39話 マックの受難 ②
マック視点
自室での謹慎は1ヶ月以上に及んだ…
その間、父上が用意したクソ家庭教師が、正しい貴族の心得とやらを付きっ切りで指導して来た。
奴らの言う事は甘っちょろい理想論で、耳障りな雑音以外の何物でもねえ。
大貴族の俺様をこんな目に遭わせやがったのは、あのクソったれエリスの野郎だ!
アイツだけは絶望と屈辱を味合わせて殺すしかねえ!
絶対に殺す!コロス!コロスゥゥウ!
8月に入り謹慎が解けて、執事が付いた状態での外出が許された。
久し振りに王都を散歩するのも悪くない。
執事のジジイは気に入らねえが、適当に巻いてクソ野郎を殺せそうな暗器か魔導具でも探しに行くか。
散策をして30分。
俺は予定通りに人混みに紛れて、執事のジジイを撒いた。
魔導具屋は冒険者ギルドの近くに有った筈。
先ずはそこに向かおう。
「なっ!あ、アレは…ク、ソがぁぁ、、!」
俺の目に飛び込んで来たのは、ギルドの建物から出て来たクソったれのエリス!そしてミアだ!
奴らは人目も憚らずにイチャイチャしてやがる!
「ミ、ミアは俺様の性奴隷だぞ!…それをあのクソ野郎がぁぁあ!」
俺は怒りで発狂しそうになるのを堪えて、奴らの後を尾行しようと考えた。
何処かで隙を見てミアを攫う。
あの女を散々犯し尽くした後で、クソエリスを呼び出す。
ヤツを罠に嵌めて、拘束。
ヤツの前でミアを犯しまくった後で、絶望するクソ野郎を甚振って殺す!
我ながら完璧だ!
◇◇◇◇◇
「クソっタレが!
尾行すらさせねえってか!」
奴らが去った後…俺はひたすらに建物の壁を殴った。
イチャ付いてるヤツらには、尾行する隙すら無かったからだ。
奴らの歩き出しに合わせて物陰から出ようとした瞬間に、クソエリスが俺の方に振り向きやがる!
奴らが視界から消えるまで、建物の陰から一歩も動けなかった。
もしあの時、一歩でも動いていたら、前のように手足が吹き飛ばされたかも知れなかった。
「クソったれが!忌々しい事を思い出させやがってえ!!!」
俺は再び壁を殴りつける。
拳は擦り剥けて血が垂れているが、構っちゃ居られねえ。
「へへへ、アンタ…誰か恨みの有るヤツが居るのか?」
不意に背後から声をかけられた。
俺はムカつきながらも振り返ると、少し離れた路地裏にフードを被った見るからに怪しげな男が立っている。
歳の頃は30前後くらいだろうか?顔に大きな刀疵が入っている所も大いに怪しい。
それより、声はすぐ近くから聞こえた筈だが…
「俺たちの組織に入って仕事をすりゃあ、アンタの復讐に力を貸してやるぜぇ?」
声が聞こえたと同時に、路地裏に居たはずの疵面の男が俺の目の前に現れた。
俺は男が放つ言い知れない不気味な雰囲気に、言葉を失った。
「へへへ。あの銀髪の坊主が憎いか?
だが、アンタの腕じゃあ、あんな化け物にゃ太刀打ち出来ねえぜ?」
「な、何だと!
あんなクソ雑魚など俺様の敵じゃねえ!」
「だったら、何でさっさと後をつけなかった?
あの坊主が本当に雑魚なら、尾行してブッスリ行くくらい造作も無いだろう?」
男の此方の心を見透かすかのような物言いが癪に触る。
「う、うるせえ!あの野郎は禁忌の呪術を使うんだ!
前にヤツは俺の手足を一瞬で吹き飛ばしやがったんだぞ!!」
「ヘヒャヒャヒャヒャ!
アンタ荒唐無稽な空想読物の見過ぎだぜえ!
呪術なんてのは、相応の代償を払わねえと発動しねえんだぜえ?
ジワジワと対象の命や身体の機能を奪うのが呪術だ。
手足を一瞬で吹っ飛ばす呪術なんて聞いた事もねえ」
こんな下郎に舐められるとはっ!
今すぐ首を刎ね飛ばしてえ!だ、だが…クッ!
「へへへ、熱くなりなさんな。
アンタ程凄腕の剣士なら、ウチの組織の暗器を使えばあのガキをやれるぜえ?」
「う、嘘じゃないだろうな!」
「ああ。
アンタより遥かに雑魚な俺が、アンタに気付かれずに近づけたんだぜえ?
アンタなら分かるはずだ。俺の首を刎ねるなんて容易いってなぁ」
疵面男の言う通りだ。
こいつからは、強者の雰囲気が感じられん。
ただ、一瞬で近付かれた事が頭に引っかかって、斬りつける気にならねえ…
「……お前の組織とやらの詳しい話を聞かせろ」
「へへへ。この期に及んでまだ即決出来ねえのかい?
まあ良いや。アジトに案内するから付いて来な」
俺は、この怪しげな疵面の男の後を追い、裏路地を進んで行った。




