13話 相変わらずのマック
決闘騒動から1週間が経った。
相変わらず、今日もミアは教科書を忘れたと言って僕の隣に座っている。
そして、相変わらずピッタリ引っ付いて来る。
当然、相変わらず僕はキョドッている…
「おい、クソ雑魚野郎!
この前の事を、恩に着せようなんて思ってんじゃねえぞ」
怒った様子のマックが僕の席の前に来た。
以前と変わらず僕を罵倒しに来たのだろう。
「そんな事思ってないさ」
「テメエはヒーローのつもりかも知れねえけどなあ、こっちはとんだ赤っ恥だぜ!
絶対にテメエに吠え面かかせてやる!」
「ちょっと、ふざけんじゃないわよ!
あんな卑怯な真似したのに、アンタが除籍されないようにしたランディの優しさが分からないワケ!?
それに、赤っ恥かいた!?
ミアの剣術にビビって、模擬戦に魔導具を使うチキンは馬鹿にされて当然だわ!
ランディのせいにしてんじゃねえよ!
このブツブツマックチキン!」
うわぁ。何故かミアが烈火の如く怒り出したぁ…
僕の事で怒ってくれる人が、レイン以外に出来たのは嬉しいな。
あと、ブツブツマックチキンってなんか美味しそう。
「う、うるせえ!
お前なんか、顔と胸だけが取り柄の淫売だろうが!
男にケツを振るしか脳がない、クソビッチが俺様を侮辱してんじゃねえぞ!」
「オイ、お前が憎いのは僕だろう?
僕の事なら幾らでも罵倒すれば良い。
でも、ミアの事を侮辱するのは絶対に許さない。
今後少しでもミアの不利益になる事をしたら、今度こそ両手と両足を吹き飛ばす」
「ランディ…ああん、ミアの為に極悪貴族と闘ってくれるのね…
『冒険者ウーマン』の連載小説『か弱いお前は、俺様に守られていればいい。だが、夜はしっかりとご奉仕しろよ』のヒロインになった気分…」
何?その変なタイトルの小説…ミアの思考が偏っているのは、間違いなくその小説の影響だな。
「くっ、お、覚えておけ!
どんな手を使ってでも、お前を潰してやる!
お前の前でその巨乳ビッチを犯して、絶望を味合わせてやるからな!」
「おい、ミアを侮辱するとどうなるか忠告したよな?」
僕は魔力操術で、マックの両方の前腕二等筋部分に魔力溜まりを作った。
マックの両腕が沸騰したように、ボコボコと波打ち出す。
「ぎゃああああっ!!や、やめろっ!!!
テ、デメエ、ええああああ!!!」
「彼女には一切手出しをしたり酷い事を言わないしないと誓うか?」
僕はミアの事を、大事な友人だと思っているようだ。
ここ数日間でかなり仲良くなったもんな。
「あぎゃあああ!わ、分かった!!!
も、もうその女には何もしない!!!」
「もしミアに変な真似をしたら、君の両手両足と、さらに眼球も破裂させる。
目が見える状態で、徐々に眼球が歪んで破裂する様は地獄だよ?
余りの恐怖と痛みで廃人になる人もいるくらいだ」
「あぎゃぁぁあ!わ、分がった!!
うぎぃぃ、ち、誓ってミアには何もしないぃぃあああ!!!」
仕方ないので、彼の両腕の魔力溜まりを解いた。
かなりの激痛だったようで、マックは変な汗を掻きながら自分の席へと戻って行く。
「そ、その…マックの事ごめんなさい。
わたしも言って聞かせたんだけど…どうしても強く言えなくて」
少し離れた所に居たレジーナが、僕の所に何故か謝りに来た。あれ以来、彼女は妙に大人しいと思っていたけど、いくらか僕への態度を和らげてくれているのかも知れない。
「何もレジーナが謝る事じゃ無いよ。
ミアに何もしないって約束したし。もう怒ってないから」
「エリスって優しいのね。
わたし誤解してたわ」
「テメエ!今度エリスって呼んだらブチ殺すぞ!」
「ひ、ひいぃぃ!ご、ごめんなさい」
あ、ダメだ。名前の事になると、ついついイラ付いてしまう。
レジーナは怯えた様子で、マックの隣に行ってしまった。
何故か、ミアは頬を赤らめて、僕の方を見ている。
ミアに見つめられると、ドキドキして落ち着かない気分になる。
また僕にいつもの状態異常の魔術をかけてるんだろうか?
こんなに頻繁に魔術をかけられるなんて、流石に剣聖は多才だなぁ。
午前中の授業が終わって、昼休みになった。
僕とミアは購買部でパンを買って、いつもの屋上へと向かう。
最近は、僕、レイン、ミア、ロシュに加えて、セレナとモネも一緒にお昼ご飯を食べるようになっている。
「いやぁ、朝のランディ君超カッコ良かったわぁ」
「うんうん。アレは今晩ランディに犯されたい案件だよね」
セレナとモネの2人は、相変わらず軽口を叩いて来る。
モネが変な事を言った時はガン無視だ。
「急にランディの友達が増えたねぇ。
クラスで孤立してないみたいで、僕は嬉しいよ」
「ボッチの頃から僕と親しくしてくれたレインが一番の親友だけどね。
そう言えば、レインはクラスの友達をここに呼ばないのかい?
