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第25話 見習い魔導師は魂の存在証明について“転生者”に語る

取り敢えず、これで前期編終了ですので

そろそろジャンルが「恋愛(異世界)」か「ハイファンタジー」か本決めしようと思っています

ここ最近は「ハイファンタジー」寄りなんですが、後期編の前半は割と青春というか学園描写が多いので「恋愛(異世界)」寄りになるかもしれません


まあ、一週間以内に決めようと思っています

「えっと……どういうこと?」


 アナベラは困惑した表情で首を傾げた。

 フェリシアは何と説明しようかと少し悩んでから、話し始める。


「まず、前置きとしてだが……魂の存在に関しては、今でもいろんな議論や意見がある。はっきり言って、結論は出ていない。例えば……十字教会は『人の魂は神によって吹き込まれる』と教義に掲げている。この国の国教は知っての通り、十字教だぜ。……だから、魂が存在しないってのは、あくまで私が支持しているラトナラス学派の見解だ。私は……正直、魂や肉体に関しての知識はまだまだ浅いから、はっきりしたことは言えないと、最初に断らせてくれ」


「う、うん……分かった。えっと……それで? そのラトなんとか学派? っていうのは、どういう考えなの?」


「ラトナラス学派だぜ」


 フェリシアはそう修正してから話し始める。


「人間の意識ってのは、実は頭、その中の脳味噌に宿っているってのが、現代では解剖学的な見地から明らかになっている。それは知っているか?」

「それは前世の知識で知っているわ」

「なら、話は早いぜ。要するに、心だとか精神だとか感情ってのは、全部その脳味噌の中で発生しているただの電気信号や生物学的・化学的な反応でしかないってことさ。だから魂なんてのは、存在しない」

「それは……まあ、言われてみれば、そうかもしれないけど」


 あっさりと納得を示したアナベラの反応に、フェリシアはやや驚いた様子で目を見開く。


「そんなにあっさり、納得するのか?」


 マーリンから「魂は存在しない」と言われた時、フェリシアは大いに混乱し、中々納得できなかった。

 敬虔ではないといっても、一応十字教徒であるフェリシアにとって、魂が存在しないというのは受け入れがたい話だったのだ。


「え? だって……まあ、前世ではある意味、常識だったし。魂って、宗教とかオカルト、もしくは創作物の中に出てくるようなもので、非科学的なものだったから……」

「へぇ……その記憶が前世かどうかは知らないけど、その世界じゃあ、科学常識が一般に流布しているんだな」


 フェリシアは目を見開く。

 「異世界」に興味を持っていなかったフェリシアだが、少しだけ興味を抱く。


「でも……変なの」

「変?」

「なんか、フェリシアの話を聞いていると……この世界って、結構科学が発展しているわよね? なのに、どうしてパルプ紙がなかったり、技術が発展してなかったりするのかなって?」

「それは別におかしくもなんともないぜ」

 

 「異世界」の事情や常識は知らず、この世界で生まれ育ったフェリシアにとってそれは疑問にすらならないことだった。


「科学と技術の進歩は無関係だぜ。意識が脳味噌に宿るって事実と、木草紙はなーんの関係もない。そもそも紙の需要が高まったのはここ百年の話だからな。もしかしたらそれ以前に木草紙を発明したやつがいたのかもしれないけど……羊皮紙で事足りたから広がらなかった。それだけの話だぜ」


「そう……かなぁ?」


「私からすると、それだけ科学が発展しているのに魔法や魔術の存在が知られてない、そもそも存在しないってことの方が不思議だな。おっと……話が逸れたぜ。で、魂が存在しないってことは、理解できたか?」


 話を軌道修正してから、フェリシアは尋ねる。

 アナベラはやや納得がいかなそうな顔で頷いた。


「うーん、確かに常識的に考えたら魂がないってのは、分かるんだけど……でもさ、魔法があるなら魂があってもおかしくないって、私は思っちゃう。それに……魔法の中には魂とかに関係するようなものも、あるんじゃないの? 授業や教科書でも魂の話が出てくるし……そういうのは全部嘘っぱちで、あり得ないってこと?」


