変異するものⅡ
3月から中々執筆する時間が作れておりません。
そのため、今回のお話も短い物となっております。申し訳ありません。
他人の魔力でこのフラグメント達がどういう反応を示すか確認しなければわからない。
だが、一つ間違いない事がある。
それは、フラグメント、いや、フラグメントを含めたこの辺り一帯の攻撃はすべて私の魔力に反応し、凝固している。
先ほどまでは粘度の高い液体でしかなかったが、今は間違いなくセメントのようにこの液体が固まっている。
これが何を意味する?
少なくとも、今戦っている魔獣は私との戦いに合わせて、その力が変異しているのは間違いない。
「――時間を掛けるのは不味い。嫌な予感がする」
こちらに迫ってくる、鮫を近付く前に魔力波で破壊する。
通常の鮫よりも大きく作られた水の鮫は魔力波を受けるとその形を破壊されるが、破裂した歪な形で固形化し、そのまま空中に静止した。
変異のスピードが速い。
飛行術式と、異能を使い、空中を蹴る技を使い、出来るだけその場に留まらないように移動を開始する。
いくら他人に比べ膨大な魔力を持っている私であっても、こうも立て続けに魔力波を使っていては何時かガス欠になる。
出来るだけ威力を抑え、最低限の力で破壊出来るように制御をしなければ不味いかもしれない。
本体だと思っていたインクブスはデコイだった。
ならば、本体はどこだ?
「成瀬ッ! インクブスの反応は見えるか!」
『え!? そちらの渦の中にいないんですか?』
「いない、いたと思っていた奴はただのデコイだ。本体が姿を見せていないんだ」
『ですが、私の異能では、玖珂隊長と同じ辺りにいると反応が出ています!』
「同じ場所?」
成瀬の異能は上空から俯瞰で地図のように敵、味方の位置を知る事が出来る異能だったはず。ならば、考えられる場所としては、もう2箇所くらいだ。
成瀬の異能でも感知出来ない場所。
それは――
上空か海中か。
二次元的な視点では見えない、Z軸方向。
つまりは上か下。
そのどちらかにいるはず。
そう思い、迫り来るフラグメントと、鮫、水の触手による攻撃をかわしながら、空を見た。
曇り空のため、太陽は見えないが、視界の中にあの巨大な魔獣の姿はない。
そもそも、上なら術式の感応で察知できるはずか。
だが、感応で索敵出来る距離以上に上空へいるのであればありえるか。
次に下はどうか?
この辺りの海底は相当深い。
上空と同様にそれこそ海底まで潜られたら私でも探知出来ない。
瞬時に考え、結論を出す。
魔力を全力で纏い、異能を展開した。
「“魔力の奔流”、そして“死の結界”」
肉体強化の術式を使いつつ、死の結界でこの辺り一帯すべてを停止させる。
案の定、私の異能に触れたフラグメントや鮫たちはその身体を凝固させ、停止し、見た目からして、氷のように凝固している。
通常の生き物であれば、このまま放っておけば死ぬだろうが、今この辺りにいるのは魔力で形成された物体だ。
このまま、異能を維持したほうがいいな。
私は貯めた魔力を使って、ロケットのように上空へ飛行する。
雲を抜け、太陽の光りが降り注ぐ成層圏まで上がった。
周りを見ても、あの巨大な魔獣の姿がない。
ならば下か。
さらに魔力を高め、そのまま海へ向かって急降下する。
異能の力によって海面にぶつかっても衝撃はない。
海中へ潜り、感応をさらに展開した。
「これは……っ!」
海中に漂う魔力の密度が異常だ。
まるで何かの生物の腹の中にいるような感覚になる。
1mも先が見えないような視界の悪さに戸惑いながらもとりあえず下を目指す。
感応から感じる魔力はこの辺りの海中からも感じる。
だが、インクブスほどの巨体の魔力であれば、この中でも感知は出来るはず。
今まで以上に濃密な魔力を使い、周囲を覆う。
知覚する範囲を広げれば広げるほど精度が落ちるため、念のため1km程度の範囲を魔力で多いながら探索する。
同時に使用している異能は私を中心に円の形で移動をする。
恐らく地上にいたフラグメント達はもうじき動き始める頃か。
そのようなことを考えながらもどんどん海底へ向けて移動する。
水圧は異能を使っていれば心配はない。
普通の海洋生物も僅かにまだこの海域にいるようだが、私の異能の範囲に呑まれれば死んでしまうか。
申し訳ない気持ちもあるが、今は安全を優先させてもらうしかない。
この水中で同じように敵の攻撃に襲われた場合、相当面倒なことになるからな。
視界が悪い海中を潜るのは恐怖を感じる。
自分の異能を使っている限り、身の安全は問題ないが、どこまで下へ潜っていけばいいのか見えないというのは割と怖いものだ。
そう見えない事への恐怖を感じた頃に、感応から巨大な魔力の塊のような物を察知した。
今いる私の場所から3時方向。
だが、違和感を感じる。
その魔力の方へ進み、感応によってその全貌が見えてくるとその違和感がより明確な形となって襲ってきた。
「なんだ、この形状は……?」
仮面の中で思わず言葉が漏れる。
視界から見えないため、確証は持てないが、感応から感じたこの魔力の形。
それは、まるで……
巨大な繭のような形だった。
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