27話 世界で一番アツい夏休み ⑤
僕とベティの料理対決が始まった。
調理時間は1時間。
ミアとレインは審査員だ。
僕は早速寸胴鍋に大量の水を入れて、グリルの炭火に掛けた。
バーベキュー用に切り分けて余った、豚の大腿骨を丁寧に洗い、適度にブチ折ると、煮立った寸胴に放り込む。
ネギや香草、ニンニクを丸ごと同じ鍋に放り込むと、魔力を込めて、骨の髄から旨味が出て行くように圧力をかける。
「アハハハ!鍋に生ゴミをぶち込んでるけど、そんなのが料理な訳?
豚の餌でも作ってるの?」
「ククク…貴様は出汁も知らんのか?
それよりも、野菜を切る手つきが随分と危ういのう?
本当に料理をした事が有るのか?」
僕はベティを舌戦で圧倒しながらも、豚バラのブロック肉に塩胡椒をしてから切り込みを入れて、そこにスライスしたニンニクを挟んで行く。
下味を付けた豚バラ肉を炭火を遠火にしてじっくりと炙る。
ベティの方は、不恰好な野菜と何かの肉をフライパンで炒めている。
食材別の火の通りを全く計算していないので、ゴロンとカットした人参は中まで火が通りそうもない。
っていうか、とても焦げ臭い。
僕がマジックバッグに入れてあった乾燥麺を沸騰したお湯で湯がいた所で、もはや僕の勝利は確定した。
岩塩ベースの塩ダレに、オリーブオイルにスライスガーリックを大量に入れて香り付けした香味油。
そこに、寸胴で圧力をかけて旨味を抽出したプースー、湯切りした麺、炙りチャーシュー、刻みネギを乗せて完成だ!
「さぁ、ミア。コレが、僕の『愛の豚骨メンラー』だよ」
僕は熱々のメンラー丼をミアの前に置いた。
伝説の勇者が好んで食したとされる、幻のメニューだ。
「うわぁ、何か食欲をそそる香り!!
いただきまーす!!」
ククク…メンラーをすする姿さえ可愛らしいのう。僕の渾身の一杯を一口すすったミアが目を見開いた。
「え!凄く美味しい!
スープもコクが合って病みつきになる!」
良かった。ミアの口に合ったようだ。
プースーを一口飲み、麺を啜っていく。
チャーシューも口に合ったようで、あっという間に僕のメンラーを完食した。
「ランディ、ご馳走さま〜。
凄く美味しかったぁ!また作ってね」
天使の笑顔を見せてくれるミア。
その隣で唾を飲むレイン。
ククク…僕のメンラーを食べたいのだろう。
「ハハハハハ!何だベティ。まだ出来ぬのか?
もう、制限時間は過ぎているぞ」
「うっさいわね!今持っていくから!」
イラついた様子のベティが、レインの前に皿を置いた。
「な、何で肉野菜炒めが黒い汁に浸っているんだ?」
僕はベティの料理を見て、質問せずには居られなかった。
表面が焦げた野菜と肉のブツ切りと、ドス黒い汁の組み合わせが良く分からない。
しかも、炒めたはずなのに、温かそうではない。
一言言えるのは、とても焦げ臭いという事だ。
「え?炒めてたらチョット焦げたみたいだから、水を入れて冷やしたんだけど?」
焦げても水で冷やせば大丈夫だと思っているらしい…
レインはコレを食べなくてはならないのか?
「さぁ、レイン。
私が愛情を込めて作ったんだから、どんどん食べてね。
お代わりも有るから」
「おい、ちょっと待て!
レインに食わせる前に、味見はしたのか?」
「え、何それ?
別にしてないわよ」
ほほう…それはレインで人体実験をするという事かな?
レインは大量の汗を額から垂らしながら、震える手で肉を口に運んだ。
う、うお…すぐにえずいたぞ!
「うぷっ…うぉぇぇ…うっ!ング!ハァハァ…
お、美味…美味しいれす…」
「そうでしょ!さぁ、どんどん食べてね!
やっぱり私って料理の天才〜♫」
何とか必死に、焦げたビショビショの肉片を飲み込んだレインは白目を剥いている。
それにも気付かずに浮かれるベティ。
「このバカ!浮かれてないで、早くレインに治癒魔術をかけろ!」
「は?何?負け惜しみ?
私に料理で完敗したのがそんなに悔しいの?」
「マジでアホだな!
自分の作ったものを食ってみろ!」
「は?
私が作ったんだから美味しいに決まってるじゃない。
んぐっ、ププッ!うえぇぇぇえ」
自分の料理を口にしたベティは、盛大に吐いた。
結局、レインとベティは治癒院に搬送され、残された僕とミアは、2人が汚した後始末をしなくてはならないのだった。




