39 虚無との戦い4
一生懸命に作話しました。是非是非、お楽しみください。
虚無との戦いを終えた天てらすは、黄泉の国から現実社会に戻った。
今は、日登与と一緒にファーストフードでハンバーガーを食べていた。2人は窓側の席に座っていて、繁華街を多くの人々が行き交っていた。
「てらす、ちゃんと聞きたいのだけど、黄泉の国の女王って、どのくらいきれいな人なの。」
「ものすごくきれいな人です。」
「ものすごくって、どれくらいなの。具体的に言って。例えば、私と比べてみるとどんな感じなの。」
「タイプが違うから、登与さんとは比較できません。」
「タイプが違うということを、明確に説明しなさい。」
「登与さんはきらきら輝く明るい美しさ、逆に女王は何もかも受け止める控えめな美しさがあります。」
「咲希さんと似ているの。」
「そうですね。確かに似ていました。」
「おばあちゃんが大変心配していたわ。女王と長い時間顔を合わせて、てらすが何かを想い出したかって。変なことを気にしているのよ。」
「日巫女様が………何も想い出したことなんてありませんでした。」
彼は嘘をついた。
「てらす! 今嘘をつかなかったわよね! なんか表情が変! 」
―――さすがに登与さんの勘は鋭い。
彼は一生懸命冷静な顔を作って顔を振った。
その時だった。
2人が座っている席の外側の窓を叩く人がいた。
「光りの皇子よ、久し振りだな。」
それは、心の中に直接話しかけられたものだった。
登与にもそのことがわかった。
「てらす、誰? 」
彼は手で登与を止めて、心の中で話し始めた。
「あなたは虚無ですね。前に全てを悟って知っています。なんでこの現実社会に来たのですか。」
「この現実社会には、とても多くの物があふれかえって存在している。だから、我々にとっては非常にやっかいな場所だ。だから、黄泉の国を消滅させようとした我々の目論見を邪魔したあなたへの復讐を果たすには大変な場所だ。」
「僕に対する復讐ですか。」
「そうだ光りの皇子よ、だけどようやく見つけたぞ。我々は全てを消滅させる必要がないことがわかった。ごく一部を消滅させればあなたを苦しめることができる。」
―――ごく一部?
彼がそう思った時、窓の外に立っていた人に異変が起きた。
その両目から輝きが失われ、じっとそこに止っていた。
「なんていうことを………」
すぐに彼はスマホを取り出し救急車を呼んだ。
「てらす、まさか、この人! 」
「そうです。心が消滅しています。」
その日から、天てらすが暮らす市を中心に奇病が発生した。
普通に過ごしていた人々が急に動かなくなり、その場で静止してしまうというものだった。
それは数百人にも及んだ。
病院で精密検査が行われたが、そうなった人々の体は正常だった。
陽光神社の社殿の中で、天てらすは日巫女に相談していた。
登与と咲希も同席していた。
「おばあちゃん。人間の心を消滅させることなんてできるの。」
「いくら物質を消滅させられる虚無でも、人間の心を消滅させることが可能だとはとても思えません。」
「てらす、あの瞬間、何か悟りでわからなかったの。」
「人間を存在させている時間の壁が一瞬消滅し、心だけが別の時間に移動して存在するようになったと感じました。」
「心は別の時間に存在し、体と連動できなくなったということですね。」
「虚無が、時間の壁を消滅させることができなくする必要があります。神聖の光りと『闇一族』の影を合せれば虚無が消滅させることができない壁になります。同時に、別の時間に存在するようになった人々の心を元に戻すことも必要です。」
咲希が言った。
「てらす様、今回のことを黄泉の国の女王に報告しました。女王は非常に心配されて、黄泉の国のために戦っていただいたてらす様だけが、虚無の復讐の対象になっていることに、心からお詫びしたいと言っていました。」
「僕はむしろ、僕だけが復讐の対象になって、女王様に危害を加えられないことに非常に安心しています。」
「そのお気持ちを女王は大変ありがたく思うでしょう。それから、私は女王に指示を受けています。もし、時間の壁をてらす様の神聖の光りと『闇一族』の影で補強しようと思われているのでしたら、私が女王に成り代わり、影を出します。」
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