42話 マック出頭
「皆んな、俺のせいで迷惑をかけて、本当に申し訳無かった」
親子の再会から少し経って、落ち着いたマックが僕たちに改めて頭を下げて来た。
「俺はこれから自首して罪を償って来るよ」
そう言ったマックの表情には迷いが無い。
覚悟を決めた男らしい顔付きになっている。
「ウィルフレッド閣下、マックは悪い奴らに騙されただけなんです!
投獄されないように出来ませんか?」
マックは『暗黒時代に飛ぶ鶏』とは知らずに奴らのアジトに着いて行ったけど、正体に気付いて直ぐに逃げ出そうとしたらしい。
だけど直ぐに捕まって、精神に作用する魔導具で操られてしまった。
実家から『鳳凰の泪』を盗んだのも、奴らに操られての事だ。
その後も抵抗出来ずに、邪神の依代になる儀式が行われたけど、儀式の際に一旦魔導具の効果を消さなくてはならなかった。
そこで正気に戻ったマックは、儀式の途中で逃げ出したけれど、既に契約紋が刻まれて、徐々に身体が蝕まれて行ったようだ。
何とかレジーナの元にたどり着いて、自分を郊外に隔離するように頼んだ。
小屋に着いた後はレジーナに逃げるように伝えて、1人で人気の無い所で死のうとしたらしい。
だけど、これらはあくまでもマックの言い分で有って、それを証明出来る証拠が何も無い。
普通に考えて、一学生だったマックが自分の命と引き替えに王都を壊滅なんてする訳が無いのに、証拠が無い以上マックが一連の騒動の責任を取らなくてはならない。
「ランディ、ありがとう。
でも、自分のしでかした事の責任を取らなきゃな」
「馬鹿野郎!レジーナはどうするんだよ!
お前の事を死ぬほど心配してたレジーナを1人残して行くのか!?」
「ランディ…お前…」
僕はどうしても納得が行かなかった。
マックはテロリストに騙されて、危うく殺されかけた。
奴らの甘い言葉に乗せられたのは彼の落ち度かも知れないけど、テロリストだと知って協力を拒んだのだ。
奴らのアジトはもぬけの殻で、逃れたテロリスト供は今ものうのうと過ごしている。
それなのに、何でマックだけが責任を取らなきゃならないんだよ!
「それなら解決したぜえ!」
やたらとデカい声が、侯爵閣下の執務室に鳴り響いた。
ジェニス教官が黒装束の男を右手に引き摺り、左手に変な魔導具を持って部屋に入って来た。
「可愛い教え子のピンチって聞いてな。
ホラ、マクレランを誑かしたのはこの男だろう?」
教官は引き摺ってきた男を、皆んなの前に転がした。
「き、キサマァ!!!
よくも俺を騙してくれたな!?」
マックは男を見るなり、血相を変えて腰の剣を抜こうとした。
僕は慌てて止めに入って、マックを宥めた。
「コイツが全部ゲロったゼ!
ホレ、コレがマクレランを操ってた魔導具だ」
そう言って、教官は魔導具を男の頭に投げつけた。
一応大事な証人なのに、今ので死んだらどうするんだろう?
まあ、教官のおかげでマックが助かったんだから、一応感謝はしておくか。
「マクレラン、お前は只のテロ未遂事件の被害者だ。
安心して明日から登校して来い」
「え、で、でも俺は退学になっているんじゃ…」
「ああ、退学届は受理されたみてえだけど、どういう訳か学院長の承認印に不備が有ってな。
お前に退学の意思があるなら手続きを進めるけど、どうする?」
マックは目に涙を溜めながら、教官に何度も頭を下げた。
ウィルフレッド侯爵閣下も一緒に頭を下げている。
僕は後ろの方で控え目に立っていたレジーナに声をかけた。
「良かったな。
またマックと一緒に学校に通えるぞ?」
「え?え?わ、私は別に、そんなんじゃ…」
レジーナがめっちゃ赤面し出した。
意外に初心いじゃんね。
僕たちはマックとウィルフレッド侯爵閣下に挨拶をして、パーティーハウスへと帰った。
当然、大活躍のフィリスには、シーアの実を中心としたフルーツ盛り合わせを振る舞うのは忘れない。
はぁ…とりあえず、マックの事がうまく収まって良かったよ。




