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反逆の魔法の継承者  作者: 豚肉の加工品
2/2

プロローグ 2

タイトル変えました

人族の都 クレオトール

分厚い城壁に囲まれた要塞のようなその国にはその日、衝撃が鳴り響いた。

城壁の外には大量の兵士ら武器を構えながら何かを警戒している。

「……こんなオークが」

「真っすぐ飛んできたんだとしたら、あの森からだな」

その場にいる大量の兵士を従える騎士がそう呟きながら森をみた。

魔獣が住み着き定期的に排除へ向かっているなんの変哲もない場所だが……

「俺は生き根を止める。ハーヴェイツは国王と貴族に報告を頼む」

「分かりました」




王城についた一人の騎士は足早に王のいる儀式の間に到着し、膝をつく。

「王よ、ご報告がございます」

「……なんだ?手短に頼む、明日には宣告の儀式があるからな」

「国境を超えるときに見える南東に位置するメシアの森から魔獣が一匹、城壁に飛ばされてきました」

「…………あぁ、分かった。ハーヴェイツは戦う者たち全てに伝えてほしいことがある」

「畏まりました。それで要件とは?」

「明日の宣告の儀式は必ず荒れることになる、しっかり装備と体調を整えていて欲しい。それとメシアの森に向かい一人の少年に……いや青年に出会い宣告の儀式に呼んでほしい。詳しいことはその青年を見ればわかる」

「つまり、その男が明日のターゲットに?」

「話が早くて助かる、では下がれ」


誰一人としていなくなった儀式の間にただ一人残ったクレオトールの王であるテイリー・アゼント。

「この国はもう終わりかもしれんな」

そんなことを小さく呟いた。

人族の中で一番の国であり、唯一他種族との交流がある人族の要でもあるこの国はある秘密が隠されている。いや、これは全種族が大昔に決めているある種の掟。



——————魔法隠蔽法令



人族、獣族、魔族、竜族の四種族は完全に魔法を隠蔽して生きてきた。

ただ精霊を祭るエルフという幻獣族だけは魔法で成り立つ生活をしているので除外、もちろん世界にバレることのないように表立って世界に顔を出さない。

何千万年と隠蔽され、その国の頂点に立つ者以外には真実は知らされないこの事実を十年前にたった一人の少年の一言で崩れ去りそうになったのは今でも新しい。

「ふぅー……やはり恨んでいるか?」

誰に言うでもなく呟く。

「あの森でどれだけ強くなったかは知らんがたかが一人の少年が国に勝てるわけがないだろう……が、抜かりなく見落としもなく行こう、あれは歴史を汚す反逆者だ」







「なんだこの模様?」

その頃、メシアの森では異常な出来事が発生していた。

いつからかは忘れてしまったがこの森は魔獣に勝つと報酬が貰える、謎の原理があった。

それを理解した時から体を鍛え体術のみで全てを勝利してきたが報酬がいつもとは何かが違う。

一枚の紙に記された十字架の絵。

何故かそれは瞳に焼き付くように吸い込まれていく……

「ま、まさか魔法か?」

物心ついた時から興味があった魔法が目の前に在るかもしれないという事実に興奮を抑えられずにその紙を凝視した。

すると、突然それは見えた。


黒い髪の女性が神々しい何かに貫かれる瞬間を

何人もの種族がどこか暗い場所で会議をしているのを

群衆が十字架に嵌められた何かに祈るようにしている姿を


今、この時代ではない。

それはどこかにあったはずの現実だということは理解出来た。


「……残酷だな、まっ俺も似たようなもんだけど」

昔、それはまだ幼い頃。

親には気を失うほどの暴力を受けた。

何人もの兵士らが自分を囲った。

この森に連れてこられた時に、兵士らの後ろでは両親が何かを拝んでいた。

「ふっ……嫌なことを思い出したぜ。…………て、あれ?」

苦い思い出にふけていると紙に書いてあった十字架が初めからなかったかのように消えた。

そしてその紙すらも目の前で消え始めている現象をこの目に焼き付けた。


あぁ……これが魔法か


最初に出てきた言葉がこれだ。

あまり驚かずに受け入れてしまう自分がいたのに少し体が拒否するように震えたが、首を振り改めて肯定することに決める。



「お前がこの森の青年か?」



高くもなく低くもない、まさに通る声が森の隙間から聞こえた。

カチャリカチャリと金属を擦る音と共に現れたのは国の兵士をまとめる騎士の一人。

「あいつは……」

髪を引かれこの場所に放り投げられた時に両親を守るように立っていた男だと思い出す。

「名は何という?」

「……何の用だよ、国の騎士が俺のところに来るなんてよ」

「要件は明日の宣告の儀式の誘い。俺の名前はハーヴェイツという、クレオトールで騎士団の副長をしている者だ。国王からの直々の命によりこの場に来た」

「あっそ。俺はお前らに微塵も要はないけどな」

「話が噛み合っていないようだな、この森で育ち言葉を忘れたか?」

「挑発されても帰ってくるのは適当な返答だけだ。俺はお前のことなんてどうでもいい上に宣告の儀式とやらにも興味がない。この森に入れたのもそっちだ、最初から噛み合ってないのに何でそんなに上からなんだよ?お前こそ王様に仕えすぎて礼儀を忘れたか?」

