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第3話 ある出会いと意見交換会

ログインするとイセアは、【始まりの村】の周辺のラビットを倒し始めた。

色々な武器を試しているが、まだしっくりくる武器と出会えていない。

このゲーム内ではHPやダメージ等の表示をしないが、少しずつ力が付いた事を実感出来る。


ラビットを倒すまでに最初は4発攻撃しないといけなかったのが、3発にそして2発に攻撃回数が減る事で力が付いた事を自覚出来る。

数値が表示されない事が逆に励みとなって、ゲーム内で筋トレまでするようになった。


剣・短剣・斧・槍・刀・弓・杖・鈍器とこれまでに8つの武器を試したが、まだ手に馴染む物は無かった。

多分、何かきっかけが有れば自分に合った武器が見つかるのかもしれない。

そんな事を考えながら、次のラビットを探していると少し離れた場所から女性の悲鳴が聞こえてきた。


「きゃああああ!」


見ると、その女性は2匹のラビットに追われていた。

所々に燃えた様な痕が有り彼女が杖を持っているのが見えたので、多分魔法を撃った際に隣に居たラビットまでリンクしてしまったのだろう。

2匹同時に追われた事で動揺しているのか、反撃をする気配は無い。。

このままだと追いつかれる、そう考えていた矢先彼女がつまずいて転倒した。


「あぶない!?」


イセアはとっさに弓を取り出すと、2匹のラビットに向け矢を放つ。

1発は運良く命中して倒す事が出来たが、残りの1発は掠っただけだった。

すると残ったラビットが俺にターゲットを変え、こちらに突っ込んでくる。


インベントリに手を入れロングソードを取り出して振り向くと、ラビットはもう目の前まで来ていた。


「うわあああ!?」


死の恐怖から、ロングソードを無我夢中で振り回す。右手に鈍い感触がしたので見てみると、何とかラビットを斬る事が出来た様だった。


「助けて頂き、どうもありがとうございました」


背後で声がするので振り向くと、逃げていた女性が立っていた。

黒髪のやや幼い印象を受けるが、見た目は20歳前後だろうか?

そして修道服とは少し違う、青色のローブを身にまとっていた。


「目の前で、誰かが死ぬ姿を見るのは凄く嫌だったから。 でも何とか助ける事が出来て、本当に良かったよ」


「攻撃魔法を強くしようと思って、フレイムボールの練習をしていたんです。 そうしたら背後に隠れていたのにまで当たってしまい、驚いて逃げてました」


「そうだったんだ。 次からは背後に隠れている敵にも気を付ける様にすれば、同じミスをしないで済むよ」


「はい、そういたします。 ところで助けてくれた方の名前を知らないのは失礼なので、教えてもらってもいいですか?」


「はい、俺はイセアって言います」


「あ、あなたがあのイセアさんだったんですね。 わたしはシズルと言います」


「シズルさんですね、アバターがよく似合っていますね」


そう言うと、シズルさんは頬を赤く染める。


「先日の一件で人も少なくなっていますし、良かったらフレンド登録しませんか?」


「いいですよ、何か有ったら声を掛けてください」


「はい、ありがとうございます」


この日はシズルさんとフレンド登録を終えると、そのままログアウトした。

そして今日の出来事をふり返り、1つの武器に拘ろうとするのは間違いなのかもしれないと思い始めていた。


(剣だけに拘ると離れた場所に居る敵を攻撃出来ない。 だが弓等の間接攻撃に拘ると近づかれた際にピンチになってしまう。 剣と弓の組み合わせが今の自分のプレイに合っているのかもしれないな)


そう考えながら眠りについた。




翌日、会社に行くと何故か社長室に呼ばれてしまった。

何もトラブルや失敗は起こしていないが、もしかしてリストラか!?

と不安を覚えたが、社長の第一声は予想していなかったものだった。


「泉くん、君に明日から1週間の有給休暇を与える」


「はい!?」


「そこまで不思議に思わなくても、大丈夫だ。 昨晩、自宅に首相官邸から1本の電話が掛かってきた」


「えっ! 首相官邸からですか!?」


「ああ、そして詳しい話を聞かされて驚いたよ。 君は例のお仕置き事件でPKによる擬似的な死亡体験をさせられた、被害者だったんだね?」


「……はい」


「だが、君はその事を隠して出勤していた。 そこで官邸サイドから被害者救済の一環として、1週間の休暇を与える事が出来ないか打診された訳だ」


「そうだったのですか……」


総理はあの事件の被害者のアフターケアまで、しっかりと考えていたのか。

色々と賛否の多いゲームだが、もし被害に遭ってもきちんと対応がされるのなら不満は起こらない。


「あと1週間の休暇を与えるのには、もう1つ理由が有るんだ」


「一体何でしょうか?」


「実はその官邸から2人ずつ計10組の被害者を呼び、お仕置きをしたGM本人を交えて現実の場で会って意見の交換を行いたいそうだ」




直接官邸に呼び出してしまうとマスコミがいらぬトラブルを引き起こす可能性が有るからと、都内のとあるホテルのロビーで待ち合わせをする事となった。

もう1人の人も自分と同じくこの日が都合良かったらしく、ホテルに到着すると既に先に着いていて部屋に案内されていた。

数分ほどロビーで待っていると、迎えの方がやってきた。


「お待たせしました。 あの時お仕置きを行ったGMのジャッジこと、裁居田さいいだ 清純きよすみです。 もう1人の方もお待ちですので、さっそく参りましょう」


聖亜は裁居田さんの後に続いてエレベーターに乗り込んだ。

するとエレベーターはゆっくりと降り始め表示されている階よりも更に下の階に進み、そしてB7階の表示でエレベーターは止まった。


「この施設は大切な会合を行う際に、記者達には追えない様になっています。 あなた達の事が公にならない様に、今後も気を付けていくので安心して下さい」


エレベーターから降りると、正面に豪華な扉が見えた。

ジャッジが暗証番号を入力しカードキーを差し込むと、扉がゆっくりと開く。

部屋の中は広い応接室になっていて、中央のソファーには1人の女性が座っていた。


「これで全員揃いました、改めて自己紹介させて頂きます。 自分がGMのジャッジこと裁居田 清純です。 確認の為にキャラクターのネームと、本人の名前を教えてください」


裁居田さんが自分に右手を差し出して、自己紹介を促してきた。


「俺は……キャラクターネーム、イセアこと泉 聖亜と言います」


「え、あなたがイセアさんですか!?」


隣の女性が驚いた声を上げた、そしてすぐに恥ずかしそうに顔を赤くすると彼女の方も自己紹介を始める。


「キャラクターネーム、シズルこと竹森たけもり 静流しずるです。

イセアさん、いえ聖亜さん先日は助けて頂きありがとうございました」


静流が聖亜の方を向きながら、頭を下げた。

現実世界で初めて会った静流は和服を着こなす清楚で美しい女性だった。

こうしして3人で意見の交換を始まったのだが、この後聖亜と静流の2人が予想していなかった方々も参加する事になった……。

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