26話 世界で一番アツい夏休み ④
ミアに日焼け止めを塗ってモッコリしている所をベティに見られてしまった事で、僕は思わずキョドッてしまった。
ベティは無慈悲な表情で口を開く。
「なんかアンタの塗り方イヤらしいわ。
後は私がミアちゃんに日焼け止め塗るから、向こうでレインとバーベキューの準備しておいて」
ベティが指差す先は、ホテルの裏手のスペースだ。
そこには何台かのバーベキューグリルと、テーブルと椅子が並んでいる。
ここも、高い部屋に泊まっている客なら、誰でも使えるらしい。
レインが火魔術と風魔術でグリルの炭起こしをしているので、僕は金串に肉や野菜を刺して行く。
「そう言えば、僕とミアが海で泳いでる間、レイン達は何してたの?」
「え…ま、まぁ、色々だよ…うん…色々」
この焦り具合…もしや、また如何わしい行為を?
妙にスッキリした顔してるし。
朝注意したばかりだし、僕もミアに妙な気持ちを抱いたばかりなので、もう追求しないでおくか。
日焼け止めを塗り終わって、パレオとショーパンでガードを固めたミアと、水着姿のままのベティもこちらにやって来た。
まぁ、ベティは平坦な体だし、彼女の水着姿を誰も邪な気持ちで見る事は無いだろう。
「アンタ、なんか失礼な事考えてない?」
「いや、控え目なプロポーションだなぁってくらいしか考えてないよ?」
あ、ヤバい。金串に食材をぶっ刺す作業の片手間で話しかけられたから、ついついベティに思った事を口にしてしまった。
「ひ、人が気にしてる事を…
もう二度とランディにバフをかけてあげない」
「ちょっ、違うんだって!
慎ましやかな体つきっていう意味でさ、褒め言葉なんだよ」
「ランディ、それは全然褒めてないよ。
ベティ、ランディに超級の氷魔術ぶち込むからバフお願い」
「了解」
「ちょ、ま、真面目に褒めてるから!
ホラ、ベティって品格があるし…な、なんて言うか…品があるよね。
他にも…ほら、上品だし…他にも…気品に満ちた感じとか…うん、胸もほら、こじんまりとして品性が感じられるし…」
ドグワシャァァア!
ベティにグーパンされました…
そして、今はみんなの分の肉とシーフードを焼いてます。
「ランディばっかり可愛そう。
ハイ、あ〜ん」
肉を焼く僕の隣に来てくれたミアが、金串に刺してある肉を食べさせてくれる…
ミアはマジで天使や…女神様や…それに比べてあの女と来たら…
「あとはミアが焼くから、ランディはテーブルに座ってたくさんお肉食べてね?」
圧倒的に可愛いミアが、そう言って僕の頬にキスをしてくれた。
や、やべえ…もう2度と顔を洗いたくない!
僕は焼き上がった肉とシーフードを皿に盛って、テーブルに着いた。
「うわぁ…ダラシない顔してるし。
アンタ、ミアちゃんと付き合ってから、気持ち悪さが増したわね」
「こ、コラ!ベティ!
い、いや。ランディがそんな顔をする事無かったからさ、ベティも驚いてるんだよ」
「ふええ〜い。
何とでも言ってくれ〜。僕はミアと居るだけで幸せなんだな〜」
「ね?レイン。
ランディは気持ち悪くなったでしょ?」
僕はベティ達の言葉は気にせず、一生懸命肉を焼くミアの可憐な姿に見惚れながら肉を頬張った。
幸せ気分に浸っていると、肉を焼くミアの動きに変化が有る事に気付く。
フライパンを金網に乗せたぞ?
何か白い物を炒め始めた。アレは前にミアが作ってくれた愛妻弁当に入っていたライスかな?
ボウルで何かをかき混ぜてるし、何を作ってるんだろう?
「じゃーん!ミア特製『ラブラブおむらいす』で〜す!」
ミアが皿に乗せて持って来てくれたのは、一見ふっくらしたオムレツのようだ。
しかも、ケチャップで大きくハートが書いてある!
「うわぁ、凄く美味しそうだなぁ!
ミア、ありがとう!」
僕はミアにお礼を言って、オムレツにスプーンを入れる。
中にライスを包んであるのか。
中のライスと一緒に入れると…
「ウマッ!何これ?凄え美味いぜ!?
ふわふわのオムレツに、このガーリックが効いたライスがめっちゃ合う!
ヤバっ!何この美味さ!」
僕は夢中でミアの『ラブラブおむらいす』にガッついた。
「ふふふ。ランディに喜んで貰えて良かった♫」
何その笑顔?マジで天使だろ!
や、ヤバい…ご飯は美味しいし、ミアは可愛いし…泣けてきた…
「え、ちょっと、泣く程美味しいの?
わたしにもちょっとちょうだい?」
「ヤダ!絶対にヤダ!死んでも他のヤツにはやらん!
コレはミアが僕の為に作ってくれた、至極の逸品なんだ!
あああ!凄え美味い!今まで食った物の中で一番美味い!」
「ああっ!ムカつくわコイツ!
ちょっとミアちゃん、私にも作ってくれない?」
「ダメだ!ミアの料理は、お前なんかには勿体ない!」
僕はベティに頭を殴られたが、気にすること無くこの旨味と愛情の結晶を頬張った。
「ゴメンね。ランディの分しか材料を準備して無かったの。
また今度でも良い?」
「そっかぁ、残念。
っていうか、コイツもう完食してるし」
「良いなぁ。
僕はベティの手料理食べた事無いから羨ましいよ」
そうか、レインは彼女の手料理をまだ食べた事が無いんだな…
この幸せと感動を味わえてないのは可哀想だ。
「おい、ベティ。
お前も女なんだから、レインに美味しい手料理を作ってあげなさいよ」
「は?何それ。
完全に女性蔑視発言よ!」
「へ〜、そんなにムキになるって事は、お前料理ド下手だな?」
「うっ、りょ、料理くらい作れるわ!
何よ偉そうに。アンタこそ口ばっかで何も作れないんじゃないの?」
「無知とは恐ろしいものだな。
僕は図書室で勇者が食したとされる食べ物を調べたり、魔術と料理の融合を導き出した事も有るんだ。
丁度いい。ミアに食べさせたい逸品がある。
僕と料理対決じゃ!」
「ふ、ふん。じょ、上等だわ」
僕とベティの仁義なき対決が幕を開ける。




