32話 新たな仲間
「ちょ、ちょっと!ふ、服を着てくれ!」
僕は慌てて顔を背けた。
コレは浮気にならないよね?だって、事故みたいなものだし。
「私はドラゴンでございます。人族の服なんて持っておりません」
「ほ、本当にさっきのドラゴンさんなんだ…っていうか、普通に喋れるんだね」
「アレは人族にあのように語りかけると、恐怖心を植え付ける事が可能だと父様に教えて頂いたのです」
そ、そうなんだ…とりあえず何か着てもらわないと…
僕は一旦火竜の女性に待っててもらうように言って、魔導車の所まで戻った。
皆んなに事情を説明すると、当然の事ながら皆んな困惑していた。
取り敢えず、火竜から話を聞くという事になったので、マジックバッグからミアが買ったキャミソールとショートパンツを取り出して、ミアに火竜の着替えを任せた。
20分後。
キャミソールとショーパン姿の美女が、ミアと一緒に火口から降りて来た。
火竜美女は、プラチナブロンドの髪が肩口くらいまで伸びていて、毛先が紫色のグラデーションになっている。
何ともシャレオツなドラゴンである。
凛とした眼は何処か気品を感じさせる。
頭に2本の角が生えているけど、消す事も出来るらしい。
角を消すと、どこからどう見ても美人なシャレオツお姉さんだ。
キャミソールから覗く胸の谷間が、特にギルド長の心を鷲掴みにしている。
「おい、ギルド長。女性の胸を凝視するんじゃない。
例え相手が古代竜でも失礼だろ」
「バッ、バッカじゃねえの?
俺は全然見てねえし!寧ろ胸って何って感じ!?」
うん、このギルド長必死に否定し過ぎて怖い。
「ところで、なんで君は暴れ出したのかな?」
「それは暴れたくもなります!
私はただ、この島に沢山成っているシーアの実を食べに来ただけなのです。
それなのに人族どもは、私の姿を見るなり魔術で攻撃して来て、あの火口の所に閉じ込めたのです。
それから50年もあんな所に閉じ込められたのですよ?」
火竜の話を聞いた僕たちは、彼女に同情してしまった。
ギルド長が魔導具でギルド職員と連絡を取り、当時の記録を調べさせた所、彼女の言う通り火竜が攻撃を仕掛けて来たという記録は無かったようだ。
50年前も、今日も人的な被害は無かったようだ。
「そうか、じゃあ君はこれからどうするんだい?
人族に攻撃するつもりなら僕が首を刎ねるけど」
「あ、あわわわわ!こ、殺さないで下さいませ!
人族には手を出しませんから!どうか、どうかご容赦ください!」
やはり、彼女には害意は無いらしい。
「私は主人様に一生ついて行きます」
「へ?主人様がいるの?」
「ええ。白銀の髪の美しいお顔をした貴方様です」
「ぼ、僕の事!?」
美しい顔はともかく、銀色の髪はこの場に僕しか居ない。
レインは金髪だし、ベティはアイスブルー、ミアはピンクゴールド、そしてギルド長はハゲ…
「ダ、ダメよ!ランディはミアの旦那様になるんだから!
例えドラゴンでも他の女には絶対に渡さないもん!」
「そうだよ。
僕はミア意外の女性との結婚は考えられない。
申し訳ないが…」
「別に夫婦になって欲しいとは言ってません。
従者として主人様にお仕えしたいのです」
あ、ああ…早とちりしてしまって恥ずかしいけど、それよりも従者ってどういう事?
「申し遅れました。
私の名はフィリスと申します。
どうか、主人様のお側に置いて下さい」
「竜種は強者を尊ぶ種族っていうのは聞いた事があるよ。
多分、彼女はランディの強さに心酔したんじゃないかな?」
「はい。
其方の矮小なる者の言う通りです。
私は、主人様の強さに心より感服致しました。
ですので、どうか下僕として行動を共にする事をお許しください」
そう言うと、フィリスは僕に跪いた。
レインの事は矮小扱いするんだね。君の動きを封じたのは彼なんだけど?
「ランディ、コイツをもう一度凍らせてもいい?」
「凍らすのは辞めてあげてくれ。
なぁ、フィリスの申し出は有難いんだけど、僕はまだ学生だし、従者とか言われても困るんだ」
「絶対に、ご迷惑はおかけしません!
其方の大変お綺麗な奥様の事も、全身全霊でお守りしますので、どうかお願い致します!」
「た、大変お綺麗な…お、奥様…
それってミアの事?」
「はい。
奥様のようにお美しく可憐な女性を、私はこの400年の人生で一度も見た事がありません」
「ね、ねえ。ランディ。
フィリスちゃんって、とっても良いコだと思うの。
仲間に入れてあげたら?」
ミアはチョロかった。
まあ、火竜の言う事は全く間違いではない。
そうなのだ。僕のミアは絶世の美少女なんだから。
「う〜ん、ギルド的には問題無いの?」
僕は念のためギルド長に確認してみた。
「そうさなぁ。
とりあえずフオア島の危機を取り除いてくれた事にはなるし、人族に危害を加えない事と、街や村の中で無闇にドラゴンの姿にならない事を契約してくれれば問題ないぞ」
「下賎な男よ、心配には及ばぬ。
主人様と竜種に伝わる隷属契約を行えば、主人様の命に逆らう事は万に一つも起こらぬ」
やはり、僕とミア以外には上からだな。
フィリスはミアと似ているのかも知れない。
「そっか。で、その隷属契約はどうするの?」
「私の血を主人様の左手の甲に1滴垂らします。
その血に主人様の魔力を込めて頂くと、私の左手の甲に隷属の紋が浮き上がります。
その隷属の紋に主人様の血を一滴垂らして頂ければ、隷属契約が完了致します」
血を垂らすだけならば問題ない。
レインやベティも隷属契約と、フィリスのパーティーへの加入に同意してくれた。
こうして僕は、フィリスの主人となってしまった。
◇◇◇◇◇
「もう、やだ〜!フィリスちゃんってば正直者なんだから〜!
フィリスちゃんだって、とっても美人だよ?」
「いえ、私など、奥様の美貌には到底及びません」
「もう〜!嬉しい事言ってくれちゃってぇ!
あ、そうだ!フィリスちゃんも明日お洋服買いに行こう!」
「はい。
私などで宜しければ、喜んで奥様にお供させて頂きます」
帰りの車中で、ミアはフィリスに誉め殺しされ、とても上機嫌だった。
まぁ、仲良くなってくれたみたいで良かったよ。




