
彼らは深くお辞儀をしただけで、それぞれの扉が簡単に開けられた。
「おばあちゃんは偉いのね。顔パスね。」
登与は、日登与の待遇の高さに驚いていた。
霊能力で全国的に名高い日巫女に、今回の事件の解決が一任されていた。
施設の最深部に入ると、1フロアーに数百人が寝かされていた。
心がないだけで、呼吸など体の生命維持は自ら正常になされており、時々点滴なので栄養補給されていると係官から説明があった。
「てらす君、この人達の心がいる時間がわかりますか。」
その問い掛けに彼は心を集中させた。
彼は、数秒の間に寝かされていた全ての人達を見た。
両目が黄金色に輝き、そして彼の心の中にさまざまな人生の場面が投映されてきた。
それぞれの人が生きてきて、最高にうれしかった時に移動した心が最も多かった。
意外なことに、悔しかった時や辛かった時の場面に移動している心も多くあった。
彼は日巫女に伝えた。
「終わりました。全て記憶しました。」
「それでは、私と登与がこのフロアーに結界を張ります。市の担当の方はすいませんが退出してください。」
『日一族』の最高の力をもつ2人が、フロアーの四隅に祭壇を作った。
「登与、私が見ています。今日はあなたが舞って、強い結界を作ってください。」
「わかったわ。おばあちゃん。」
それから、登与は最初はゆっくりと、そしてだんだん早く、最後には荒々しく舞い始めた。
「登与さん。とてもきれい………」
咲希からひとり言が出た。
天てらすや九郎も見とれていた。
やがて、密閉されているフロアーの四隅が太陽の光りで輝き出した。
日巫女が言った。
「さあ、今です。時間をさかのぼり、この人達の心を元に戻した後、時間の壁を神聖の光りと影で覆い、虚無が消滅させることができなくしてください。」
天てらす、夜咲希、灰目九郎の3人はまとまった場所に立った。
九郎が言った。
「時間に対して縮地法を使います。アマテラス様、行き先の指示を。」
「九郎さん、少しずつ思念を送りますから、よろしくお願いします。」
彼がそう言った後、3人の姿はそこから消えた。
3人は、数百人の人生をさかのぼって一覧した。
それぞれの人の心は、うれしかった時、悔しかった時、悲しかった時などの時間に引きつけられて留まっていた。
それを見て咲希が言った。
「心が引きつけられている時間から離すのは、とても難しいことです。でも『闇一族』の力で心を暗闇で覆えば、可能です。ただ、長く暗闇に覆われると心自体に悪影響がありますので、直ぐに本来の時間に戻す必要があります。」
「わかりました。お願いします。」
「叔父様、それぞれの人の心を私が影で覆いますので、縮地法で本来あるべき時間の体の中に直ぐに運んでください。」
「わかった。咲希と心を合わせて迅速にやろう。」
『闇一族』最高の術者である2人が、それぞれの心が引きつけられている時間にある心を暗闇で覆い、直ぐに本来あるべき時間の体の中に運び始めた。
さすがに『闇一族』最高の術者である2人だった。
たちまち数百人全ての心を、本来あるべき時間の心に戻してしまった。
フロアーに結界を張り警護していた日巫女と日登与の目の前で、心が戻った人々の意識が覚醒し始めた。
「あっ、おばあちゃん。てらす達はうまくいっているみたいよ。」
「虚無が感づき攻撃してくるから、気を引き締めましょう。」
すると、2人は気がついた。
「登与、やはりきましたね。」
「おばあちゃんの予想したとおりね、結界の中に侵入しようとしている。」
病院の外では虚無が怒っていた。
「我々が時間の壁を消滅させ、心を別の時間に送った人間達が全て元に戻っている。もう1回、その人間達の心を別の時間に送ってしまおうとしたが、この建物の中に入れない。我々の力が届かない。」
登与が虚無に思念を送った。
てらす達が時間の壁を補強するまで、引き止めようと考えたのだった。
「虚無さん、悔しかったら、この中に入ってみなさい。たぶんできないでしょうけど。ほんとうに中途半端な存在ね。」
「誰だ。極めて無礼なことを我々に言うのは。しかし、これは強い光りの結界だ。この中に光りの皇子に仕える者がいるのか。」
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