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12話 勇者世界

 


「ランディって図書室が好きなのね。

 難しそうな本ばかり読んでるけど、何が楽しいの?」



 マック達と決闘騒ぎが有った翌日、僕の癒しのひと時にミアが着いて来た。

 やはりミアは図書室でもピッタリと僕に密着して来るので、中々読書に集中できない…


 そんなスキンシップ激し目のミアは、僕の読んでいる本を見ながら問いかけて来た。

 僕が勇者世界に関する文献を読んでいるのが不思議らしい。



「勇者世界の文献を読んでいると、色々な発見が合って楽しいんだ」


「ふうん、例えばどんな事が分かるの?」


「う〜ん、ミアは伝説の勇者が『迷い人』って言う事は知ってるかい?」



『迷い人』というのは、別次元の世界からこの世界に迷い込んで来た人の事を指す。

 約1,000年前に次元の狭間からこの世界にやって来た勇者のハジメ・ハマダは、異世界の日本という国からこの世界に迷い込んだらしい。



「あ、それは結構有名な話だよね」


「そうだよね。

 じゃあ、僕らが普通に使っている魔導端末は、勇者ダーハマの世界で使われていた『スマホ』という魔導具を元にして作られたって知ってる?」


「え、そうなの!?全然知らなかった。

 ねぇ、他にはどんな物が勇者の世界の物なの?」



 ミアは興味を持ったようで、僕にめっちゃ顔を近づけて聞いてくる。

 ちょっと、凄く恥ずかしいからもう少し離れて欲しい。

 僕はドキドキする感じを鎮めるために深呼吸をした。



「他には魔導車かな。

 あれは勇者世界の『自動車』を元に作られてるみたい。

 勇者の居た世界では、大体の人は『自動車』を所有していたんだって」


「え!魔導車を大体の人が持ってるの?

 勇者世界って貴族ばかりなのね!」



 な、何だか腕の所にミアの胸の柔らかな感触が…

 ヤバい!顔が熱くなってきた!

 ミアには悪いけど、今度から図書室には1人で来よう。

 こんなに頻繁に状態異常魔術をかけられては、僕の身が保たない。



「さ、さぁ…それは良く分からないなぁ。

 あ、そうだ、不思議な事が有るんだ。

『迷い人』って100年から150年に1人現れるのは知ってるよね?」


「うん。

 今も居るじゃない。

 トシキ・ムラマツって10年くらい前にこっちの世界に来たんじゃなかった?」


「そうだね。

 他にも、120前にこっちに来た歌手のクロエ・イーストウッドとかも有名だよね。

 実は、ダーハマもトシキもクロエも、勇者世界ではほぼ同じ時代を生きていたらしいんだ」



 文献によると、これまで8人の『迷い人』が確認されているけど、8人共に勇者世界暦で2015年〜2020年という期間に次元の狭間に吸い込まれたらしい。



「え、ウソでしょ!?次元の狭間に長い間閉じ込められてって事!?

『迷い人』って長生きなの?」


「いや、短命な筈だよ。

 勇者世界って1年が12ヶ月らしくて、平均寿命が80歳くらいなんだって。

 1年が16ヶ月のこっちの世界にすると、平均60歳で死ぬみたい」


「勇者世界って魔物が居ないし、殆どの人が戦闘職じゃないんだよね?」


「うん。

 勇者やトシキが居た日本という国は戦闘する人は居なかったらしいよ。

 例えばイーミス王国で非戦闘職の人だったら、90歳くらいまで生きるのは普通じゃない?

 非戦闘職で60歳しか生きられないんだから、相当短命だと思う」



 同じ時期を生きていた短命な勇者世界の人が、100年以上年月を開けてやって来る。

 次元の狭間を長い年月彷徨ってから、こちらの世界に来るという説が有ったり、次元の狭間が時間の概念を歪めているという説もあるけど、どれも証明されてない。



「あ、頭がこんがらがって来ちゃう…

 次元の狭間が原因なのかなぁ?」


「恐らくそうだろうね。

 話が逸れちゃったけど、勇者世界の文化や文明が僕らの世界にも反映されてるって面白いよね」



 僕はその後もミアと、勇者世界について話し合った。

 図書室に友達と来るのも悪くないのかも知れない。





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