37話 竜の里秘伝の魔導具
フィリスと暮らすようになって3週間が経った。
フィリスも僕らに気軽に接してくれるようになったし、皆んなもフィリスとの距離がグッと縮まって、和気藹々と暮らせている。
家事は皆んなで分担している。
そして、僕らは相変わらず毎日トレーニングに励み、週の4日はダンジョンに潜っている。
既に8月下旬になり、16月の卒業まで残り8ヶ月。
成績を落とさないように、冒険者活動と平行して勉学に励まないといけないんだけど…
「ね〜!ランディのを丸写しさせて〜!」
「ダメだよ。何で夏休みの課題をやっておかないかな?」
ミアが座学の課題に全く手を付けて無かった…
座学で点数を取れていれば、ミアは今頃ダントツで学年1位のはずだ。
元々剣術が圧倒的だったミアは、常に実技で最高点を出していたからね。
因みに僕は悪目立ちしないように、近接戦闘はせずに魔力操術でのサポートをする事にしていたから、ミアに実戦の点数は及ばない。
まぁ、サポートメインにした結果、禁術を使っていると噂されて更に嫌われたんだけれど。
それはさておき、ミアの手付かずの課題をどうするかだ。
僕のを丸写しすればすぐに終わるけれど、それではミアの為にならない。
特に『魔物科学』、『冒険者史』、『魔術理論』の3科目は今後も役に立つ学科だ。
学院卒業者の2年生存率は約75%、一般の冒険者の2年生存率は約41%と、大きな差がついている要因として、学科の知識が備わっている事も大きい。
という事で、ミアには自力で頑張って貰いたい。
「ねぇ、ランディ。
えっちなランジェリーを着ているミアを見たくない?」
「な、ひ、卑怯だぞ!」
「あぁん、ランディ…
ミア、お尻がスースーしてるの…
課題を見せてくれたら、スカートの中を見せてあげるんだけどなぁ」
ぬ、く、くそぅ!お尻がスースーするような下着を履いていると言うのか!?
僕を誘惑する為に、短いスカートと胸元が開いたキャミを着ているというのか!?
み、見たい!
どうしよう?
イカンぞ!僕らは学生だと言うのに!
いや、しかし、見せる代わりに見せて貰うというのは、実に対等な取引きと言って良いだろう。
コンコン
「主人様、奥様、お紅茶とお菓子を持って来ました。
奥様の課題は進んでます?」
「あ、い、いや…全然進んでないね。
ミアが僕の課題を写させろとゴネちゃってさ」
「フィリスちゃあん、教えて貰った『えっちな下着作戦』が通用しないよぅ」
何だよ!フィリスの入れ知恵かよ!
ミアになんて事を教えてるのさ…
「それはおかしいですねぇ。
主人様は74%の確率で、ムッツリスケベというデータが上がっているんですけど」
「何だよそれ!
どんなデータだよ!」
「この3日間、私はブラウスのボタン上2つを開けて、スカート丈も10センチ短くしたんです。
主人様が私の胸の谷間をチラ見した回数が3日で34回、座っている私のスカートの中をチラ見した回数が3日で4…」
「わー!わー!ああ、何でも無い!そんな事実なんてどこにも有りはしない!」
く…まさか、最近のフィリスの際どい格好には、そんなトラップが…
僕はガックリと項垂れた。
「ご安心ください、主人様。
レイン様は胸のチラ見が1,842回で、スカートの中のチラ見が2,106回でした。
主人様のチラ見なんて可愛いモノですよ?」
レ、レイン…君ってヤツは…
最高の友達だよ!
おかげで僕の罪の意識が軽くなった。
「因みに、ランディがミアの胸をチラ見した回数は、この2時間で612回、スカートの中をチラ見した回数は853回だよ?
胸は12秒に1回、パンツは9秒に1回見ている計算だよね」
な、何い!?ミアまでそんなトラップを!?
しかも、短時間にそんなにチラ見をしていたと言うのか?
この僕が?
「主人様は奥様の事がめちゃくちゃ大好きですからね〜。
2時間でもそれくらいはチラ見しちゃいますよね」
「やったね!
ランディはミアにメロメロ〜♩」
「い、いや!確かにメロメロだけども、チラ見の回数なんていつ数えてたんだ?
そんな素振りは無かったじゃないか!
僕はチラ見なんて卑劣な真似は断じてしていない!
僕は清廉潔白な…」
「主人様、奥様の素晴らしいオッパイを良く見て下さい。
何か気が付きませんか?」
フィリスに言葉を遮られたが、ミアの胸に何があるというのか気になる。
コレは下心ではなく、変化を見逃さない為の正当なガン見だ。
…ん?
「なんかミアの胸の谷間の所に、小さな黒子みたいな…
ミアの胸にそんな黒子は無かったハズだけど」
「流石主人様!
日頃から奥様の豊満なオッパイをチラ見してないと、こんなにすぐに気が付けません。
コレは竜の里に代々伝わる『ムッツリカウンター』という、超小型の魔導具なんです」
な、何で竜族はそんな魔導具を代々受け継いでいるの?
誰が得するんだよ…
「竜族って、恋愛とかに興味無いって話だよね?
何でそんな男の下心を図る魔導具を?」
「それは簡単な事ですわ。
竜族は性欲は強いので、伴侶の男がムッツリなのかを調べるんです。
恋愛感情は無くても、裏切りは許さないのが竜族なのです。
ムッツリ程、隠れて他の女とコソコソ浮気をしますから」
ほ、ほほう…パートナーの裏切りを許さないのは人族も竜族も変わらないようだ。
「よく分からないんですけど、どうして主人様は奥様をチラ見するんです?
