15話 僕とレインのお小遣い稼ぎ ②
「いやぁぁあ!た、助けて!お願い!」
女性が泣き叫んで助けを求めた。
恐怖で足元が震えている…余程酷いことをされたんだろうな…
許せない!
「助けを呼んでももう遅い!
ホブゴブリンの首なら斬り落としましたから、もう大丈夫ですよ?
良かったら、この外套を着て下さい」
魔力循環による身体能力強化で、一瞬でホブゴブリンの背後を取って首を斬り落とした僕は、女性の方を見ないようにして、マジックバッグから取り出した学院生用の外套を女性の方に差し出した。
女性はしばらく呆然とした様子だったけど、自分が裸である事を思い出して慌てて外套を羽織った。
「あ、ありがとうございます!
ほ、本当に…うぅぅ…あ、ありがとう…」
女性は涙を流しながら僕にお礼を言って来た。
「いえ、大した事じゃ有りませんから。
あの廃屋にまだゴブリンは居ましたか?」
「い、いけない!
あの中にまだ女の子が2人、手足を縛られているんです!」
女性は思い出したようにそう言って、慌てて廃屋の方に行こうとする。
「ちょっと待って下さい。
中の女の子達にも外套が必要じゃないですか?」
まだ囚われている2人の女の子が裸だと可哀想なので、僕はマジックバッグにしまっていた予備の外套と、レインが着ている外套を引き剥がして女性に渡した。
外套を受け取った女性はペコリと頭を下げて、小走りで廃屋の中へと入って行く。
暫く待っていると、先程の女性が外套を羽織った女性を2人連れて来た。
2人とも、涙を流してお礼を言ってくれたけど、女の人に感謝される事に慣れて居ないので、僕はただただ照れ臭いだけだった。
女性3人がある程度落ち着いてから、僕はマジックバッグから回復ポーションとお弁当として入れておいたサンドイッチを渡した。
女性たちが食事をしている間に、僕はゴブリンの討伐部位である右耳を削ぎ落としと魔石の回収を行って、レインは火属性魔術で死体を焼き払って行く。
地上の魔物の死体はちゃんと処分しておかないと、別の魔物を引き寄せてしまうので、後処理をしっかりとやっておくのも冒険者の大事な仕事なんだ。
ややあって。
囚われていた女性は3人とも、今回ギルドにクエストを依頼したニンゼン村の人という事で、僕らは3人をニンゼン村に送り届ける事にした。
どうやら女性達は昨日村からゴブリン共に囚われたばかりで、服を剥ぎ取られた以外にはまだ何もされてなかったらしい。
変な事をされる前で本当に良かったよ。
「レインさんって、お付き合いしている人とかいるんですか?」
「あ、それわたしも聞きたいです」
すっかり元気を取り戻した女性たちは、帰りの道中でレインにプライベートな質問をし始めた。
レインは金髪碧眼の男前だから、女性たちも一目惚れしたのだろう。
レインは返事に困っている。
勿論、この事はベティに報告するつもりは無い。大事な親友が不利になるような事は絶対に言わない主義なんだ。
間違いなく、レインも僕と同じ気持ちだろう。
「あ、あの…白銀の王子様には、…その、こ、恋人とかは居ないんですか?」
先程ホブゴブリンに人質に取られていた女性が、頬を染めながら僕に問いかけて来た。
白銀の髪はこの場には僕しか居ない。全く王子様なんて感じでは無いのだけど、命を救った事にされているので、お世辞を言ってくれているのだろう。
「いや、僕には恋人なんて居ませんけど」
「え!ホントですか!?
じゃ、じゃあ、私にもチャンス有りって事ですよね!?」
何のチャンスなんだろう?
女性は目を輝かせて何かを期待しているようだ。
訳が分からないままに、僕は取り敢えず頷いておいた。
「あ!何頷いてるのさ。ランディが浮気してるってミアちゃんに言っちゃうよ?」
どうやらレインは僕を売るらしい…先程まで感じていた信頼関係わい!?
大体何が浮気なワケ!?
僕はこの女性に何もしていないし、第一にミアと恋仲じゃ無いのに…くそう、僕もベティにレインが他の女の裸をガン見していた事をチクろうかな?
レインとの信頼関係にヒビが入り始めた時に、ニンゼン村が見えて来た。
村の門の所にいた見張りの青年がこちらに気付いたようで、一度村の中へ入ると、村人達が門の外に出て来て僕らを迎えてくれた。
「パパ〜!ママ〜!」
ホブゴブリンに人質にされていた女性が、40過ぎの夫婦の元へと駆け寄って行く。
「ああ!リオシーナ!リオシーナァァア!!!」
父親と思しき男性が、人質だった女性を抱きしめて号泣し始めた。
母親と思しき女性も涙を流しながら、抱きついている。
「うぅぅ、リオシーナ、良かった…良かった…
何処も怪我は無いんだな?」
「うん、パパ。
あちらの白銀の王子様が、私の事を恐ろしいゴブリンから助けてくれたの」
女性はそう言って、僕を指差した。
もう、王子様とかは言わないで欲しいんだが?
「おお!アナタが娘を救ってくれたんですね?
この度は何とお礼を申し上げて良いのか…本当に、本当に、娘を助けて下さりありがとうございます!!」
男性は僕に駆け寄って来ると、未だに目に涙を溜めたまま僕にお礼を言って頭を下げた。
「あ、いや。そんな…とにかく頭を上げて下さい!
冒険者として当然の事をしただけですから。
それよりも村長さんはどちらにいますかね?討伐クエスト達成の確認をして頂きたいのですが…」
「あ、これは失礼しました!
私がニンゼン村の村長、グレゴリオと申します」
何と、人質に取られた女性の父親が村長さんだった…
その後、村長さんの馬車で廃村まで戻り、すっかりゴブリンどもが居なくなったことを確認して貰った。
村長さんは、たった2人で殲滅した事に驚いたみたいだ。
今日は村長宅に泊まって行くように言われたけれど、明日も学院の授業が有るので、やんわりとお断りをしてクエスト依頼書に村長さんのサインを貰った。
後はギルドに戻って完了報告をするだけだな。
依頼の達成報酬が15万ルエンで、ゴブリンハイロードの角は素材として10万ルエンで買い取ってもらえるハズ。
魔石の売却も合わせたら、1人15万ルエン位は貰えそう。
生き別れになった兄さんの情報を集める為にも、お小遣いは出来るだけ沢山あった方が良いからね。
それにしても、やっぱりレインと冒険者活動をするのは楽しいな。
相手がゴブリンでちょっと物足りなかったけど、村の人たちの役に立てたから今日のクエストは満点だね。
心が満たされてテンション爆上がりの僕は、レインを背負って猛ダッシュで王都へと戻るのだった。




