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第3章 光の皇子  ーアスランー

第3章 光の皇子

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アスラン

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「うわーすっっごおい!」


離れに案内されたツクネは声を上げた。


室内には噴水のような大きな建造物があり、そこからお湯が渾々と沸きでていた。


「さあ、姫様、お召し物をお取りしましょう」


「えええ!!!自分でやるからいいよう!!」


服を脱がせようとするサラをツクネはあわてて止めた。


「では、私は、控えにおりますからなにかありましたら、声をかけてくださいね。」


サラはくすくす笑いながら離れをでていった。




「・・・・ふう・・・・」


ツクネは服を脱ぐとゆっくりと湯船につかった。


(急にいろんな事があって、ぜんぜんついていけないよ。記憶も、何も思い出せないし・・・。)


「ん…。でも、なんとかしなきゃね!」


そう言ってツクネは自分の顔にぱしゃっとお湯をかけた。


その時、突然、ばたばたと音がして誰かが離れに入ってきた。



「あー!いたいた!!」


男の声がした。


「だ、だれ!!」


 ツクネが振り返ろうとすると同時に、どぼーんと水しぶきが上がり、誰かが湯船の中に飛び込んできた。


「ぎゃあああ!!!!!!」


ツクネが叫ぶとサラがあわてて入ってきた。


「姫様!!どうなさいました!!・・・・!!!」


サラはそう言った後、ひどく驚いた声を上げた。


「・・・・・まあ!!アスラン様!!!!」


「あ、アスラン様???!!!」


すると、飛び込んできた男がずぶ濡れになった髪を掻き上げていった。


「そ、俺、アスラーン!!姫お久~!!

脅かそうと思って。…びっくりしたあ??」


「あ!!あんたが!!アスランアスランアスラン!!!」


指をさして何度も言うツクネにちょっとアスランは怪訝な顔をした。


「ああ、そっか、そっか。まだ、記憶がもどってないんだ。

なんだ、いつものアテーナなら、ビンタ一発かましてくるところなんだけど。」


「な!!!!」


「ささ!!アスラン様!!お上がりください!!このままでは姫様がつろうございます」


「へえ~。そう。うーん、そうだね。なあんだ。つまんない」



そういってアスランはツクネが体を隠していた布をぴらっとめくった。


「ぎゃあああああ!!!!」


「ぎゃはははははは!!」


アスランは笑いながら湯船からあがった。


「ばか!でていけ、変態!!」


するとアスランはにやりとわらった。


「ばーか。お前は俺のフィアンセだ。いずれ、その体は全部お・れ・の・も・の!!」


「でていけえええええ!!!!!」


お湯をかけるツクネからふざけて逃げるようにしてアスランは部屋をでていった。



・・・・・



「・・・・・・・・・ふう。」


ツクネはしばらくアスランが出て行った方向をにらみつけていた。

突然のことで、心臓はまだ早いペースで動いたままだったが、なんとか考えられるぐらいに落ち着きを取りもどした。


( く、くそう。あれがアスランだって?…とんだフィアンセだよ。これじゃ、ロマンチックでもなんでもないじゃん。)


気持ちが落ち着いて来るにしたがって、今度は怒りが込みあがってきた。


(…ってか、だいたい、なんでアスランがここにいるんだ!!

急に来すぎじゃん。・・・・に、しても、突然やってきて、「胸ちっちゃい」とは、まじ、失礼な奴!!)


そう、心の中で思うと、我慢ができなくなり、ツクネは両手でばしゃばしゃとお湯をたたいた。そして


「ほんっと!!ルキアの言うとおり・・・


あいつは・・・・・猿だあああああ!!!!」


と、大声で叫んだ。



-----------



 一方。


 ツクネが禊ぎのために部屋を出て行った後、しばらくしてルキアがセイナに話しかけた。


「ねえ、セイナ。あれでよかったのかよ?」


「何がですか。」


「アテーナ姫が封印された理由。本当は違うんじゃないの?」


「ああ、そのことですか。

 

 …じつは、本当のところは私にもわからないのですよ」



ルキアはセイナをじっと見つめた。そして少しにらみつけるような顔をして言った。



「セイナは…嘘つきだ」




「・・・・・・・・・」



セイナはただ静かに微笑んだ。






「あ、いたいた。おーい!!!!ひさしぶりー!!」


そこへ勢いよく、男が飛び込んできた。


「あー!!光の皇子!!」


「ちょっと、火の皇子ルキアちゃん、その言い方、やめてくんない??