お互い想い合っているのでしたら、堂々とオッパイでもお尻でも見たら良いじゃないですか」
「そ、それは…な、なんつーか、は、恥ずいっつーの?
ミアってめちゃくちゃ可愛いじゃん?
なんかそういう下品な目で見るのはダメかな?的な?」
ぼ、僕は何を言っているんだ?
フィリスのどストレートな問いに、思わず気が動転している。
「でも安心した。
ランディったら、ミアに全然手を出してくれないから、ミアの事が飽きたのかなって心配だったの。
ヤラシイ目でミアの事をチラ見してるって事は、ミアの体に飽きた訳じゃないんだよね?」
「あ、当たり前じゃないか!
そ、それに、全く手を出してない訳じゃないぞ。
ミアと一緒に寝てる時に…そ、その…コッソリと胸にタッチする事は…た、たまーにな?」
「うん。
知ってるよ。
昨日も一昨日も寝ているミアのオッパイ揉んでたじゃない?」
バ、バレてたのかい!
ダメだ…僕は根暗の陰キャだから、堂々と見たり揉んだりは出来ないんだ…
ミアもさぞ失望してるだろうな…
「ハァ…寝ている隙に女性の身体を弄るなんて。
主人様はムッツリスケベではなくて、ムッツリ変態ですね…」
ま、まさかのフィリスに失望された…
竜族から見ても、僕は根暗な変態という事は間違いないようだ。
「だいたい、主人様はとても整った顔をしているのに、どうして堂々と女性の身体を触らないんですか?
今まで幾らでも女性が寄って来たでしょうに」
「あ〜、それはミアも思ってた。
何でランディはそんなにカッコいいのに、女の子と目を合わせて話せないの?」
いや、男とも目を見て話せないんだが…
そう言えば、ミアには話してなかったよね。
「僕は学院に入るまで、家族以外の同年代の人と殆ど接した事が無かったんだ…
女の子だけじゃなくて、男とも目を合わせるのが苦手なんだ」
「え?
普通に初等部に通ってた時に、クラスの人と話したりしなかったの?」
「ちゃんと話して無かったよね…
実は僕は、イラズミス帝国で生まれ育ったんだ。
僕には4歳上の兄さんが居てさ。
凄く優しくて、努力家で…僕はそんな兄さんが大好きだった。
帝国では12歳になると、国民は絶対にステータスを測定しないといけなくてね。
そこで、兄さんのステータスが低い事が分かって…
武力を何よりも重んじる父上は、ステータスが低いっていう理由だけで、兄さんを家から追放したんだ」
僕の過去を話すと、ミアとフィリスは悲痛な表情を浮かべて押し黙ってしまった。
僕もあまり人に身の上話はしたくないけれど、ミアには知っておいて貰いたい。
「僕はそんな父上が心底嫌いになった。
どうしても追い出された兄さんを捜しに行きたくて、父上が不在の隙に実家を飛び出したんだ。
でも、当時8歳だった僕に、行き先も分からない兄さんを捜す力なんてある訳も無くてさ…
行き倒れになっていた僕を拾ってくれたのが、良く話に出す爺ちゃんだったんだ。
爺ちゃんは魔術の達人でね、僕は爺ちゃんに体内魔力に関する訓練を受けた。
強くなって、また兄さんを捜しに行く為にね。
そんな爺ちゃんも、僕が10歳の時に亡くなってさ…
爺ちゃんの葬儀を終えた後に、僕は再び兄さんを探す旅に出た。
その後は帝国各地を転々としたんだけど、帝国は身寄りの無い子供が1人で生きていけるような国では無くてね。
色んな大人達に騙されて、良いように使い捨てられて…
兄さんの情報も得られなかったから、帝国外へ出る事にしたんだ。
イーミス王国に辿り着いて驚いたよ。
当時の僕みたいな小汚い子供でも、生きて行ける術が沢山あるんだから。
日雇いの肉体労働も、見習い扱いという事で雇って貰えたし、教会は無料で泊まらせてくれたり、ご飯を食べさせてくれた。
それで、親切な教会のシスターから冒険者学院の事を聞いたんだ。
冒険者になれば1人でも食べて行けるし、高ランクになれば失踪者の情報に触れる機会が出て来る。
兄さんの情報が得られると思ったんだ。
それで、学院の特待枠の試験を受けて、何とか合格してさ。
でも、同年代の友達と遊んだり話す機会が無かったから、入学後は男子とも女子とも上手く話せなくて。
で、マックと揉めて…周りから避けられて…
僕がクラスの嫌われ者なのは、ミアも知ってるだろう?
僕は、人と上手くコミニュケーションが取れないゴミ人間なんだよ」
「そんな事無いもん!
そんな生き方をすれば、誰だって人見知りになるし。
ランディはゴミなんかじゃない!
心が繊細で優しいムッツリスケベだよ」
ミアが大粒の涙を流しながら、僕を抱き締めてくれた。
抱きしめてくれるのは嬉しいんだけど、ムッツリスケベなのは変わらないのね。
「うぅぅぅ…主人様はそんなお辛い人生を…
女性と接する機会が無い状態で、女神のような奥様を娶られれば、ムッツリ変態になって当然ですわ…」
フィリスも、ムッツリ変態というのは撤回してくれないらしい。
「っていうか、課題をやらないと!
ガチで間に合わないよ」
「あ、そうだった。
ねぇ、ランディ。ミアのえっちなパンツは見たくないの?」
またその話に戻るのか…
でも、身の上を話して、どこか心が軽くなった今の僕は、もう煩悩に惑わされる事は無い。
「ブラもえっちなヤツなんだ〜。
あ〜あ。
ランディに見てもらいたくて、勇気を出してワイハーで買ったのになぁ…」
僕は煩悩に負けました…




