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第18話 没落した悪役令嬢と転生者主人公は自己紹介をする

今回、タイトル通り、自己紹介をします

今までの伏線回収&新たな伏線を張る回です

 肝試しのルールは簡単だ。

 地図に記された通りの道順を通り、ゴール地点にある鏡の前に置いてある藁人形を持ってくれば良い。


 ただし……藁人形を取る前に、もしくは取った後でも良いが、必ず自分の名前を名乗ること。

 以上だ。


「いやー、夜の学校って楽しいな!」


 フェリシアは気分よく歩いていた。

 別に幽霊やお化けを怖いとは思ったことはない。

 

 というのも、フェリシアはこう考えていた。


「見ることができるってことは、つまり観測できるってことだ。観測できるなら、調査・研究することができる。調査・研究ができるなら、それは制御下における。つまり怖くなんて全然ないんだぜ」


 というよりはむしろ捕まえてみたいという好奇心の方が強い。

 そんなこんなでフェリシアにとっては楽勝で、あっという間に鏡の前に到着した。


「さて、これが藁人形だな。しかし藁人形とは、アーチボルトも良いセンスしてるな」


 フェリシアは人形をポケットにしまう。

 後は帰るだけ……


「あー、そう言えば、名乗るんだっけ? えっと、私はフェリシア・フローレンス・アルスタシアだぜ」(よしこれで終わりだな)


 と、フェリシアは帰ろうとしたが……

 足が動かなかった。


 それどころか体が動かない。


(……え?)


 そして一人でに鏡の中の自分が……しゃべり始めた。


「私はフェリシア・フローレンス・アルスタシア。十二歳で、あと一か月後に十三歳になる。私は美人で、勇気があり、賢く、好奇心と探求心が旺盛で、社交的な性格をしてるぜ」


 いや、話しているのは鏡の中の自分ではなかった。

 フェリシア自身の口が勝手に動いているのだ。

 鏡はそれを映しているに過ぎない。


(ど、どうなってるんだ!?)


 混乱をするフェリシアを無視し、フェリシアの口は自己紹介を続ける。


「趣味は読書とスポーツだ。最近の悩みは身長と胸の大きさだ。一生このままなんじゃないかと、危惧して、最近は自分でマッサージしているぜ。これは絶対に秘密な? 最近、エッチなことに興味を持ち始めたんだが、怖くて何もできてないぜ……でも知識だけは豊富だ」


 フェリシアの顔が赤く染まる。


(な、何言ってるんだ、私は!! い、いや……本当のことだけれど!)


 どうやらこの鏡はフェリシアの意志を無視し、勝手に自己紹介をしてくれる、正確にはさせる(・・・)鏡のようだ。

 とりあえず幽霊の類ではなかったようなので、ホッとする。

 ……何だかんだで“本物”に出られれば怖いのだ。


「私は自分自身、選ばれた人間だと思っているぜ」


(い、いや……そんなナルシストなことは……)


「私は目立ちたがり屋でプライドがとても高い、自意識過剰な人間だ。そして凄くナルシストで、自己愛が強いぜ。世界で一番、自分が可愛くて、優れているのではないかと思っているぜ」


(は、恥ずかしい……や、やめてくれ……)


「私の世界は私を中心に回っている。他人の作った規則なんて、知らないぜ。都合が悪いなら、破ることに躊躇はないな」


(それは……まあ、否定はできないけど……)


「だから私は本当に嫌なことは絶対にやらない。我儘で傲慢な人間だ」


(っく、私のくせに好き勝手言いやがって……)


「努力家で、目的達成のためならどんな辛いことも受け入れられる自信があるぜ。でも手段は選ばない傾向があって、狡猾で、抜け目がない」


(だ、大事なのは結果だろ!?)


「自分を追い込むことは得意だぜ。肉体的な痛みや疲労には、結構耐性がある。というか、適度にそういうのがあった方が心地よいぜ。合宿のマラソンは辛かったけど……まあ、それなりに楽しかったぜ。口では嫌々言っているけど、実はそうでもないんだぜ」


(何だよ、それ……私、控え目に言ってヘンタ……変な人じゃないか!)


