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9話 僕とレインの早朝トレーニング feat.ミア

 


「ふわぁぁあ…こんな朝早くから特訓してるの?」



 中間査定から一夜が明けた。

 早朝5時前、学院の訓練場へと向かう道中で、僕とレインに付いて来たミアが欠伸交じりに問いかけて来る。



「嫌なら別に特訓に付き合わなくて良いんだけど?」


「ゴメン…もう弱音は言わない」


「ランディ、意地悪な事を言わないであげなよ。

 慣れないと、この時間に起きるのはしんどいんだから」



 訓練場は学生証で解錠出来て、朝5時から夜11時まで利用が出来る。

 勿論、僕とレインは野営訓練の時以外は、毎朝5時から来て訓練をしている。

 早速、訓練場に着いた僕とレインは向かい合って、魔力循環の訓練から始める。


 全身にゆっくりと魔力を循環させる所から始めて、徐々に循環スピードを速めて行く。

 朝一でコレをすると、体の何処かに異常が有れば直ぐに分かるし、軽い損傷程度なら治す事が出来るんだけど、学院の授業では何故か教わらない。

 レインも最初はこの訓練法を知らなくて、教えたばかりの頃は直ぐにバテていた。



「ちょ、ちょっと、男2人が向かい合わせで目を閉じて、一体何をしてるの?」


「あ、そうか。

 ミアも魔力循環の訓練は省いてるクチかい?」


「いや、省くも何も、ミアはそんな訓練知らないんだけど」


「あぁ、そっか。

 コレはその、、こう体の中の魔力を…身体の隅々まで行き渡らせるように…まあ、そんな感じでメッチャ循環させるというやり方だ」


「ははは、ランディはこういう指導は下手だなぁ。

 ミアちゃん、体中に血が巡っているのは知ってるよね?」


「バカにしないで。そんなの初等部の子供でも知ってる事じゃない」


「うん。

 血が身体中を巡っているのと同じイメージで、ゆっくりと体内の魔力を巡らせると上手く行くよ。

 最初に目を閉じて、体の中の魔力を感じ取るのがポイントかな」



 レインがミアに見事な説明をした。

 うん。僕はこういう事は感覚的にしているので、言葉に出して説明するのが苦手みたいだ。


 レインのアドバイスを受けたミアは、その後悪戦苦闘しながらも、魔力循環の初歩の初歩が出来るようになった。

 剣術の心得があるせいか、かなり飲み込みが早い。



「ハァハァ…ちょ、ちょっと休むね…」



 汗だくになったミアが床にへたり込んだ。



「ミア、明日から訓練の時はそんな短いスカートを履かない方がいいよ。

 下着が丸見えになってる」


「キャッ!ご、ごめん…明日からショーパンにする」



 慌ててスカートの裾を抑えたミアが、恥ずかしそうに言った。

 素直な態度になったミアを見るに、元々悪い性格では無いんだろう。

 因みに、レインはミアの下着を見て、顔を真っ赤にして俯いてる。

 こういう人をムッツリスケベと言うらしい。

 正直、僕も女の子に対する免疫が無いので、内心かなりドキドキしている。



 ピ、ピンクか…髪色と合わせたんだろうか?





 その後、僕とミアはピンポイントでの部位強化の訓練と、ダンベルやバーベルで筋肉に高負荷をかけるトレーニングを行った。



「ランディって、地味なフィジカルトレーニングも念入りにするんだね?」



 僕と一緒にバーベルでトレーニングをしているミアが問いかけて来た。



「当たり前じゃないか。

 身体能力強化を使うにしても、基礎となる筋力が無いと何の意味も無いんだし。

 ミアもフィジカルトレーニングは慣れてるみたいだね。随分前から訓練に取り入れてたんじゃない?」


「うん。ここに入る前からずっとやってたんだぁ。

 ランディもミアと同じ風に考えてて嬉しい。

 ここの学院の人達って、フィジカルトレーニングやってると変人扱いするじゃない?」



 ミアは嬉しそうにそう言った。

 彼女の言う通りで、学院の生徒達は素振りだの、魔術の的当てだの、スキルを伸ばす為の訓練だのに熱を入れいて、基礎の体力トレーニングはランニングくらいしかしない。

 前衛職の人達は武器を振っていれば自然と筋力は付くと考えているようで、後衛の人は筋力なんて必要無いと思っているらしい。



「確かにね。でも、僕はミアやロシュみたいに基礎の筋力をしっかり鍛えている人の方が、戦闘能力は格段に上がると思うんだよね。

 現にミアはグレートファング相手にあれだけ見事に立ち回ってたし。

 体内魔力の基礎を覚えたら、僕なんかあっという間に超えちゃうよ」


「ふふふ…ありがと」



 ミアは頬を赤らめて、僕に笑顔を見せた。

 僕はこんな整った顔立ちの女の子に笑顔を向けられるのは初めてで、顔が熱くなって来る。


 ミアの笑顔には、相手を状態異常にさせるスキルがあるのだろうか?


 僕はいたたまれなくなって、少し離れた所でトレーニングするレインの方に目を向けた。

 レインは、魔力制御で範囲を極力絞った魔術発動の訓練と、周囲の極微少な魔素を体内に取り込んで魔力に変化する魔力増幅呼吸法の訓練をしている。


僕らはその後もいつものペースで早朝トレーニングをこなした。

驚いた事に、ミアはバテながらも基本的なメニューを殆どやり遂げた。

初日で僕らについて来れるなんて本当に凄い。



「ミアは初日とは思えない程筋が良いね。

 流石剣の達人だ。」


「えへへへ。そ、そうかな?」



 ミアは褒めると、子どもっぽいリアクションをするんだな。ヤバい、また状態異常をかけられてしまいそうだ…

 それにしても今の彼女を見ていると、いつも高飛車な態度だったミアと同一人物とはとても思えない。



「なぁ、ミアは普通にしていれば良いヤツなのに、なんであんな高圧的な態度を取ってたんだい?」


「え?だって『冒険者ウーマン』に、女の子の冒険者は舐められるって、上から目線で差をつけろって載ってたから…」



 ほう、またあの雑誌ですか。

 雑誌の記事を鵜呑みにするって、とても素直な性格なんだな。



「確かに、女性冒険者は舐められ易いみたいだけど、自分自身の力に自信と誇りが有れば、別に他人からマウントを取る必要は無いと思うよ?

 ミアは剣聖で、剣術も一流じゃないか。

 充分誇れる実力が有るんだから、必要以上に他人を貶す必要は無いさ」


「……しゅ、素敵……しゅ、しゅき…」



 ミアが顔を赤くして何か呟くと、俯いてしまった。

 怒らせてしまったのだろうか?



「アハハハハ!青春って感じで良いねぇ」



 レインが笑いながらそう言うと、何故か微笑ましい物でも見るかのような目を僕たちに向ける。

 なんか揶揄われてるみたいで嫌だな。

 でも、久し振りにレインとも朝の訓練が出来て良かった。お互い長期野外演習で会えてなかったからね。



 その後、ミアと別れた僕たちは、シャワールームで汗を流してから、寮の食堂へと向かった。




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