「まさか、そんなことはないぜ。ああいうのは、存在しないものをあると仮定して話を進めているだけさ。その方が便利だからな」


 フェリシアがそういうと、アナベラの表情にさらに疑問の色が浮かぶ。


「存在しないのにあるなんて……それって、つまり間違いじゃないの?」

「間違いじゃないぜ。確かに魂は実態として存在しないけど、概念上は存在するんだから」

「ううん……ごめん、全然わからない」


 アナベラは頭を抱える。

 一方でフェリシアはどう話せばわかりやすく伝えられるか悩みながら、ゆっくりと話していく。


「うーん、そうだな。……最近、数学の授業で“虚数”って習っただろ?」

「えっと……二乗するとマイナスになるやつでしょ?」

「まあ、雑に説明するとそんな感じだぜ。でもさ、人生でそんな物体、見たことあるか?」

「それは……」


 アナベラは少し考えてから、首を左右に振った。

 そんなものは見たことも聞いたこともない。

 そもそもアナベラ自身、普段から「こんなの習って何になるのよ」と思っているくらいなのだから。


「そう、つまり虚数ってのは実在しないんだぜ。というか、そもそも数学における“数”ってのはこの世に存在しない概念上の存在なんだ。ただ、“数”があると仮定して論を進めた方が、いろいろ便利だから、そうしているってだけだ。魂も同様なんだぜ。存在しないけれど、もしくは観測したことはないけれど、あると仮定した方が便利だから、あるということで理論を組み立てているってわけだ」


 まあ、師匠の受け売りなんだけどな……

 と、フェリシアは内心で付け足した。


「うーん……じゃあさ、魂があるって仮定すれば、転生もあるんじゃないの? 実際、私は前世の記憶を持っているよ?」


「いいや、それは違うぜ。だって転生って現象があるのだとすれば、確かに実体として存在する魂が使い回されているってことになるじゃないか。それに……記憶が宿るのは、脳味噌だ。仮に魂が実在したとしても、記憶が脳味噌に保存されている以上、魂が同じであっても前の記憶を覚えているってことはあり得ないだろ? まあ……魂にも記憶が保存されているってなら、あり得るけどな」


 魂に関しては現代でも議論は尽きない。

 そしてフェリシアは魂の専門家ではない。

 故にはっきりしたことは言えないので、絶対にありえないと断定することはできない。


 だが……


「少なくとも、お前が前世の記憶を持っていることは魂の存在証明にはならない。そして魂の存在が確認されたことは、観測されたことはない。概念上の物だからな。だから……私としては、お前が前世の記憶を持っている理由は、転生したからではないと思うぜ」


「……じゃあ、フェリシアはどう考えているの?」


 アナベラに言われ……フェリシアは腕を組んだ。

 散々迷ってから……そして言い難そうに切り出す。


「その、私もさ、全然知識がないから、断言はできないぜ? 魂も観測方法が悪いだけで、将来観測されて、その存在が証明されるかもしれない。……あくまで、私の意見は、仮説だと思って聞いてくれよ?」


「うんうん、分かった。それでフェリシアの仮説は?」


「……誰かが、赤子の頭蓋骨を切開して外科的な方法で脳味噌を入れ替えたか、もしくは精神や記憶に関する魔法のスペシャリストが、お前の脳味噌に偽の記憶を焼き付けたか。個人的には後者が一番可能性が高いと思っているぜ」


