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最後の転生でハッピーエンドになれますか?  作者: ゆきちゃん
第1章 プロローグ
10/65

10 闇一族との遭遇2

お楽しみください。

 次の日の朝、天てらすは学校に登校した。

 すると、いつもと違い、日登与が彼よりも早く登校して待っていた。


「てらす、ほんとうに昨日は大丈夫だった。『闇一族』序列3位の灰目九郎の名前を聞いて、おばあちゃんがほんとうに驚いていたのよ。なんと! おばあちゃんは戦ったことがあるんですって! 」


「そうですか。いったい、どんな戦いだったのですか?」


 登与は昨日、日巫女から聞いた灰目九郎との戦いの様子を話し始めた。



 ある盆地にある町の話だった。その町は、周囲の山のおかげで日の出が遅く日の入りが早く、平野に比べて1日の日照時間が非常に短かった。

 特に冬には、その傾向に拍車がかかり、あっという間に太陽が見えなくなった。


 真冬のある日、灰目九郎はそんな町にやってきた。

 長い髪を後ろに束ねた背の高い男は、神秘的な雰囲気を漂わせていた。


 灰目は言った。


「理想的な土地だな。我が女王のために夜見の国の領土を拡大して、またほめてもらおう。光りが結構あるが、1週間くらいで消すことができるな。一番強い光は―――これか! 」



 その町に、いつもにぎわっている食堂があった。

 食堂の女将は、とくさんと言った。


 とくさんはもう70歳を過ぎていたが、利益度外視のとても安い値段で食事を提供していた。


 ある寒い夜、もう店を仕舞おうとしていた時、2人の子供が入ってきた。

 2人は入ってきて席に着くなり、こそこそと話を始めた。


「兄ちゃん、ほんとうにいいの。お金持ってるの。この頃、給食費も払えなくなったじゃない。給食時間に教室を出て、水を飲んでがんばってるけど、もう限界。」


「うん。寝込んでいたお母さんが、お財布の中のお金をこの食堂で見せて『このお金でお願いします。』って言えって。」


 こそこそと話したようでも、子供の声は回りで聞き取ることができる。

 とくさんにも聞こえていた。

 子供達が座った席に近づくと、優しい顔で言った。


「ぼうや達、いらっしゃい。おばちゃんは料理の名人だから、美味しいものをたくさん作れるよ。」


 それを聞いて、年長らしい子供がとくさんに、持っていた財布を開けて見せながら言った。

 心の底からの恥ずかしさと遠慮がこもっていた。

 とても小さな声だった。


「このお金でお願いします。」


 財布の中をちらっとみたとくさんは、とてもびっくりしたような顔をして2人の子供に言った。


「あっ、ほんとうにびっくりした。ぼうや達、なんでこんな大金を持っているの! おばちゃんに任せてね。とびきりおいしい料理を作るから。」


 とくさんは手早く定食を作り、2人が座ったテーブルに持ってきた。

 暖かくて、おいしくて、栄養のあるものだった。

 子供達はあっという間に完食した。


「ごちそうさま」

「ごちそうさま、お金を払います。」

 年長の子供がお財布の中にあるお金を渡した。


「はい、おつりですよ。」


「おつりがあるようなお金じゃありません。間違えているのでは。」


 とくさんは笑っていった。


「ぼうや、お母さんが最後までお財布の中に残していたお金ほど、価値があるものはありません。だからおつりがあるのです。」



 これ以外にもいろいろなエピソードがあったが、灰目九郎は全てを認識した。

 時は深夜だった。


「これは、これは、美しく光り輝いていますね! 早いとこ、闇で覆ってしまいましょう! ヤミヨ、コノヒカリヲオオエ! カツ! 」


 灰目九郎は手で印を作ると、とくさんの食堂の建物に夜見の国の不思議な紙で作られた御札を貼った。

 すると、とくさんとともに食堂の中の時間は止り、暗闇に隠された。


 次の日、前に夜に食事をした2人の子供の母親が子供達を連れて、とくさんの食堂にやってきた。

 母親は、熱が下がりなんとか歩けるようになり、お礼とお金を返しにきたのだった。


 すると、そこは全く何もない空き地になっていた。

「ほんとうに、ここに食堂があったの。」

「ほんとうだよ、僕達は暖かい店の中でおいしい食事をいただいたんだ」


 その時、ちょうど散歩中の近所の人がそこを通り過ぎようとしたので、母親は聞いてみた。


「あの、変なことをお聞きして誠にすいません。ここの食堂はどうなったのでしょうか。」

「食堂ですか、ここはもう何年も前から空き地ですよ。」


 次に通学途中らしい高校生が通ったので、母親は再度同じ事を聞いた。


「知りません。僕は毎日ここを通って通学するけど、ずっと、こんな感じですよ。子供の頃はこの空き地でサッカーしたりしてよく遊びました。」

お読みいただきありがとうございました。

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