17話 ミアの目的
マックと揉めてから2日が経った。
あの日以来、マックは学院に来ていない。
マックの身に何か有ったのだろうかと心配になって、情報通のセレナに聞いてみた所、マックは僕の禁忌の呪術によって呪い殺されたという噂と、マックの家の都合で自主退学をしたという噂が広まっているらしい。
僕は断じて呪い殺してなどいないんだけど…
そんな事よりも、マックは本当に退学してしまったんだろうか?
もし本当に退学してしまったとしたら、何だか罪悪感みたいな物を感じてしまう。
彼は嫌な奴だという思いはあるし、かなり憎んでいたけど、入学して間もない頃に彼に暴力を振るった僕にも非はある訳で…
心の中がモヤモヤして来た僕は、放課後すぐに憩いの図書室に行ったんだけど…
「ど、どうしてミアが僕らのパーティーに入る事になってるの?」
今日も当然のようにミアが図書室にまで付いてきて、さも当然のように『魔術的兄弟(仮)』に入ると言いだしたのだ。
「だって、ランディはミアの事を一生守ってくれるって言ったでしょう?
だから、ずっと一緒に行動するのが当然じゃない?」
「いや、一生守るとは言ってないよ…
勝手に僕の言葉を捏造しないで欲しい」
「でも、『俺のミアに手を出したら許さない』っ言ってくれたでしょ?
それって…あの…ミアはランディの…彼女、いや!お嫁さんって事じゃない!?
つまり、ミアを一生守るっていうのと同義よ!」
何か話が飛躍し過ぎてるぅぅう!!
「ミ、ミア、ひとまず落ち着こうか。
俺のミアとは言ってない。うん、確か言ってないはず。
あれはミアに危害を加えるなよって事だし、マックに対して言った事だよ。
マックは自主退学したっていう噂だし、もうミアに危険は無いだろ?」
「ひ、酷いわぁぁ!!ああぁああん!!!
ううぅぅぅ…それって、結婚詐欺じゃない!
ミアの純情を弄んだんだぁぁあああ!!!」
うわぁ…ミアが子供みたいに泣き出した。
図書室で大声を上げるから、みんな僕らの方を見てるじゃないか…
なんか舌打ちしてる男子もいるし。
「ご、ゴメン!そんなつもりじゃなくてさ…!
と、取り敢えず場所を変えて話をしよう!ね?」
僕は慌てて本を棚に戻して、ギャン泣きするミアを図書室の外へと連れ出した。
「あれ?エリスがミアちゃんを泣かせてる!」
「ホントだ!エリス君サイテー!!!」
「テメエ、エリスゴラア!!!俺のミアちゃんを泣かせやがって!!!」
「ブッ殺すぞ!呪術野郎!!」
廊下に連れ出しただけではダメだ。
寧ろ、周りの奴らがうるさい。
つーか、僕の事をエリスって呼んだ奴、後でブン殴る。
でも、今はミアの事だ。
何とか人目につかない屋上へとミアを連れて行った。
「ミア、取り敢えず結婚だの何だのは置いておこう。
そもそも、ミアは何か理由や目的が有って強くなりたいんじゃないの?
僕らのパーティーが、ミアの目的に合わないかも知れないじゃないか」
「でも、強くなるには、ランディと一緒に頑張るのが一番だし…
ミアは俺のモノって言ってくれたし…」
「いや、だから、それは…
ああ!チキショウ!
いいかい?僕らはお金を稼ぐ為に冒険者になるんだ。
もちろん、困ってる人の助けになりたいって言うのもあるけど、そんな大きな目標が有る訳じゃないんだよ」
この状態でミアの誤解を解くのは難しい。
僕は、『魔術的兄弟(仮)』の大まかな目的を伝えた。
僕個人の目的は他にも有るんだけど、今はまだ言わないでおこう。
「ミアの目的は人助けに含まれるから、問題無いと思う。
お金も有るに越した事は無いし」
「人助けなら、あそこまで命を懸けてグレートファングに向かって行かないだろ?」
「う、あ、アレは…そ、その…ランディに認めて貰いたくて…」
「え?僕がどうかした?」
「あ、ううん、な、何でもない。
ええっと、討伐したいのは魔族なの。
魔族の被害に遭う人は多いし、魔族の事は許せなくて…」
魔族…1,000年前に伝説の勇者を苦しめた魔王が、魔界から送り込んで来たと言われている。
その強さは人族や亜人族の比では無い。
弱い個体でも、Aランクパーティーが討伐に当たらなくてはならないと聞く。
「ま、魔族なんて相手にしたら、命がいくつあっても足りないよ!
僕らのパーティーは、そんな無謀な事をするつもりは無いよ」
「今すぐにって言う程無謀じゃないわ!
でも、ランディと一緒に訓練して行けば、かなり実力が上がると思う!
その時に、ランディ達が魔族討伐はしないって言うなら、ミアをパーティーから追い出してくれて良いから!」
ミアの雰囲気は先程と違って、とても真剣な物だ。
余程魔族に恨みがあるんだろう。
ミアと仲良くなったのは、ほんの数週間前だ。
それでも、毎日朝から晩まで一緒にいる。
クラスでボッチだった僕が、いつの間にか学院での毎日が楽しいと感じてしまってる。
間違いなく、いつも明るいミアのおかげだろう。
「ああ、もう!
こんなに仲良くなったのに、今さら突き放せる訳ないじゃないか!
分かったよ。僕はミアが入るのは反対しない。
でも、レインとベティにも事情を話して、同意を得られなかったら諦めて欲しい。
魔族と戦う事はとても危険なんだ」
「ありがとう!
ランディ大好き!」
ミアが満面の笑顔で抱きついて来た。
あ、いや…あ、柔らかな物が当たってるから…や、やめてほしい…いや、少しくらいは良いかも知れない。