「でも心は脆いんだ。精神的な苦痛や疲労は、本当にダメだから、悪口とかは絶対に言わないで欲しいぜ。気にしてないふりしているけど、凄く気にしているからな?」


(いや……誰だって、悪口を言われたら、嫌だろ?)


「こう見えて寂しがり屋さんだぜ。常に人に好かれたいと思っているんだ。社交的なのはその裏返しなんだぜ。だからブリジットに避けられてた時期は本気で落ち込んでたし、悪口言われた時はマジで凹んだぜ……」


(そ、それは……だ、誰だって、同じだろ!? 違うのか!)


「もっとも、一人じゃ何もできないってことはないぜ? 研究している時とか、読書している時なら、一人で何時間も作業できるぜ。でも、やっぱり研究の成果って誰かに発表したいだろ? 要するに自己顕示欲が強いんだ」


(じ、自己顕示欲って……言い方が悪いぜ! 違う……違うんだよ、ほら……褒めて欲しいじゃん? やっぱりさ、それが普通だろ? 凄いなぁーって言って貰えれば、嬉しいだろ?)


「……というかさ、研究成果って、やっぱり世の中に広めて、活用してもらってこそ意味があると思うんだ。その点、一人で黙々と、誰の需要も考えずに研究をするような師匠の姿勢には少し疑問があるぜ。生活に役立てるためだけに学問をするのはおかしいけど、かと言って、役立てないのは勿体ないぜ。真理探究も世のため人のために役立てないと……人間は社会的な動物なんだからさ」


(……私、こんなことを思っていたのか。全然、気が付かなかった……あれ? これ、私の“哲学”を決めるには、かなり参考になるんじゃないか?)


「さっきも言ったけど、普段は気丈に振る舞っているけど、精神的には凄く打たれ弱くて、繊細なんだ。悪口を言われたりしたときは、表面上はそう見えなくても凄く傷ついているから、本当にやめてくれ。それとストレスを抱え込みやすい体質だ。ストレスを抱え込んだり、気に入らないことがあると、周囲の人や物に当たる癖があるぜ……」


(………………思い当たる節がないわけでは、ない、か)


 と、そこでようやく体が自由に動くようになった。

 フェリシアはため息をつく。


「はぁ……どっと疲れた。まあ、言われてみると確かに当てはまるところはちょっとあるな。んー、自分を顧みることができたのは良いことっちゃ、良いことか。……にしても、寂しがり屋で好かれたいと思ってるなんて、恥ずかしいな」


 フェリシアは頬を掻いた。






「はぁ……最悪。やっぱり、あれ、絶対わざとでしょ? やっぱり、転生者だわ……間違いない」


 鏡に関係するイベントの直前に鏡のホラー話をするような偶然があるはずがない。

 と、アナベラは憤慨しながら、そしてビクビク怯えながら、夜の学校を進んでいた。


 『自己紹介の鏡』


 それは数ある鏡に関係する魔導具の一種だ。

 この鏡の前で自分の名前を名乗ると、一人でに口が動き、自己紹介をしてしまう。

 その時、自分でも知らなかったような深層心理まで口にしてしまうという。


 尚、製作者の性格が悪いのか、それとも「自分を顧みて反省しろ」という意図が込められているのか、自分の欠点を特に強調して言わされるという特徴がある。


 ゲームではこれがどのような意図を持つのかというと……主人公の性格の確認のために必要だ。

 『乙女ゲーム』では主人公の選択肢によって、性格に関係する隠しステータスが変異する。

 これはシナリオや攻略に大きく影響する。


 そのため現状、主人公がどのような性格なのかを確認するためにこの鏡は存在するのだ。


(みんな、微妙な顔をして帰ってきた辺り、やっぱりボロクソ言わされるのよねぇ。はぁ、嫌だわ)


 そう思いながら……ようやく鏡の前に到着した。

 置かれている藁人形を拾う。


「うぅ……鏡、怖い……」

 

 鏡を見ていない時、中の自分がこちらを見て笑っているんじゃないか……

 というフェリシアの冗談話を思い出し、アナベラは身を震わせた。


「アナベラ・チェルソンよ」


 すると体が固まった。

 そして一人でに口が動き始める。


「私はアナベラ・チェルソン。最近、十三歳になったわ。前世の記憶を持っているの。あと神様からチート能力貰ったけど、全然役に立ってないわ。……まさか魔法を使うのにあんなに勉強が必要だったとは、欠片も思ってなかったわ。ファイヤーボール! って唱えるだけで使えると思っていたんだけどね。見込みが甘かったわ」


