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世界情勢

「では、鴻上隊長。報告をしたまえ」

「はっ。半年間の錬度としては、こちらをご覧頂いた方が早いかと思います」


 アキトが退出したことで鴻上も先ほどのようなふざけた態度はすぐに止めた。

そもそも鴻上があのような態度をしていたのは、

非公式の場という事ももちろんあるが、それ以上にアキトを緊張させないようにするためであった。

綿谷や神代もそれを理解していたため、鴻上を咎めるような事はしていない。

 そして鴻上から渡されたデータをこの大会議室に設置されているPCに入れプロジェクターに画面を映した。

そこには、今日午前中にアキトと行っていた模擬戦の様子が収められている。


「驚いたな。経過報告は受けていたが、ここまでとは」


 真っ先に言葉を出したのは綿谷であった。

職業柄、対魔のレベルは把握しているし、各国の特殊部隊の力も知っている。

それを知っているが故にたった半年でここまでの錬度になったアキトを見て驚愕した。


「鴻上隊長の”魔力の奔流(フォルスバースト)”をモノにしている。

戦闘技能はまだ拙いが、この肉体のポテンシャルだけで十分戦えるな。

異能を抜きにしても既にAランクのハンターとそう変わらないのではないか」

「そうでしょうね。鴻上隊長と梓音博士の報告から玖珂隊長は”小さな魔界(ダンジョン)”を破壊出来る可能性が高いとの事です。

この情報と半年の成果を持って、玖珂隊長を()()()()()()として公表しましょう。世間の発表は()()()()()()()()()()()()()()()()()()で公表で良いと思いますが、如何ですか綿谷さん」

「それでよかろう。これでアメリカに対し、我が国もリードする事が出来る。

以前より梓音博士をアメリカへ寄越すように煩かったからな、ようやく黙らせることが出来るだろう」


 梓音の解析の異能は世界でもまだ梓音ただ一人に発現している異能だ。

そのため、魔石を使った技術は日本が圧倒的にリードしている状態であった。

対魔のような各国の魔物を専門で倒す特殊部隊では、現在アメリカがリードしている。

それは、ある一人の圧倒的な異能を持っている少女が出現したためだ。

――――セレスティア・エルナト。

若干二十歳の彼女の存在によって、アメリカの発言力は大きく上がった。

その切欠となったのは小さなやり取りが発端だ。


 あの日、神から異能を授けられた変革の日。

授けられた異能によって目覚める時間が変わるという一説。

学術的根拠はまだないただの通説だったが、アメリカから一年の昏睡状態から目覚めた異能者がいる、というニュースが世界に向けて発表された。

 当然世界は騒然とした。

数ヶ月と眠っていた者はいたが、一年という長時間を眠っていた者はいなかったからだ。

すぐに世界からの注目が集まった。本当にすごい異能を持っているのか。

本当に一年もの間眠っていたのか。

その期待に答えるようにアメリカはその少女セレスティアがA+のハンターを一瞬で倒したと報道され、彼女はさらに注目を集めた。

 そして、それにまったを掛けた国があったのだ。中国の最高指導者である。

これがアメリカの作り話であるといったのだ。

そしてもし本当にそれが事実なら自国が誇る【赤龍軍】と模擬戦をしてみろと発言しそれをアメリカ受け入れた。

 セレスティアを含めたアメリカの特殊部隊【イディオム】と共に中国へ渡った。

そして、模擬戦開始から僅か十数分の時間であった。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

赤龍軍が決して弱いわけではない。セレスティアが強すぎたのだ。


 それ以後、アメリカの国連での発言力は大きく強まった。


 そこからだ、アメリカより梓音をアメリカへ移住させるように話が上がるようになった。

世界最強の軍であるアメリカでこそ、梓音の力は活かせると豪語し、

また、彼女の祖母がアメリカ人だった事もあって、アメリカから至急()()()()()と要請まで来るようになったのだ。

アメリカに住んだ事も、行った事もない梓音は当然拒否しており、

現在も神代が雇ったA+ハンター達に護衛されている状態だ。

 そして、その声が段々と強くなっている状況で、

中国の”小さな魔界(ダンジョン)”問題が浮上した。

アメリカに恥をかかされた中国は各国の要請を拒否していたが、

それもアメリカの強気な発言に折れ、いよいよ各国共同でのレベルⅣの対応が始まる。

もっとも各国共同とは言いつつも実質的にはアメリカが主導権を握っているに等しい状況であった。

アメリカは世論まで巻き込んで梓音を得ようと躍起になっている。

そしてそれはもう無視できない状況にまで来ていた。

理由はアメリカ以外の国も梓音を日本で独占するなという話が国連で上がったからだ。

 曰く、彼女のような有益な異能は世界の財産として共有すべきである。

一つの国に拘束されるのはもっとも愚かな事であり、各国で共有すべき人材である。そして、人類の発展に貢献する彼女を魔界の手からの守護者こそアメリカが相応しいという事だ。


 日本とて、梓音の異能が今の変質した世界を読み解くのに何よりも優秀であるという事は理解している。綿谷自身も国益だけを優先しては各国から何を言われるかわからないため、総理とも話し、梓音の研究成果はすぐに各国へ共有していた。

作成した魔道具もギリギリ赤字にならない程度で輸出までして、日本は変質した世界で他国に対し以前のような影響力を取り戻しつつあった。

 だから綿谷と神代は非常に頭を悩ませていた。

この日本という小国が大国と対等に渡り合うためにも梓音は渡せない。

万が一、他国に梓音が渡ったらその結果、日本は国連での発言力をまた失い、

今後の政治に大きな影響を及ぼす。

 もはや時間の問題であったそんな状況を打破出来そうな人物が日本にはいた。

二十年間眠っていた玖珂アキトである。

いちはやくこれを発見した神代は国と連携し、禁止区域として杉並のアパート一帯は指定され、綿谷の息の掛かった陸自が交代で監視をするように務めた。


 育てた果実は実った。

育成の期間が半年しかなかったのは不安であったが、鴻上の指導の賜物によりアキトは日本のジョーカーとなりえるまでに見事成長したのだ。

もうすぐ行われる他国共同でのレベルⅣ殲滅作戦になんとか間に合った。


「さて、これからが楽しみです」


 今までに見たことがない満面の笑みを浮かべた神代であった。


 






 

読んで下さってありがとうございます。

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