「…………お前を森に入れた?」

少しだけ考える素振りを見せるその姿にも隙がない。

まぁオークよりは強いと思う。そのくらいの感想を抱きながらも、ハーヴェイツという男から目を離さないアマラは隣に置いてある本を一冊手に取った。

「あぁ……思い出した。貴様は国の禁忌に触れようとした異端児か、確か名は……アマラ?だったか」

「あぁそうだ。で?お前の要件は名前を聞くことだけだろ?帰ってくれ、面倒くさい」

「その書物は?」

「森からの贈り物だ。あとは盗賊とかのを物色した」

「何を食べて生きてきた?」

「木の実、盗賊たちの食糧、まぁ後は魔獣の肉くらいだ」

「……まぁいい。明日の宣告の儀式には必ず来い、貴様にも神からきっとお導きがあるだろう……」

指笛で馬を呼ぶとそのまま颯爽と駆け出していったハーヴェイツを見送るとふと思ったことがある。

何故自分が国の行事に呼ばれるのか?

「はぁ……とうとうここまで来たか」

処刑……その一言に尽きる。

国の完全武装集団を相手に一人の青年。

思うだけで笑いが出てくる。

しかし、

「まぁいいか。最後に魔法みたいな現象が視れたし、俺の一生には悔いは残ってないしな」

空を眺めながらそう呟いたのだ。






宣告の儀式当日

それそれは盛り上がる、出店はあるしいつもは武器を持っている兵士たちは楽器を持って演奏をしている。

勿論魔法で空に大輪を咲かせている。

「魔法……」

その間を歩くのは十五になったばかりの青年淑女。

貴族の者もいれば平民の者もいるし、スラムで生きている者も勿論存在する。

「人生最後のファンファーレがこれとはね……何だか死にたくなくなってきたな」

俺にとってのこの状況はただ馬鹿にされているとしか思えなかった。

この群衆の中で襲われることはないけど、それでも宣告の儀式では確実に何かされる。

それは確信を持って言える。

「せめて魔法を使うくらいまではやって死にたかったぜ」

周りに視線を送ると騒々しい者たちばかりだ。

国を回す経済社の道に行く。

旅に出るために旅芸人になる。

才能があるから何でも大丈夫。

そんな声が周りからすることにため息が漏れる。

「どうせ巻き込まれてお終いだよ、明日にでも延期になるんじゃね?」

歩いてようやく王城の前に到着すると、国王はもう既に台座に座っていた。

隣には透き通るように綺麗、だがその奥が見えないといった不思議な四角い石が置いてある。

「皆の者!!よくぞここまで成長した!!!国王として、皆の門出を祝いこれからの人生を迎えて欲しいと心から思っている。では、騎士に従い自身の信託を感じ取れぇ!!!!」

ウォー!!!!と大歓声がなるがアマラはそれに耳を塞ぐ。

この国民は王が凄い人間だと思っているらしいが、自分はそれを微塵にも思っていないからだ。

「では、総勢五十の若き獅子たちよ!!!我こそはという奴はいないか!!!!」





「俺がやるよ」




群衆の中から一人だけ声を上げたものがいた。

黒曜にも勝るほどに美しい長髪を靡かせ、まるでモーゼの如く群衆を割りただ一人歩いてきた。

誰一人とも声は出さずその青年に目を奪われる。


見逃すな……

兵士が強張った。

騎士も足を引き剣を抜きやすいようにした。


俺は今まで一人で魔獣と闘ってきた、集団で戦うこいつらに引けを取るとは思っていない。

だけど……1、2……まずは3人くらいか……


一歩ずつ宣告の儀式に向かう中臨戦態勢に入っておく。


「さぁ、この石に手を翳せ。そうすれば自らの運命が決まる」

国王のその言葉に苦笑してしまう。

「もう既に俺の運命は決まってんだろ……」

この国では不思議な石だと言われているがその真実は違う。

魔法石の塊、しかもそれは置物として使うには何も意味を持たない虚構魔石という魔族の地でよく採掘される大きな石だ。

そんなものから何かが起きることもなく————


背後から一人の兵士が襲い掛かってきた。




「どけ」




拳を横なぎに振れば兵士は吹き飛んだ。

「かかれぇぇええ!!!!」

一斉にとは言わない。

だが、そこにいるほとんどの兵士らがアマラに向かって襲い掛かってきた。

騎士たちは群衆への避難指示に追われている。

チャンスはここしかない……

「おいよく聞けお前らぁぁああ!!!!」

襲い来る兵士をなぎ倒しながら避難している群衆へ向かって叫ぶ。



————— この世界には魔法があるぞ!!!



「黙れ!!お前ら早くこいつを仕留めろ!!!」

国王から放たれる言葉には耳を貸さずに続けてアマラは言葉を綴った。

「自分を疑え!!ここには……この世界には魔法がある!!!俺は照明するために来た—————」


するとアマラの体からは感じたこともにないような恐怖が溢れ出した。

並の兵士では立っていることも難しいようなほどで、何人かの兵士は現に尻もちをつき目を見開いていた。


誰かが言った。

あれは化け物だと。

人間ではないと。

それもそうだ……今のアマラからは黒い靄が溢れ出している。


「目に焼き付けろこれが魔法だ!!!」








これは語られるはずのなかった物語。

この世界の本当の始まりの物語。


誰も、誰にも知られない魔法の始まりの物語なのだ…………


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