(いや……本当にそれよね。ゲームだと軽く流されているけど、実際には勉強をしなきゃいけないのよねぇ)


「趣味は読書……と言っても恋愛モノとか、そういう大衆小説ね。難しい本は読めないわ。あと、実はほんの少し小説を書いたりしているの。あ、これは絶対に秘密ね? ……いつかは出版したいと思っているんだけど、ちょっと恥ずかしいのよね」


(絶対に秘密……バレたら自殺ものよ!)


「思い切りが良い性格をしているから、良くも悪くも決断は早いわ。それは良い方向に繋がることもあれば、悪い方向に繋がることもあるわね。まあ、大抵は悪い方向に行っちゃうんだけどね」


(本当にそれよねぇ……)


「あと、思い込みが激しいわ。一度そうと決めつけたら、そこから抜け出せないのよね。これは自覚しているんだけど、思い込んでいる時はそれが絶対に正しいと思っちゃうから、もう直せないわ」


(後から考えれば、自分がおかしかったって分かるんだけどね。不思議だわ)


「頭はお世辞にも良くはない……けど、決して悪くはないわ。それなりにやれば、それなりに勉強もできるの。でも、努力は苦手なの。じっとしてられない性格というか、忍耐力が全然ないわ。面倒くさがり屋なの」


(それは……まあ、知っているわ)


「特に疲れることとか、痛いことは本当にダメ。ラグブライなんて、あんな頭のおかしなスポーツをやれるのは尊敬するわ。あ、勿論、見るのは好きよ? マネージャーは何だかんだで楽しんでいるわ」


(いやー、その点はアーチボルト先輩やフェリシア、マルカムは尊敬するわ。うん、本当に。頭おかしいとおもうけど)


「周りの意見には逆らえないタイプ。流されちゃうのよね。一人で行動する勇気はないわ。でも、一人で行動することそのものはそんなに嫌いじゃないわ。そんなに寂しいとか思わないし……まあ、でも周りに流されて、ついて行った方が楽だから、基本的にはそうするんだけどね。ほら、面倒くさがり屋だし? 自分で物事を決めるのって、面倒くさくない?」


(私、面倒くさがり屋過ぎでしょ……)


「能天気な性格をしているの。人生、なるようになると思っているわ。実際、なるようになってきたのよね。今まで取り立てて苦労とかしたことないし? 今の悪役令嬢問題も、まあ、なんとかなるかなーって、思っているわ」


(まあ、実際、今のところどうということもないし?)


「性格はそんなに良いとは思ってないわ。でも取り立てて悪くはないわ。というか、一度気にすると気にし続けちゃうタイプかしら? 私、フォアグラが好物だったんだけど、作り方が残酷だって聞いてから、急に食べれなくなっちゃってね。罪悪感は抱きやすいわ。考え無しだから大抵は後からなんだけどね?」


(うわ……私、質悪ぅ……最悪じゃない)


 と、そこで体が自由に動かせるようになった。 

 自己紹介は終わったようだ。


「でもねぇ……面倒くさがりな性格なんて、直せないわ。……だって、面倒くさいし」


 アナベラは肩を竦めた。


基本的にここで書かれた内容の通りに、フェリシアとアナベラは動いています。

多少の例外はあれど、大まかにはこの通りです。

基本的にフェリシアとアナベラの行動原理はそれぞれ「目立ちたがり屋」と「面倒くさがり屋」で説明ができます。


ちなみに、おそらくフェリシアは原作でも鏡に言われる内容は変わらなかったと思われます。

性根は「悪役令嬢」の時から変わってはいないです


まあ、転生者というわけではないので

乙女ゲームのフェリシアと、現在のフェリシアは、同一人物です



腹黒だけど寂しがり屋なフェリシアちゃんが可愛いという方はブクマptを入れて頂けると

「あ、ありがとうなのぜ?」(何を企んでいるんだ?)とフェリシアちゃんが怯えながらお礼を言ってくれます



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