28 女王の決意5
一生懸命に作話しました。是非是非、お楽しみください。
暘光神社の社殿の中で、天てらす、日登与、それに夜咲希は日巫女と向かい合って座っていた。
日巫女が一礼しながら言った。
「姫様、今日はお出でいただきありがとうございました。『闇一族』が陽光山に登りこの神社の中に入るのには、大変な勇気が必要だったでしょう。」
「いいえ日巫女様、何も問題ありません。私の方こそ、アマテラス様の聖地である陽光山に登らせていただき、心より感謝申しあげます。」
登与が驚いて口をはさんだ。
「なになに、どうして。おばあちゃんも咲希さんのことを『姫様』って呼ぶの。」
「あら、登与は知らなかったの。この方は女王夜見様の妹様ですよ。」
「え―――っ」
「登与さん、てらす様、今まで黙っていて申し訳ありません。ただ私は女王の妹だということで、お2人がいろいろな気づかいをしてしまうことがいやだったのです。」
「うん、わかった。姫様であってもなくても咲希さんは咲希さん。私は咲希さんの中身が好きなんだから。」
「登与さん。ありがとう。」
「でも、ごめんなさい。一つだけ聞きたいことがあるの。咲希さんはなぜ人間界の、しかもてらすの家のそばで暮らしているの?ほんとうに、御両親のお仕事の関係で外国にいたのに帰国してきたの?」
「ごめんなさい。嘘をつきました。今、私は1人で暮らしています。人間界のてらす様の家のそばで暮らしているのは、女王と相談して、てらす様のおそばにいて、なにかあった時てらす様をお助けするためです。」
「僕を助けるために、現実世界に来てくれたのですか。」
「はい。『時間が止った家』は私がかけた術ですが、てらす様がその術を完成させ、長い間、多くの家族が望んでいた再会が果たされました。そのように、とても優しいてらす様が、神の御業を行うのを助けたかったのです。」
「女王はどんな感じだったの。」
「最初は反対していましたが、最後には許してくれました。妹の私が、神の転生者であるてれす様のそばにいれば、とても安心できるそうです。」
話は、悪鬼善児が宣言した大侵攻のことに移った。
日巫女が言った。
「姫様、悪鬼は黄泉比良坂をこの世界に架けてくるのでしょうか。」
「間違いないと思います。狙いはきっと、自分が苦しめ続けている子供の魂をこの世界に多数送り込んで、てらす様の心をかき乱すことだと思います。」
「僕の心をかき乱すことですか。」
「もし、てらす様の心が大きく乱されて、人間に対する失望と敵意に支配されれば、怒り狂う神になってしまいます。」
「きさらぎ駅で、怒り狂ったようなことね。」
「そうです。ただし大きく異なることは、今度は具体的な対象が人間になっているということです。」
「僕が人間に対して怒り狂ってしまったら、いったいどうなるのですか。」
「人間がいるこの現実世界を全て滅ぼしてしまうでしょう。それは必ず成し遂げられます。人間の軍隊では止めることができません。」
「とても優しいてらすが、そんな世界の終末を招くなんてとても信じられないわ。なんとか、防がなければいけないわね。」
登与は彼をじっと見た。
「登与さん。怪獣を見るような目で僕を見ないでください。日巫女様、僕はいったいどうすれば良いでしょうか。」
彼にそう問われると、日巫女は優しい目で答えた。
「てらす君、私はあなたが絶対そうならないと固く信じています。あなたは、人間に対する優しさを忘れることはありません。神であった時、そして何回も転生した、ずっとずっと前から、変わることのない真実です。」
「てらす。私やおばあちゃん、咲希さんが、あなたがそうならないようしっかりと守るわ。」
「てらす様は、夢で悲しい一生を終えた多くの子供達を見られたと思います。そして、悪鬼善児が一生の最後の瞬間に、その魂を鈴の音で捕縛して自分のものにしてしまったのです。………
………それから善児は、その子供達に繰り返し繰り返し自分の悲しい一生を想い出させて、何回も絶望に落とし泣かせ続けているのです。」
「てらす、大切な目的だわよ。たぶん、善児は黄泉比良坂をこの世界にかけて、自分が捕縛している多くの子供達の魂を送り込んでくるわ。その子供達の魂を全部解放してあげるのよ。かならず。」
「僕は絶対にやり遂げます。他人を思いやること、助けてあげることが人間の最も良いところです。僕は両親に育てられ、親しい友達達と暮らしている人間です。神の転生者ではなく1人の人間として、がんばります。」
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