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最後の転生でハッピーエンドになれますか?  作者: ゆきちゃん
第1章 プロローグ
19/65

19 きさらぎ駅3

どうぞお読みください。

 ある日の学校の昼休み、日登与が天てらすに話しかけた。


「てらす。きさらぎ駅って知っている。」

「知っています。架空の話だと思っている人が多いですが、僕は、ほんとうの話だと思います。」


「おばあちゃんも同じ。私にほんとうの話だと言ったわ。それで、おばあちゃんがてらすに、お願い事があるそうなの。」

「日巫女様が僕に。どういう事でしょうか。」


「現実には無いきさらぎ駅に着いた三州鉄道は、ここから西にある伊浜市の私鉄でしょう。陽光山の神の物見の場から、そのあたりに何か異常がないか、調査してほしいそうなの。」


「わかりました。前に時間が止った家を見つけたように、注意深く調査してみます。明日の土曜日、陽光神社に伺います。」


「ありがとう。ところで、おばあちゃんがもう一つ気にしていたことがあったわ。『闇の一族』の咲希さんの様子はどうかって。私は普段と変わらないと答えたのだけど………実はとても元気がなさそうで心配しているの。」


「僕も同じ気持ちです。それに咲希さんは今日お休みですね。大丈夫でしょうか。」

「きさらぎ駅のことが片付いたら、彼女に聞いてみましょう。」



 次の日、彼と登与は陽光山の鳥居の前で待ち合わせた後、山頂の陽光神社の社殿の中で日巫女と会っていた。登与も同席していた。

 日巫女が言った。


「てらす君、私のお願いを聞いてくれてありがとう。実は、私を頼ってここ1か月の間に複数のご家族から相談がありました。三州鉄道の中で忽然(こつぜん)と行方不明になっている方々のことです。」


「行方不明の方が複数いらっしゃるのですか!」

「所轄の警察署からも御依頼を受けました。合理的、科学的捜査ではもう対応できないそうです。」


「そんなに大事(おおごと)になっているのね。」

 登与が驚いた。


「古来からある、神かくしに似ています。神かくしとは、1人の人間が一瞬できた空間の状況の中で、家族や周囲の人が目を離した隙にいなくなってしまうことです。しかし、今回の事件には異なることも多いのです。」


「三州鉄道という決まった空間、複数の人がいなくなっている点ですね。」

「そうです。」


「それと、あくまで推測ですが、『闇一族』の関与が疑われます。暗闇の空間へ人間を誘い込み、それから黄泉の世界に送る。」

「おばあちゃん、送られた人々はどうなるの。」


「特殊な儀式を受けて『闇一族』に生まれ変わるのです。」

「仮に『闇一族』の仕業(しわざ)だとすると、行方不明の人々は、今、どこにいるの。」


「まだ暗闇空間に閉じ込められていると思います。時間が止った空間の中で意識が無い状態でいると思うのですが、早く助けてあげなければ。てらす君、早速で申し訳ありませんが神の物見の場で見てください。」



 彼は登与と一緒に社殿を出て、裏手の手洗い場に向かった。

 登与が聞いた。

「時間が止った暗闇空間って………咲希さんは関わっていないと私は信じるわ。」


「同感です。咲希さんは人を苦しめることができる人ではありません。もしかしたら、この頃とても元気がなかったことに、関係しているかもしれません。」


 手洗い場で手を清めながら、彼が言った。

「ここから続く神の物見の場は、この世界で理不尽なことで苦しんでいる人がいないかどうか、神が確認するために作られたのかも知れません。」



 彼は参道に踏み出し、神の物見の場に入って行った。

 陽光山がある都市の西には大きな川があり、その川の対岸に伊浜市がある。

 中心部と郊外を結ぶ三州鉄道の全線を視界に捕らえた。そして、現在から過去に時間がさかのぼった。


 予想どおりだった。

 三州鉄道からあたかも別の線が分かれているように、光りを完全に(さえぎ)り時間が止っている細長い暗闇空間が見えた。


 彼は神聖の力をさらに高めて、暗闇空間の中を見た。

「闇の電車が走る線路が引かれている。そして駅がある。名前は――

『きさらぎ駅』!――」



 待っていた登与の目の前で、彼が姿を現わした。

「てらす、どうだった?」


「三州鉄道の線路から、闇の電車が走る線路が分かれています。暗闇空間が作られ、『きさらぎ駅』も見えました。それから数十人の人々が閉じ込められていました。」


「生きているのよね。」

「はい。」

「よかった!」

お読みいただき感謝致します。

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