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今日から学校と仕事、始まります。②莞

電子マネーGG

作者: 孤独

「LINEPAYで払う」

「IDで払うと言っただろうが!!」


この間、わずか2秒ほどの出来事。

不自然でしかないのだが、同じ人が言っていた。

レジの隣のカウンターで食事をしていた私は、その時飲んでいた味噌汁を噴いてしまった。


◇      ◇


電子マネーの発達によって、支払いが便利になった生活。

現金を持たずにカードで払う流行。政府も後押しし、消費を活性化させたい狙い。そんな中


「電子マネー多すぎ」


飲食店のちょっとした悩みなのかもしれない。

あれやこれやと新規参入もある中で、まだ対応がされていない電子マネーもあるものだ。今日入った新人さんも全て覚えられていない。使える電子マネーのシールのロゴはレジの前と後ろについて、店員もお客も分かりやすくしているが、最近はそれすら似たようなものが多い。

とはいえ、このキャッシュレスはスムーズにいけば簡単便利。ささっと、ピッで、あっという間にお会計を済ませられる。普及するべきなのは当然の流れ。災害時や紛失などした場合のリスクや対策などもいずれ考案されるだろう。まだ知らないだけかもしれない。

便利なものを便利に使う。これこそ、システムを生み出したものが使用者に求めたいものであろう。みんながそうしてくれればと願い、周りも提供を促すもの。


ズズッ


「昼間のビールは最高ですね」

「サラリーマンに喧嘩を売ってるな」


そんな営業をしてきた男二人、弓長昌と三矢正明はチェーン店の飲食店でお昼休憩。

蕎麦で済ます三矢と、ビールととんかつ定食というリッチ過ぎる昼食を選ぶ弓長。


「ジャンケンで負けた方が運転と言ったじゃないですか」

「くっ……ったく。良い性格をしてやがる」

「それは三矢さんもでしょ?ジャンケンにワザと負けるんですから」

「別にワザと負けてねぇーよ」


何気ないやり取りをしていた時だった。

そんなやり取りは起きたのだった。

お客は白髪から漂う老齢具合がハンパない人。一方で店員は研修生マークを付けた、まだ入り立ての新人くんのようだった。

弓長は背を向けていたが、三矢は正面でそのやり取りをボンヤリとは見ていた。


「LINEPAYで払う」

「え?」


この電子マネーなら大丈夫です。そーいうシールはレジに貼られているが、あいにくとまだそれはこちらのお店では対応されていなかった。これから導入されるのかという事なんだろう。

新人さんはシールを確認するも、その電子マネーのロゴシールを見つけられず。かといって、断言もできなかったので、


「少々お待ちください」


困った時は相談。先輩を呼び、確認してもらう。


「対応してるんですか?」

「ううん、それはまだ」


先輩も近くにいたため、お客の支払い方法は聞こえていた。2人は一緒に


「大変申し訳ございません、LINEPAYの導入はまだこちらではされておりません」


レジに貼られた支払い可能な電子マネーを手で指し示す。

マニュアル対応。模範的対応。これに対して、お客様は別の電子マネーか現金を払うか。そうだったの、みたいな雰囲気で口に出すだろう。


「IDで払うと言っただろうが!!」


!?


「テメェ等の耳は遠いのか!?バカなのか!?」


!?


え?


「??大変申し訳ございません?」

「????」


???


頭を素早く下げる先輩に対し、研修生はポカンとした顔。この差で社会にいる歴史の差が出ていると言える。だが、そんな大きな声を挙げれば他のお客様もビックリする。

というか、レジの近くで食べていたお客様達や席が空くのを待っているお客様は、お爺さんの方に視線をやっていた。ビックリもあるんだろうが、?マークも浮かんでいるわ。味噌汁を噴いている人もいる。


「ああ」


蕎麦を食べながら見ていた三矢には、爺さんの心の本音が聞こえる。


【若い奴が生きてんじゃねぇ!!いちゃもん付けて、ガタガタにしてやる!】


ワザとだな。


「こんな低レベルな飲食店なんか潰れてちまえ!バーーカ!!もう来ねぇよ!!」


【何度でも来て、嫌がらせして。従業員も辞めさせまくってやらぁ!!】


捨て台詞を吐きつつ、お金を払って爺さんは去っていく。

その割に爺さんが綺麗に定食を食ったところの後片付けをする、先輩。社会人過ぎる。三矢はそっと心の中を覗く。


【あの人、毎週来てこれだから困ったものねー。上に対応をお願いするべきね。もしくは警察】


さすがに、働き者のらしさを見せても、心の中ではズキンと来るような痛みを感じていた。無理もない。

こうなれば研修生もさすがに、あんな理不尽過ぎる怒られ方をすれば凹むかオロオロするよなって。そっちの心を見てみると。


【日本語って難しいです。どんな意味だったんでしょう】


「お前、日本人じゃなかったんかい!!」


どうやら爺さんの言っている事が、言語的には分かっていなかった模様。

しかし、とても流暢な日本語を話す中国人さんだった。


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