16話 マックの受難 ①
マック視点
俺は今、侯爵家の屋敷にいる。
父上の呼び出しを受けたのだ。
父上の執務室のドアをノックすると、「入れ」という無機質な声が聞こえた。
俺が入室すると、父上は息子に向ける物とは思えない程冷酷な目で俺を睨み付けて来る。
「昨日、陛下からお前の事でお叱りを受けた。
心当たりは有るか?」
普段は温和な父上が、ここまで冷たい圧力を俺に向ける事は殆ど無い。
思わず足が竦みそうになる。
「いえ。有りません」
俺が答えると、嫌な沈黙が暫く流れた。
父上の怒りが、真綿で締め付けるかのように俺の心にプレッシャーを与えて来る。
思わず、胃の中の物をぶち撒けてしまいそうだ。
「お前は、学院でマクスウェル侯爵家の力を振り翳し、傍若無人な振る舞いをしていると聞いた。
陛下のおっしゃていた事は誠か?」
「な、何が悪いのですか!?
相手は平民のクズ共!!我々大貴族に頭を垂れるが道理では有りませんか!!!」
「この愚か者!!!」
父上の重たい平手打ちが飛んだ。
更にもう一発。
左右の頬に往復でだ…
な、何という事だ…この俺が…
「ぶったね!二度もぶった!!
母上にもぶたれた事無いのに!!!」
「愚息を打ち据えて何が悪いか!
良いか、マクレランよ。貴族という存在は民の為にこそあるものだ!
民こそ国の宝であり、決して虐げる対象では無い!」
「そ、それは違います!父上!
我々は真に優れた血を持って生を受けた!
愚劣な血が流れる平民どもなど、我々に隷従するべきなんだ!」
「まだ分からぬか!!!」
今度は父上の拳が飛んで来た。
息子をグーで殴るなんて、父親のするべき事じゃないだろうが!
「貴様はもう学院に行く必要は無い!
暫く自室で謹慎だ!
退学手続きはこちらで行なっておく。
さっさと部屋に入り、猛省しろ!
おい、マクレランを部屋に連れて行け!絶対に部屋から出すな」
俺は、父上の側近どもに両脇を抱えられて部屋に押し込まれた。
クソっ!何て父親だ!
本当に息子を部屋に押し込めるとは!
陛下も陛下だ!民が国の宝なんて唯の建前であるべきだ!
馬鹿な平民どもに寄り添う振りをするだけで、馬鹿どもは乗せられる。
俺が冒険者を目指したのは、箔を付ける為だ。
この国が税率が低くても豊かなのは、国内に多数存在するダンジョンの恩恵が大きい。
古代文明時代の失われた技術が、ダンジョンで得られるマジックアイテムに多く使われている。
俺が未開のダンジョンを踏破する事で、確実にマクスウェル家の名声は高まる。
俺の発言力も大きくなるだろう。
俺の力で、貴族至上主義の時代を取り戻そうと思っていたのに…
「クソ!何てザマだ!
これも全て、あのクソ忌々しいエリスのせいだ!
絶対にあのクソ雑魚を殺してやる!」
俺は無駄に広い部屋の中で、エリスに復讐を誓った。




