Dランククエスト
クエストと言われると何をイメージするだろうか。
僕の場合は、やはりゲームだ。
以前中学生の時にやっていたドラゴンをクエストする国民的なRPGからクエストという言葉を知った。
その後は、モンスターをハントするゲームなんかでも、クエストという言葉をよく聞いたりもする。
だからこそ、クエストと言われれば僕の中ではやはりゲームというイメージがどうしてもついて回ってしまうのだ。
「あきら君。旧豊島区でDランクのクエストが発行されたみたい。募集は30名、ここから近いし、応募しておく?」
「お願いします。ちなみに規模は?」
「Dランクだから、主にゴブリン系の魔物が発生してるみたい。数は現時点で100体くらいみたい」
成瀬がスマホを見ながら今発生したクエストについて報告してくれた。
ハンターになるまで知らなかったのだが、ゲームの様にギルドへ行き、依頼を受けるというやり方ではない。
ハンターライセンスを持っている国民は非常に多く、一々ギルドへ行って依頼を受けていたら、受付で待っているだけで一日が終わってしまう。そのため、ハンター専用のアプリがあり、それをスマホに入れているのだ。
ハンターは最初登録するとFランクという所から始まる。
ランクはF~Aまであり、そのランクが示すのはハンターとしての力量の目安となる。
このクエストとは、レベルⅡ以降で魔物が発生した場所を殲滅するために、ギルドが発行した仕事の事だ。
基本、住民が住んでいる都市部にレベルⅡが発生することはあまりない。
現在の日本は異変当初に起きたレベルⅢの発生によって、廃墟となっている都市が多く存在している。
例えばここ東京23区も、現在人がちゃんと住んでいるのは、その内17区しかない。
では他の6区はどうなっているのか。
それは、建物が倒壊し、レベルⅠの魔物が徘徊し、ライフラインもない状態。
いまだに国はそこの立て直しが出来ていない状態が続いている。
当然、東京だけではない。他の県でも同じような状況なのだ。
そのため、ハンターはこの旧都市部へ遠征し発生する魔物を討伐するという依頼が回っている。
つまり、ハンターに遠征して仕事してもらうために、クエストという言い方をしているのだ。
「でも、ゴブリン100体程度にハンター30人って妙だね」
「そうね。これから増えるって想定しても、やっぱり数が多い気がするわ」
「ランク制限とかないの?」
そう言いながら僕は成瀬のスマホを覗き込んだ。
しかし、スマホの画面に表示されているクエストにはハンターのランクを制限するような文章は書かれていない。
通常はゴブリンなんかの弱い魔物の場合は、ランク制限があり、駆けだしのハンターに優先でクエストが回るように調整する。
今回の場合はEランクの制限が掛かっても何もおかしくないはずなのだ。
ちなみに、Fランクはクエストを受ける資格がない。これはハンターに成りたてのため参加できない。
ランクを上げるためにはレベルⅠのゾンビを倒しその魔石を一定数納品しなければEランクに上がる事は出来ないのだ。
「僕たちDランクに通知が来たって事はDランクまで参加できるって事だけど……」
「そうね、ちょっと調べてみるわ、でも早めにランク上げるなら参加した方がいいと思うわよ」
「――確かにね」
「でも、あきら君……」
成瀬が神妙な顔で僕を見ている。
「あぁ。分かっているよ、異能は可能な限り使わない」
「見極めを間違えないようにお願いしますね。――あ、抽選に当たったみたい。集合時間は今から3時間後よ」
空気を変えるように少しワザとらしく明るく振る舞う成瀬に申し訳なく思う。
さて、3時間後。今は11時だから14時に集合か。
中野から旧豊島区までの移動時間を考えればとりあえず2時間は余裕があるかな。
「時間まだありそうだからブロードウェイ寄っていい?」
「あの店よね? そうね、私も見ていこうかな」
中野ブロードウェイ。
以前はオタク御用達のお店が並んでいた。
しかし、魔物や魔獣が跋扈するようになってから、それも様変わりしている。
今は様々な企業が魔石を使い、ハンター向けの商品を開発している。
値段はピンキリであるが、安い物でも数十万は最低でもしてしまう。
そのため、ハンターになるためにはそれなりに初期資金も必要になったりする。
上位ハンターは比較的お金持ちが多く、それこそトップハンターであれば月数百万は簡単に稼げるのだ。
だが、それはすべてのハンターに該当するわけではない。
駆け出しの、例えばFランクやEランクなんかのハンターは月十万程度稼げればいい方だ。
では、そんな駆け出しの新人ハンターがどうやって装備を整えるのか。
方法は二つ。
一つは中古品を買う事。
稼げるようになってくるハンターは常に装備を更新していく。
では、古くなった装備はどうするのか?
それはほとんど売られる。もちろん、度重なる戦闘で破損しているが、
それを修理しまた販売している。
ちなみに、装備の売値は基本捨て値に近い。
そして、それを修理し、元の値段の4分の1程度で売られる。
これは、装備が買えず困っている新人ハンターの死亡率を下げるために、
あるトップハンターが始めた慈善事業が影響している。
そのため、稀に中古ではあるが格安で上等な装備が手に入る可能性もあるのだ。
もっとも、購入制限が付いており、Eランクまでのハンターしか購入は出来ないが。
そして二つ目。
これが中野ブロードウェイにこれから向かう目的でもある。
それは、個人が作った魔道具の売買を行っている特殊な場所なのだ。
企業ではなく、個人で研究した製作者が自身の魔道具を売買している。
そのため、値段も企業製の魔道具に比べてよりピンキリとなっている。
安い物であれば1~2万円。中には企業からスカウトまでされているような人だと数百万したりする。
そしてそういった魔道具は売り切りの作品が多かったりする。
そういった掘り出し物を探すために、僕たちは中野ブロードウェイへ足を運んだのだ。
もっとも、中野ブロードウェイだけではなく、東京には他に池袋、秋葉原でも同様の場所はあるため、
近くに寄る機会があれば行ってみたいとも思う。
「今日はマジョリーナさんいるかな?」
「いるんじゃないかしら? ノリノリのポーズで自撮りの画像をSNSにアップしてるみたいだし」
マジョリーナさん。
中野ブロードウェイで店を構えている研究者で、よく装備を買わせてもらっている人だ。
かなり独特というか、個性的な人ではあるけれど、腕は確かだ。
僕と成瀬はブロードウェイの中に入りエスカレーターで上階へ上がる。
そのまま通路を進み、突き当りの店。
レースで飾られたショーケースの中に様々な魔道具が陳列されている。
見た目のデザインもよく、値段もリーズナブルな設定だが、人が入っている様子はない。
「いるかな」
扉を開ける。
中はピンク色のLEDライトが敷き詰められ目にいたい仕様だ。
本当に相変わらずというかなんというか。
「あぁら、いらしゃぁーい!」
低く野太い声が店内に響く。
店の奥から現れたのは身長2mを超えた巨体。
ピンク色の髪、少し細めだが綺麗な蒼い瞳。緑色の口紅に、濃いめのアイシャドウ。
タイトなシャツを着ているためか、そのはち切れんばかりの筋肉の形がよく分かる。
「こんにちは、ちょっと弾薬なんか買いたくてね」
「マジョリーナさん。お邪魔しますね」
「やだ、あきら君に詩織ちゃん! 久しぶりね!」
この店の店主、マジョリーナこと、梓音煉護。
魔石研究所の梓音エリザの弟だ。
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