5.ニキの台所事情
いつものようにニキの愛妻料理を食べていた佑太はそこである事に気付いた。
「そう言えばここって山の上なのにお肉や野菜はまだしも魚とか乳製品ってどこで手に入れてるの?」
調味料に関しては不思議と元いた世界と同じようなものがあったので、佑太は刺身をわさび醤油につけて食べながらニキに尋ねる。
ニキはそんな佑太を嬉しそうに見つめながら自分も佑太と同じくマグロ(に似た魚の)赤身を食べてから答える。
「実は私にはラピス姉さま以外にも二人お姉さまがいて、私達はそれぞれ自分の領域と担当を持っているの」
「へぇ、ニキって四姉妹の一番下だったのか。それと領域と担当って?」
「私は東の海を収めている。その魚は私の支配する東の海で取れたものだ。私は主に海産物の担当だな」
「2番目のスピネル姉さまは南の海を支配してるの。南は暖かいから作物や果物がたくさん取れるからルピ姉さまにはよく野菜や果物をもらってるよ」
「三女のヒスイは西の海を治めている。西は平地も多く穏やかで良い風も吹く土地柄だからヒスイはそこで牛や羊、豚や山羊などを飼っているぞ」
「私達の寝床の枕やベッドシーツはヒスイ姉さまにもらったものなの。以前は必要無かったけれど佑太が来るからと思って前もってもらっておいたのよ!」
ニキがそう言って褒めて欲しそうにしているので佑太は望み通りに頭をなでてやる。艶やかな黒髪の手触りが気持ちいい。
「それじゃあニキは残りの北を治めてるってわけか。ニキの担当はなんなんだ?」
「ニキは末妹とはいえ竜王。だから私達が自分の領地で取れたものの一部をニキに収めている。ニキはその収められたものを使って色々と加工するのが役割だ」
「うん。私は家畜を長期保存できる食料にしたり、穀物や果物からお酒や調味料を作っているの」
「特にニキの作る酒は美味い!ニキの酒とニキの酒に合うつまみの為に私達は己が領地を支配していると言っても良い!」
(どこの世界でもドラゴンが酒好きなのは変わらないってことかぁ・・・)
「俺もニキの作る酒って気になるし、俺の世界での知識も役立つかもしれないから今度ニキの酒造りを手伝ってみたいな」
「! 嬉しい!佑太大好き!!」
「それはいい!期待しているぞ佑太!」
喜びのあまり抱きついてきたニキを抱きしめながら佑太は「しかし俺って酒飲んでいいのかな?年齢的に」等と考えつつも「ま、いっか!」軽く流すのであった。
そして後日、佑太の持つ半端な知識でさえもこの世界では進んだ技術や発想である事がわかると佑太は4姉妹全員から熱い視線を向けられるのであった。