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8.温泉にはいろう!

「温泉って?」

 ニキが佑太にそう尋ねる。

「温泉って言うのは地中にたまった水が火山などの地熱で温められて地上に沸きだしたものだよ。

 土の中の成分が色々水に浸み出していて体にとても良いんだ!」

 佑太がこの世界に来てはや数ヶ月が過ぎた。

 今までは濡れた布で体を拭いていたのだがやはり佑太は日本人。

 湯船にゆっくり浸かりたいという思いが捨てきれなかった。

 そこで思いついたのが温泉だった。

 ここはニキの話だと火山の中腹にある洞窟らしい。

 ならば近くに温泉が沸いているのではと思いニキに尋ねたのが発端だった。

「それなら麓近くの森で動物達が怪我した時に入っているのがあるわよ」

 そう教えてくれたのはニキの一番上の姉、ラピスだった。

「そうなの!?ニキ、僕そこに行きたい!」

「わかった。佑太が望むなら」

 こうして佑太は念願のお風呂を目指したのだった。


「ここがそう」

 ドラゴンの姿になったニキの背中に乗って、やって来たのは麓の温泉。

 入っていた動物達はニキの気配を感じて既にいなくなっていた。

「これのなにがいいの?」

「飲むと鱗には良さそうですけど」

「まぁ折角だし佑太の真似をしてみましょう」

「・・・なんで君達までここにいるの?」

 ここにいるのは佑太とニキほかに次女のスピネル、三女のヒスイ、案内役として長女ラピスもいた。

 ラピスはともかく何故スピネルとヒスイがいるのか。

「面白そうだったから!」

「佑太君と裸のお付き合いがしたかったの♪」

「いや、それは普通同性同士でするものだから!」

 そう言いながらも自分はニキと二人で入る気満々だった佑太が突っ込む。

「佑太、それでここからどうするの?」

 ニキは気にせずマイペースにそう言って佑太を催促する。

 彼女は佑太さえいれば他はどうでも良かった。


「とりあえず服を脱いでくるよ」

「お姉さんが手伝いましょうか?」

「ニキ、ヒスイさんが乱入しないように押さえてて」

「わかった」

 こうして着替えの安全を確保した佑太は草むらで素早く服を脱ぎ、腰にタオルを巻くのだった。

「アンタ、なんて恰好してんのよ!」

「風呂に入るのに服を着てる方がおかしいでしょ!?」

 スピネルが恥ずかしそうに顔を手で隠したが、しかしその手は目の辺りだけちゃっかり開いていた。

 佑太は気にせず温泉の温度を確認すると、縁にしゃがみ、適当に持ってきた桶で湯を汲んでかけ湯をする。

「かけ湯は大事。いきなり湯に入ると体に悪いから。あと本当は体を洗ってからが良い。お湯を汚さない為にね」

 お湯は少し熱めだったが外だという事を考えればちょうど良いかも知れなかった。

 佑太は足先から静かに湯に浸かり、肩まで入ると思わず声を出してしまう。

「~~♪ああ、久々のお風呂は気持ち良い!」


 そんな佑太の様子を見ていたニキが魔法で一瞬にして全裸になった。

 普段明るい所でお目にかからないその見事な二つの丘陵に思わず佑太の眼が釘付けになる。

 ニキはそんな佑太を嬉しそうに見ると、同じようにかけ湯をしてから佑太の横に座る。

「・・・あっ♪」

 ニキの口から艶っぽい声が漏れる。

 ニキの白い丸みを帯びた固まりはお湯に浮かんで上半分を外気に晒していた。

「これ・・・気持ち良い・・・」

 ニキがいちいち色っぽい。

 佑太はタオルを巻いていて良かったと本気で思った。

 そして今が二人きり無い事を心底悔しく思った。


 そんな二人の様子を見ていた三姉妹も各々魔法で裸になると同じように温泉へと浸かりだした。

「あら?これは・・・」

「うん、気持ち良い」

「本当ですね。肩が楽になりますぅ」

 今、佑太の前には楽園が広がっていた。

 佑太の前にスピネル座りその両隣り、右にラピス、左にヒスイが座っていた。

 ヒスイは服の上からでもはっきり分かる程大きいので言わずもがなだったが、初めてラピスの裸を見た佑太は正直内心で驚いていた。

(ラピスも・・・普通よりはずっと大きかったんだなぁ)

 規格外のニキやヒスイ程ではないが十分に巨乳といえるラピス。

 大きな山々に囲まれた谷間の平野部のような人物が怖い目つきで佑太を睨んでいた。

「・・・何か言いたい事が?」

「ノー!ノー、サー!!」

 佑太は慌ててニキの方とは逆の向きに顔をそむけるのだった。


「しかし、こうして人の姿で入ってみると、温泉って良いものね。クセになりそうだわ」

 そう言ってスピネルが手でお湯を掬い上げる。どうやらかなり御満悦のようだ。

 僅かに赤みを帯びたその顔が何とも言えぬ色香を醸し出す。

「本当ですねぇ。ラピス姉さまならどこに温泉があるのかわかるのではありませんか?」

「まぁ土の中だしわかるわね」

「そしたら帰ってからお風呂を作るのも良いですわねぇ。そうすれば毎日でも入れますわ!」

「うん!そうしたら私、毎日佑太と一緒に入る!姉さん達には邪魔させない!」

「あらあら。思いついたのは私なのですから、少しくらい佑太さんを貸してくれても良いんじゃないかしら?」

「ダメ!」

 そう言って佑太の腕にしがみつくニキ。いつもと違って柔らかさがダイレクトに伝わる。彼女の鼓動まで聞こえてきそうだ。

「ま、まぁ。毎日お風呂に入れるようになるのは僕としても嬉しいかな。お願い出来る、ニキ?」

「任せて!佑太の為に大きなお風呂を作る!」

 ニキは佑太に頼りにされるのが嬉しくて張り切っていた。

「あらぁ?提案したのは私ですよ佑太さん?」

 ヒスイが拗ねた口調でニキとは反対の腕を取る。

 二の腕がすっぽりと包みこまれるのを感じ、佑太は顔を赤くする。

「あ、ありがとう・・・ヒスイさん・・・」

 佑太は今、両腕から感じる温泉以外の温もりと温まった二人の体から放たれる甘い匂いにのぼせそうになっていた。

「・・・何よ。佑太のバカ」

「私はどうしたら良いのかしら。正面は空いているけど・・・」

 スピネルは不機嫌そうに顔をそむけ、ラピスは自分もこの流れに乗るべきかを真剣に考えていたが今の佑太にそれに気づく余裕はなかった。

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