表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

第5話 2人だけのオフ会

**階のレストランに着くとシェフ達が勢揃いして2人を迎えてくれた。

何でも今日は2人だけの貸切になっているそうで、テーブルマナー等を

気にせずに食事を楽しんでもらいたい総理からの配慮なのだそうだ。


「こういう所での食事に慣れてないので、マナー悪いですが勘弁してください」


「いえ、私もディナーの席でのマナーに疎いですからお互い様です」


シズルさんは少し照れながら笑顔を返してくれた。


「どうでしょう、折角ですからこのまま2人だけのオフ会を楽しみませんか?」


「それは良いですね、この機会を作ってくれた総理には感謝しないと」


それから2人は、食前酒を飲みながらゲームを始めたキッカケ等を語り合った。

そしてコースが進むにつれ酔った勢いからかお互いのプライベートの話までする様になっていた。

住所からお互いの連絡先まで、初めて会ったとは思えない程の気安さを感じつつ楽しい時間は過ぎていく。

その時間もレストランの閉店の時間となり、終了の刻を迎えた。


「シズルさん、大丈夫ですか!?」


「え~? 大丈夫ですよ~!?」


シズルさんはかなり上機嫌だったらしく、普段よりもハイペースでお酒を飲んでいたようだ。

そう言うイセアも、シズルの容姿に目を奪われて料理の味をよく覚えていない。


丁度ホテルのスタッフが居たので部屋の場所を聞いてみると、レストランと同様に総理が気を使ってくれたのか1週間の間部屋が借りられていた。

そして都合の良い時にチェックアウトしてくださいと、説明を受ける。


シズルさんに肩を貸しながら、2人でエレベーターに乗り込み部屋へと向かう。

そして、シズルに用意された部屋の前まで来て


「シズルさん、用意された部屋に着きましたよ」


そう言ったものの、シズルさんは中々離れようとしない。

その時になって気が付いたが、シズルさんは身体を震わせていた。


「ごめんなさい、お酒の勢いを借りなければこんな頼み事は出来ません。 1人で眠るのが怖いんです、両親を失った時の事を思い出すから。 もう少しだけ、一緒に居て頂けませんか?」


イセアも結構酔いが回っていたので、それからの事をあまり覚えていない。

部屋に入ると2人でまた酒を飲み直し、気付くと一夜を共にしていた……。


翌朝、目覚めた2人は固まっていた。

何しろ記憶が無くなるまで飲んでおり、抱きあった状態で目覚めれば

かなり罰が悪すぎる。


「シズルさん、また機会を作って会いませんか? もっとあなたの事を

知りたいです」


「はい、私もあなたの事が知りたいです」


この日、2人はチェックアウトする事をしなかった。

そしてホテルの同じ部屋で、数日共に過ごす事となる。


この1件がキッカケで、2人は恋人同士となった。

平日はお互いの家からログインして狩りを行い、週末になると聖亜がレンタカーを借りて彼女の家まで行き共に過ごす。

パーティーを組む事は考えずに、2人で楽しむ事だけを考えていた。


今日も2人は、【始まりの村】の周りに居るラビットだけを狩り続けている。

イセアは剣と弓をメインに戦い、シズルは杖を持ち攻撃魔法と治癒魔法を使う道を選んだ。


既にラビットを1発で倒せるまで強くなっていたが、新たなスキルを手に入れてから次の町に向かおうと決めていた。


「シズル、今日はこの位にしておこうか?」


「そうね、イセア。 あまり2人でこの狩場を占領するのは新規の方にも申し訳ないですしね」


いつまでも【始まりの村】周辺から離れない2人は、『飛び立てない恋人達』と影で言われる様になっていた。

皮肉を込められている様だが、イセア達は気にしなかった。

飛び立つ力を手に入れた時、2人はこのゲームの中を力強く飛べる筈だから。




2人で過ごす様になってから、もうすぐ1ヶ月になろうとしていた木曜日の晩。

普段通り2人でラビットを狩っていると、少し離れた所から叫び声が聞こえた。

声のする方を向いて見たものは、新規のプレイヤーが複数のラビットに囲まれて

倒される瞬間だった。


イセアは急いでラビットを始末する為にインベントリから弓を取り出すと素早く弓を連射してラビットを全て倒す。

その間にシズルがヒールを掛けているが、徐々に輪郭が消えもう少しで召喚神殿に呼び戻されようとしていた。


「絶対に死なせない!」


シズルはそう力強く叫ぶと、より魔力を込めてヒールを使おうとした。

その瞬間、シズルと新規プレイヤーの2人が眩しい光に包まれた。

すると輪郭が瞬時に元通りとなり、死亡状態から解放された。


そして今度はイセアが光に包まれ、システムによる案内が表示された。


イセアは【スキル バルカンショット】を覚えた。


シズルは【スキル 蘇生】を覚えた。


死を体感するこのゲームにおいて、蘇生の持つ意味は非常に大きい。

このスキルを持つ人間が居れば、死の恐怖から解放される。


イセアが口止めしようと振り返ると、新規プレイヤーはシズルに礼を言う事無く

既に姿を消していた。

そしてこのプレイヤーは事もあろうに、掲示板にキャラクターネームを消さずに

シズルのSSスクリーンショットを投稿してしまう。


その結果、翌日から知らない相手から多数のメールや個人チャットが届くように

なりゲームにも支障が出始める。


そして恐れていた事態まで、現実のものとなってしまった。

どこからかシズルの個人情報を手に入れた人間がシズルの本名並びに顔写真や

住所まで掲示板に晒し、竹森 静流の情報が全世界に流出した。


そして数日後、静流は帰宅したところを男数人に襲われた。


幸い近所の住人の手によって取り押さえられたが、静流は聖亜の家に逃げ込むと

襲われた恐怖から外に出れない怯えた生活を送る様になってしまった。


大切な女性が、また被害者の側に立たされようとしている。

聖亜は静流に気付かれない様にとある番号へ電話を入れると、直接会い相談する約束をした。


翌日、家のチャイムが鳴り相談相手が家にやってきた。

GMのジャッジともう1人、シズルを心配して変装までして駆け付けてくれた

総理の2人だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