40 虚無との戦い5
一生懸命に作話しました。是非是非、お楽しみください。
日巫女が意見を述べた。
「ところで、時間の壁が一瞬消滅して、人間の心が過去のいろいろな時間に移動したとすると、やはり移動先の時間は、その人がこれまで生きてきた中で、一番戻りたいと思っている時間じゃないでしょうか。」
「まずは、虚無に現在の時間から心を消滅させられた人々にお会いして、どの時間に行けばいいのか確認する必要があります。僕が神聖の力で悟ります。その先ですが、なんとか確認できたとして、その時間にどうやっていけば良いのでしょうか。」
「アマテラス神の転生者であるてらす君は、時間逆行をすることが可能です。ただし、さかのぼれる過去の時間の限度があります。それは、てらす君の前の転生者が生きていた最後の時間が過ぎた時です。」
「おばあちゃん。てらすの前の転生者はいったいどれくらい昔の人なの。」
「代々の日巫女に伝わっている口伝では、遙か数千年前から、アマテラス神は数百年の時間をおいて転生するとされています。」
「それならば大丈夫ね。現代に生きている人の中で、数百年生きている人はいないでしょうからね。ところで、離れてしまった心をまたこの現代に復活させることは可能だと思うけど、時間の壁の補強はどうするの。」
登与の問いに、咲希が答えた。
「『闇一族』の私が、てらす様と御一緒に時間をさかのぼります。そして、時間の壁に放射されたてらす様の神聖の光りを影で覆い、虚無が時間の壁を消滅させることができなくします。」
「え―――っ。咲希さんは時間をさかのぼれるの。」
「はい。私達『闇の一族』は死者と似ており、時間が動いていない黄泉の国で生きて行くことができます。ですので、時間の拘束を受けないのです。」
「そうなんだ。それならば、咲希さんはてらすと一緒に時間をさかのぼり、時間壁を補強し、人々の心を持ち帰ることもできるのね。残念ね、今度も私は、またお留守番か………」
「登与さんに重要な役割があります。僕と咲希さんが今の時間に戻した心が、それぞれの体に届くまで守ることをお願いできるでしょうか。場合によっては、虚無が妨害に出てくるかもしれません。」
「そうね、重要な役割ね。もし、虚無が攻撃してきたら私は戦うわ。」
数日後、虚無に心を過去の時間に移動させらた人々が、集合して収容されている病院に天てらす、日登与、夜咲希がそろっていた。
そこに日巫女もやって来た。
「私も登与と一緒に、この病院に入院している人々を守ります。」
「おばあちゃんがいなくても、私1人だけで十分なのに。」
「登与は私の大切な跡取り、念には念を入れる必要があります。」
「ありがとう、おばあちゃん。」
その時、いつの間にかその場に近寄ってきていた者がいた。
「お久しぶりです。日巫女さん。」
長い髪を後ろに束ねた背の高い男、それは灰目九郎だった。
「九郎。なんでここにいるの。」
「いや。私も大切な姪の咲希が、アマテラス様と一緒に過去に戻るということで、同行して2人をしっかり守るために来たのですよ。」
「女王様から聞いていません。叔父様は必要ありません。」
「いやいや姪よ。私が実力者であることは十分に知っているだろう。」
「九郎さん。ありがとうございます。」
天てらすにそう言われて、九郎は照れくさそうに言った。
「ほんとうのことを言うと、直前になって女王様が私に指示を出しました。アマテラス様が虚無と戦うのを助けるようにと。それと、妹が限界を超えて倒れたら、代わりに影を出すようにと言われました。」
「叔父様、すいませんでした。私も少し不安でしたが、同行していただくととても安心です。」
「実はここに来て見ると、ほんとうにラッキーでした。昔あこがれていましたが、見事にふられてしまった日巫女さんがいるではないですか。日巫女さん、まだほんとうにお若いですね。」
「おばあちゃん。この変なおじさんが『闇一族』の実力者である灰目九郎なの。私、前におばあちゃんから聞いて、もっと格好いい人かと思っていたけれど、くたびれたおじさんじゃない。咲希さんにはほんとうの叔父さんだけど。」
「日巫女さん、ツンデレのところなどそっくりのお孫さんがいらっしゃるのですね。しかし私が今鑑定したら、潜在能力は日巫女以上ですね。」
「九郎。もう話すのはやめてください。それじゃ、てらす君と咲希さんのサポートをしっかりしてくださいね。」
日巫女のその言葉に、九郎は笑ってうなづいた。
お読みいただき心から感謝致します。
もし、よろしければ評価やブックマークいただくと、作者の大変な励みになりますので、よろしくお願い致します。
※更新頻度
平日は夜8時~11時までの1日1回更新(毎日更新できない場合はお許しください。)
土日祝日は1日3回更新(回数が少なくなる場合はお許しください。)