「なるほどぉー、確かにそうかもね!」


 あっさりと納得したアナベラの態度に、フェリシアは呆気に取られた。

 何を驚いているんだと言わんばかりのアナベラに対し、フェリシアは恐る恐るという様子で尋ねる。


「え、えっと……ショックじゃないのか?」

「え? うーん、そういう考えもあるかなって思っただけだけど。私よりもフェリシアの方が頭が良いし、フェリシアの考えの方が正しいかなって。……それがどうしたの?」

「だ、だって……私の仮説だと、お前はお前自身が思っていた“お前”じゃないってことになるんだぜ? その、アイデンティティーというか、自分自身を否定されて、ショックじゃないのか?」


 自分の物だと思っていた記憶が嘘偽りや知らない誰かの記憶だったと知ったら……

 フェリシアはそれをそう容易く受け入れる自信がなかった。

 少なくともしばらくは思い悩むだろう。


「うーん……でも、それを知ったからと言って私が変わるわけでもないし。私は私だから、別にどうでも良いかなぁって」

「そ、そうか……お前、凄いな……」

「そうかな? ただ、悩んだり考えたりするのが面倒くさいだけだよ。それに、まあ、ほら、何とかなるかなって」

「……」


 少なくともフェリシアには絶対にできない考え方だ。

 どんなに自分にそう言い聞かせたとしても、思い悩んでしまうだろうし、精神的に病むだろう。


(私が……おかしいのか? もしかして私のメンタルって、一般人に比べて凄く脆いのか?……あの母さんの娘だもんな。うん、脆いわ……ダメだ、しょげるぜ……)


 勝手に一人でフェリシアが落ち込んでいると、アナベラが心配そうに尋ねる。


「顔が青いけど、どうしたの?」

「な、何でもないんだぜ!」


 フェリシアは空元気を出して答えた。

 一番ショックを受けるはずのアナベラがどうでも良さそうなのに、フェリシアが一人で勝手に傷つくわけにはいかない。


「でもさ、その……偽物か、もしくは他人の全然関係ない人の記憶だったとしてさ、実際……私はある程度、未来のことを知ってたわけじゃない? 外れたところもあったけど」

「私がお前を虐めるって、話か?」

「え、えっと……」


 少し言い淀むアナベラに対し、フェリシアは首を左右に振った。


「気にしないぜ。……実際、昔の私はかなり酷かったからな。正直、説得力がある話だと思ったぜ」


 フェリシアは若干落ち込みながら言った。

 帰ったら必ず、ケイティに謝ろうと決意する。


「そ、そう……まあ、とにかく、フェリシア以外に関してはそこそこ当たってたけどさ。これって、要するに未来予知でしょ? そんなことってできるの?」

「私は未来予知じゃなくて、予測だと思うけど……どちらにせよ、可能不可能の話だけなら可能だぜ。私はどっちも無理だけどな」


 フェリシアは肩を竦めて言った。

 一方でアナベラは首を傾げる。


「できるの? というか、予知と予測ってどう違うの?」

「予知ならば、つまり未来の観測。次元魔法の領域だぜ。予測ならば……過去のデーターから未来を推論しただけってことになる」

「そんなこと、できるの?」

「とんでもなく難しいけれどな。少なくとも私や、多分師匠にもできないぜ。でも……百年どころか、何千年も研究に研究を重ねてきたようなとんでもない大魔導師なら、できるだろうな」


 フェリシアは十三歳、ただの学生でしかなく、知識の総量ならば学園の教師にも劣る。

 魔導師マーリンは優れた魔導師であるが、せいぜい百年程度しか生きていない。

 だがこの世にはフェリシアやマーリンの認識を超えるような魔導師も存在する。


「あとは、人間以外だ。竜種を代表する幻獣や魔獣、夢魔、妖精、精霊……私たち人間を遥かに超えた存在ならば、できるんじゃないか? 動機は分からないけどな。はっきり言って、万単位で生きているような連中の思考回路なんて、十三歳の私には想像もできないぜ」