レインは僕と違って、クラスでも人気があるだろ?」
「い、いやぁ…ちょっとお恥ずかしい話なんだけど、クラスの女子にここがバレるとさ、その…囲まれて気が休まらないんだ」
「レイン君キリッとしててカッコいいもんねー。
ウチのクラスにもレイン君ファンいるよ」
「わたしは断然、甘い顔立ちのランディの方がいいわ。
ランディになら孕まされてもいい」
「モネ!ミアのランディなんだから、絶対に取らないでよね!」
何故か僕とレインの会話に、セレナ達が入って来た。
確かに、レインは精悍で男らしい顔をしている。
女子達が群がるのも頷ける。
「かぁぁ、俺もお前らみたいなイケメンに生まれたかったぜ!
学生生活も残り1年切ったってのに、俺なんてまだ童貞だぜ?」
ロシュが、ため息混じりにボヤいた。
っていうか、僕をイケメンの中に入れないで欲しい。
「え、僕も童貞だよ。ランディは?」
「童貞に決まってるじゃないか。
だいたい、僕たちはまだ成人前だ。性行為なんてまだまだ早い」
「ど、童貞のランディ…ハァハァ…」
「あ、あの…ミアも、、、しょ、処女だよ?」
僕とレインのやり取りを聞いた、モネとミアの様子がおかしい。
特にモネはハァハァ言っていて不気味だ。
「お前らも童貞仲間だったか!
ってか、ランディ。
まだまだ早いって、俺たちもう結婚出来る歳だぜ?」
「節操無く性行為に耽るなんて、堕落した人間のする事だって爺ちゃんが言ってた。
それに、卒業したらレインとパーティーを組んで、自活出来るように稼いだり、他にもやらなきゃいけない事があるんだ。
僕には性交渉に耽って堕落している暇は無いんだよ」
「ぼ、僕は学院を卒業したら、彼女と…その…しようって約束してるんだけど…
僕は堕落した人間になるのか…」
そうだった。
レインは王立魔術学院に通っている幼馴染の彼女がいる。
レインの彼女のベティも、たまに一緒に訓練をしたり、小遣い稼ぎのダンジョンアタックも一緒にやっている。
彼女も卒業後に僕たちのパーティーに入る予定なのだ。
ベティは結構毒舌なのがなぁ…
「あ、いや…爺ちゃんが言ったのは、無節操に耽る人の事だから。
レインとベティはちゃんとした恋仲じゃないか」
「な、なら良かったよ。
ランディに軽蔑されたらどうしようと思った」
「何だよ!レインは半分童貞を捨てたも同じだろ!
このリア充め!
チキショウ!仲間だと思ったのに…
って事は、ランディも彼女がいるってオチか!」
何故か彼女がいるというだけで激昂するロシュ。
未だにリア充なんて言葉をまだ使う人が居るんだな…
「いや、僕は恋愛とかした事無い。
学院で頻繁に嫌がらせを受けているから、そんな事を考える心の余裕なんて無かったよ」
「やった!ランディ彼女居ないんだ!
ミアも彼氏居ないんだぁ」
「わたしは寧ろ、彼女が出来たランディを寝取りたい!」
ミアとモネが何故か食い付いて来る。
特にモネの頭の中は、相当マズい状態だ。
精神に作用する状態異常魔術を常に食らっているのだろう。
「ほう…ランディに彼女が居ないのは意外だな。
確かに、男子連中はお前の事を嫌っているようだが、女子にはモテてるイメージだったゼ」
「ああ、それね。
入学した最初の頃は、クラスの女子にもランディ君ファンが多かったんだけど、すぐにマックと揉めたじゃない?
それで、マックが大貴族の家柄を盾に、あちこちに圧力をかけたの。
男子はランディ君を妬むヤツが多かったし、ランディ君は禁忌の術を使う呪術師だってデマも流れて…」
そ、そうなの?
僕の知らない間に禁術使い認定されるとかやめてほしい。
セレナは色々と情報通なんだな。
「アイツ、陰でそんな事してたの?
ホント、マックって最低なヤツ!」
「ミアは高飛車過ぎてボッチだったから情報が入らなかったんだね。
わたしもこうして話するまで、ミアの事苦手だったもん」
モネよ、ストレートに言うなよ。
ミアが落ち込む…いや、全く気にしていないようだ。
最近、僕にやたらと甘える姿が目立ったけど、雑魚認定した人の事は眼中に無いという姿勢は変わらないらしい。
「因みに、ミアも男子人気が高かったけど、マックがミアの事を俺の女だとか言い出して、男子が近付けないようにしたみたい」
確かにミアはとても顔立ちが整っているから、男子連中がチヤホヤしないのは変だなとは思ってた。
まさか、マックが裏でそんな事をしていたとは…
「マックの悪名は、ウチのクラスにも轟いてたからねえ。
でも、そこまで性格の歪んだヤツだとは知らなかったよ」
「ミアは顔は可愛いし、オッパイ大きいからマックみたいなクズに目を付けられ易いんだと思う」
セレナはミアの胸を恨みの篭った目で睨みながら、レインと会話をしている。
豊かな胸に相当な恨みがあるのだろう。
確かにセレナの胸は平坦だからな。
欲に流されない僕でも、ミアにくっつかれるとドキッとしてしまう事がたまに有る。
欲に塗れたマックが目を付けるのも頷けるな。
「まぁ、マックはミアに手出ししないって約束したし、大丈夫だろう」
「うん。
ランディがミアの事を一生守るって言ってくれたから、絶対に大丈夫!」
いや、僕は一生守るなんて言ってない。
勝手に脳内変換しないで欲しい。
やんわり否定しようと思ったけど、昼休み終了のベルが鳴ったので、僕らは急いで教室へと戻った。
しかし、こういう賑やかな昼休みも良いもんだな…
いじめや嫌がらせは続いているけれども、こんな僕にも少しずつ友達が増えて来て凄く幸せな気分だ。




