35 黄泉の国へ4
一生懸命に作話しました。是非是非、お楽しみください。
黄泉の国から帰った後、天てらすは陽光神社で日巫女と登与にその時の様子を知らせ、虚無との戦いのことを相談していた。
「長い人間の歴史の中で生者のまま黄泉の国に入ったのは、てらす君で2人目になりますね。」
「僕の前に1人いるのですか。」
「はい。亡くなった妻イザナミに会いに行ったイザナギがいます。」
「死者である妻の顔にウジ虫がわき、骨がむき出しになった現実の姿を見て逃げ帰った人ね。てらす、女王はどんな顔だったの。まさか―――」
彼は、登与の質問に何回も大きく顔を振って答えた。
「とても美しい方でした。完璧に美しい顔で、僕のことをじっと見つめてきました。それに変なことを僕に聞いてきました………」
………女王のことを覚えているかと聞かれました。」
日巫女が大変驚いて、彼にたずねた。
「てらす君は女王のことを覚えていましたか? なんて答えたのですか? 」
「何も覚えていなかったので、初めて会ったと答えました。日巫女様、僕は何か忘れているのでしょうか。」
「私はアマテラス神に仕える日巫女として、ほんとうのことをお伝えしなければならないかもしれません。でも逆に今はお伝えしない方が、てらす君のためには良いと思うのです………」
「日巫女様。わかりました。今は教えていただけなくてもかまいません。」
「すいません。しかし、その時期がきたら必ずお伝えします。」
「ところで日巫女様、『虚無』について御存知ですか。」
「虚無ですか、なにもないという文字の意味しか知りません。」
「今、虚無という得体の知れない存在が、黄泉の国を侵略しています。黄泉の国と宇宙との間の暗黒粒子を消滅させ防壁を完全に無くし、宇宙と完全につなげようとしているのです。」
「宇宙と完全につながると、生者が暮らす現実社会では空気が無くなってしまったり、温度も極限まで下がったりと大変だわ。だけど、死者の世界である黄泉の国はどうなってしまうの。」
「物質的なことが無くなると、精神的霊的なことも何も無くなってしまい、黄泉の国は消滅するそうです。そうすると、黄泉の国と対になって存在しているこの現実世界も無くなってしまうと思います。」
「大変なことね。おばあちゃん、てらすの考えで合っていると思うのだけど。」
「そうですね。てらす君の言うとおりです。現実世界と黄泉の国は対立することがありますけど、実は根っこの深い所では互いに支え合っているのです。」
「それで、黄泉の国から僕に協力して虚無と戦うよう、女王と咲希さんから依頼がありました。」
「てらす君はどう答えたのですか。」
「もちろん二つ返事で快諾しました。」
「さすがてらすね。」
「女王は黄泉の国の家臣達に、僕に絶対服従するよう命令しました。そこまでする必要はないと思いましたが。」
「それじゃあ、てらすが黄泉の国の王様で、女王の夫になってしまうじゃない。」
「登与! 悪ふざけは止めなさい!!! 」
突然、日巫女がとても大きな声でしかったので、登与と彼はびっくりしてしまった。
「冗談よ。ほんとうに冗談だからおばあちゃん。てらすの妻になるのは私に決まっているじゃない。そんなに大声を出さないで。」
「ごめんなさい。私も年寄りになって、だいぶ神経質になってしまったのかしら。」
しばらくして、天てらすは再び黄泉の国を訪れていた。
すると、いつの間にか彼は黄泉の国の全軍の総司令官になっており、灰目九郎が副官になっていた。
女王の城の中に総司令官の執務室が設けられており、そこで、彼は九郎はこれからの戦い方について相談していた。
「やはり情報が不足しているのではないでしょうか。虚無について、私達はまだほんとうのことを何も知りません。」
「そうですねアマテラス様、私もその点は問題だと思っていました。」
「誰かが斥候に行って、より多くの情報を集める必要があります。ただし、危険な任務ですから相当力が強い人でなければつとまらないと思います。そこで………」
「僕が行きます。」
「私が行きます。」
2人は同時に言った。
「アマテラス様。全軍に指示すべき総司令官が前線に出て、敵の情報を調査するなんて常識はずれです。私はあなた様ほどの力はありませんが、立派に任務を完了することができると自負しています。」
「九郎さん。僕は自分の義務を全力で果たしたいのです。絶対に虚無に勝って、全ての世界を守りたいと思っています。そのためにはできるだけ虚無に近づいて、神聖の力でその実体を解明したいのです。」
「兄の十郎に聞きました。きさらぎ駅で十郎が連れ去ろうとした人間を救うため、後先を考えず、全力で力を出され兄の暗黒空間を消滅させたと。あやうく怒り狂う神になってしまうところだったそうじゃないですか。」
そう言った後、九郎の顔が満面の笑顔になった。
「それでは、一緒に参りましょう。」
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