アスランでいいっちゅってんじゃん。」


「そういうアスランも、気持ちわりい言い方やめろよ!!」


「はっはー、ごめんごめん。よう、セイナ!!久しぶり!!」


そして、アスランはセイナのあごをくいっと持ち上げて顔を近づけた。


「あいかわらず・・・・きれいだぜ。セイナ。」


「でたあ!!・・・だから、それ、やめろっつううの!!」


あきれるセイナとハイテンションなアスランにルキアがつっこんだ。


「思ったよりも早く来たね。」


「ああ、さっきな。先にアテーナ見に行ったら、あいつ、記憶がもどってねえのな。

に、しても、相変わらず胸ちっちぇー!!」


「泉に行ったんだね。行ったんだ。やっぱり…。」


ルキアがさらにあきれて言った。


「ん。でも、あいつ、思ったより元気そうだった。」


にっこり笑うアスランを見てセイナが優しく言った。


「大丈夫だよ。安心して。そのうち記憶も戻るだろうし。」


「いや、戻らない方がおれはいいよ。」


「・・・・・・・・」


なんとなく気まずい雰囲気になったのを感じ取り、ルキアが話しかけた。


「そ、そうそう、アスラン!!」


「なんだよ、ルー君」


「ルー君?!ま、いいや。満月の宴まではいるんだろ?」


「いや、最初はそのつもりだったんだけど、そういうわけにはいかなくなった。

今、ちょっと俺ら形勢不利でさ。メンタルの将の一人が倒れちまって。

それにダークのやつらが自分らの国に近い町を制圧しちゃったんだよね。

でも、とりあえず姫が戻ってきたなら、会っておかないと、…と思って知らせがきてすぐに移動の魔法陣を組んだ。

できるときにやっとかないと、この先どうなるかわからないしね。」


「そうか」


セイナは伏し目がちに笑うとそう言った。

アスランはそんなセイナを見つめた。そして近寄ると、その美しい髪をすくい指に絡めた。


「本当にセイナはきれいだな。だいたい、なんでお前が光の皇子じゃないんだ。

お前が皇子だったらきっとすべてうまくいくのに。

俺はお前が皇子なら、側について、いつでもこの身を捧げるのにな。」



「またそれを言う。そういって現実からいつも逃げようとするのはだめだよ。アスラン。光の皇子は、君だ。」




セイナはそう言うと、髪をさわっていたアスランの腕をつかんだ。アスランはそれを振り払うと、もとのテンションに戻って言った。



「…なあんてな。ま、言ってみたくもなる訳よ。

とりあえず、今日の夕食の時まではいるよ。そのつもりの魔法しかつかってねえから。そんなに体力も減らせねえし。」


「供はいないのか?」


「あ?いるよ。あいつ、ベルデとアリュウ。あと従者が15人。どうしても来たいって言から。アリュウ、お前目当てでついてきたんだぜ? あーあ、もてる男はいいなあ! でも、所詮、神官だけどな。」


「アスラン!!」


「いいんですよ。ルキア。いつものことです。で、アスラン。ツクネとは、改めて話す機会があったほうがいいだろ?」


「ツクネ?あいつ、ツクネってよばれてるの?かわいー!!あははー!!