 フェリシアはそう言ってから、ため息をつく。

 そしてアナベラに頭を下げた。


「すまない。……全然、頼りにならなくて」

「えっと……気にしないでよ。正直、フェリシアに言われるまで、心配したことすらなかったし」

「……少しは気にした方がいいぜ」


 フェリシアは自分とアナベラの温度差に、複雑な気持ちを抱いた。

 もっとも、それはアナベラも同様だが。


「とにかく、話は戻すが病院に……いや、病院じゃ頼りにならない。一度師匠に見て貰った方が絶対に良いぜ」

「え? どうして?」

「さっきも、言っただろ? 何かがお前に魔力を供給しているかもしれないんだぞ? 記憶を操作しているかもしれない!」

「……それって、不味いの?」

「不味いに決まってんだろ! よくわからないものがお前に憑いてるんだぞ?」

「うーん、言われてみればちょっと気味が悪いかも」

「……言うほどちょっとか?」


 フェリシアはアナベラのメンタルの強さに、呆れ半分、尊敬半分の視線を向けた。

 それから頭を掻き、ため息をつく。


「はぁ……とにかく、だ。絶対に見てもらうぞ。いつにする? 私としては、今すぐにでも師匠のところへ向かいたいくらいなんだけどな」

「うーん、次の長期休暇で良い? 実際さ、今まで害はなかったんだし、そう急ぐこともないんじゃない?」

「……まあ、お前がそう言うなら、それでいいぜ」


 大丈夫かなぁーと、フェリシアは思いながら頷くのだった。






 そのあと、帰宅後のこと。


「ケイティ! ……私、お前に酷いことをした。すまなかった!」

「え、ええ? ま、待ってください……頭を上げてください!」


 帰ってくるなり、唐突に頭を下げてきたフェリシアにケイティは混乱した。

 一方、フェリシアは本当に申し訳なさそうな表情を浮かべて言う。


「その……御飯事で犬役をやらせたり、その、馬になれとか命令したり……本当に、すまないことをした」

「あー、そういえばそんなこともありましたね。懐かしいです」

「な、懐かしいって……」


 ケイティにとっては、それは笑い話でしかないようだ。

 少しは責められると思っていたフェリシアは頭を掻きながら言った。


「と、とにかく……私は、心の底から反省しているぜ」

「うーん、じゃあ……私が何か、命令したら聞いてくれるんですか?」


 冗談半分でケイティは言った。

 するとケイティの予想とは裏腹に、フェリシアは何度も頭を縦に振った。


「もちろん! 何でもするぜ!」

「……何でも? 今、何でもするって言いましたよね!」

「う、うん……言ったぜ」


 唐突に食い気味になったケイティにフェリシアは困惑しながらも頷く。

 一方、ケイティはごくりと生唾を飲む。


「じゃあ……ちょっと、考えておきます。とっておきのを」

「……お手柔らかに頼むぜ」


 フェリシアはほんの少しだけ後悔した。


尚、フェリシアはアナベラの言う「異世界」についても、実は信じてないです。

なんかすごい設定厨の無駄に凄い魔法技術を持った奴が、愉快犯的にアナベラに悪戯しているくらいに考えています

現状では「フェリシア仮説」も正しいかどうかは分からないです

というわけで、結論は「保留」です


ちなみに「フェリシア仮説」が正しいとすると、アナベラは「自分のことを転生者だと思っている単なる一般魔法学園一年生の十三歳女子」になります。

……それはただの厨二病では?



取り敢えず、この話で一年生前期編はおしまい

次回、幕間を一つ挟んでから

一年生後期編に移ろうと思っています

まあ、もう後期に片足突っ込んでいるんですけど


学園祭とクリスマス的な何かとラグブライの試合がイベントとしてはありますので

乞うご期待



良い区切りですので

ここまでの話で面白い、フェリシアちゃん可愛い、ついでにアホベラもアホ可愛いと思った方は、ブクマ、pt等を入れて頂けると……

なんと!!


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