 話なんかねえよ。記憶戻ってないなら、アテーナなんか、どうでもいいやー!」





「本心を言えよ。アスラン…。」






「・・・・・・。」







セイナがそういうと、アスランはふざけるのをやめた。

そして、セイナを上目遣いで見てにやっと笑った。



「怖いな。セイナ。…あいつのことになると」




「・・・・・・・・。」





「うーん、そうだな。

でも、本当に、ツクネとは話さなくていいよ。夕食の宴で一緒にさせてもらうだけで。

だって、あいつ、記憶ねえし。戻ってないやつにいろいろ言ったって無駄だ。」



「そうか」



「いやー、それにしても、ツクネちゃんだって。かわいい!!ひっさびさに見たよ。

髪の色が違うな。でも、俺はあの髪の方がいいな。どっちかっつうと、俺の髪の色に近いしな。

今日は裸もみれちゃってらっきー!!

来た甲斐があったよ。胸ちっちゃいのは変わってないが、それはそれで、キュートなんだからあー。


…なーんて。お前も見たかったろ?残念だな」


「別に。だいたい彼女はお前のフィアンセだし。

私は彼女をただの女性として愛しているわけではない。神官として、兄として彼女を見ている。

お前が連れて行くまでな。」


「へえー、そうだったっけ?。」



「アスラン、もっと、誠実にアテーナを愛せよ。じゃないと、彼女には伝わらない。」


「ばーか、お前にはわからない俺の「誠実」があるんだよ!!」



すると、セイナは軽くため息をついた。


「アスラン、お前。戦場に側室を連れて行ってるそうだな?」


「うん。連れて行ってるけど?二人。毎晩代わりばんこ。文句ある?」


「・・・・・。」



「お前だって、この国に来る前には正室も側室もいただろ?

一緒じゃん。それに俺はお前が言うように、皇子なんだから、子供産ませてなんぼだろ?

アテーナは月の国の決まりで少なくとも18になるまで抱けないし。子供生まれても、もし一人しか生まれなければ、月の国の跡取りでとられちゃうんだからさ、光の国の跡取りはどうするよ?ってことだよ」



「・・・・・」


「なんだよ。黙るなよ。怖いじゃん。でも、怒らせついでに一つ教えとくよ。側室の子の名前。」


「名前?」



「ユウアちゃんとリアナちゃん」


「!!」


「ね、わけわかるでしょ?お前のもと正室と側室だよ。

お前がこっち来て神官なんかになっちゃったから、この二人が宙ぶらりんになっちゃったの。

で、お前が抱いた女だし、なんだか俺も欲しくなっちゃって。

お前がどう、あいつらを抱いたのか、考えるとぞくぞくしちゃうしね。

だいたい、あいつらもともと身分も美しさも申し分ないでしょ?だから、俺の側室にしたの。その方が、あいつらの面子もつぶれないし。

でも、しばらく大変だったよ。お前に振られて、周囲からは変な噂されて。

だから……文句ある?」


「・・・・・・」



「言ったでしょ?俺には俺の「誠実」があるって。ちゃんと理由があるんだから。

しかも「戦場につれていけ」って言ったのはあいつらだぜ。

…なんでか?



…そうすればお前に会えるからじゃないの? 」



「・・・・・・・・・」



「でもね。今回は連れてこなかったの。だってアテーナに会いに来たんだし。アリュウはお前にあこがれてるだけだから、連れてきてやったけどね。

それにあいつら、せっかく俺が愛してやってんのに、お前見てまた思い出されるのも、しゃくだしな。」


「さあ、……文句ある?」



「ないよ」



そう言うと、セイナは深くため息をついた。






「おい。・・・子供に聞かせるはなしかよ?」





じっと黙っていたルキアが口を開いた。




「あはは。うまいこと言うな。でもさ、お前、本当は。」


アスランの言葉をセイナがさえぎるようにして、声をかけた。


「そういえば…。アスラン、服が濡れているけど?」


「ああ、さっき泉に飛び込んで…、


くしゅん!! 


あれ?風引いちゃったかな?」


「・・・・・・・・・・飛び込んだんだ・・・・。あほだな・・・」


ルキアのあきれる声がぼそっと聞こえた。



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