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第66話 新たな決意

※【重要なご報告】

いつも本作を読んで頂きありがとうございます!

突然ですが本作「憑依彼女と死神と呼ばれた転生者」をシリーズ化し、三章の終了と同時に【前編】と【後編】に分割する事に致しました。


【前編】は本エピソードを含み、残り三話で第三章の終了をもって完結と致します。同時に【後編】の第一話を【前編】の最終話の投稿と同日に初投稿する予定です。(詳しくは【活動報告】を参照頂けると嬉しいです)


どうか引続き【後編】も、これまで同様にブクマ等を頂戴できますと幸いです!是非、本当の完結まで続きを読んでみて下さい!何卒、宜しくお願い致します。

「──うむ、その通りじゃ。実は、その件に関してはそこの土方達とも話しての……どうせなら、仲介等とそんなまどろっこしい事はせずに、いっそ江戸の都として、正式にお主の町と交易を結んではどうか……。そういう話になったのじゃ」



 家康の口から語られる、意外な提案。


「正式に……?」


 俺は思わず聞き返した。それってつまり、俺の町を一つの領土として認めると言う事か? 


「うむ。徳川()の名において、商人達には正式に触れを出す。外客として、誠実な取引を徹底せよとな。勿論、破った者には厳罰を与える。まあ、よもや妾に逆ろうてまで、お主等を差別する様な馬鹿はおるまいよ」


 そう言って、口元をニヤリと緩める家康。


 なるほど……そう言う事か。


「……分かったよ。あくまで、江戸の都(お前等の町)と俺の町は対等の関係……つまり、同盟を結んで欲しいって事だな?」


 要するに、家康達は先程目にした猪熊達の惨劇を見て、俺達と敵対する事を恐れたのだ。ならば、今のうちに友好的な関係を築いておきたい。そう考える方が、得策だと判断したのかも知れない。


 まあ、俺にとっては当然、この提案に何の問題も無い。対等な関係なら、今までと何の変わりも無いし。寧ろ、これからは堂々と動ける分、色々とやり易くなる。


「ま、まあ、簡単に言ってしまえばそう言う事じゃ。全く、お主には駆け引きすら通用せんの……話が早いのは助かるのじゃが」


 まずは交易から……そして、あわよくば少しでも有利な条件で、同盟を締結。家康は、そんな事を考えていたのかも知れない。しかし、身も蓋もなく俺に見透かされ、対等な条件を引き出された……おそらく、そんなとこだろう。家康は、複雑そうな苦笑いを浮かべている。


「面倒臭いのは嫌いなんでね。その同盟、対等なら結んでもいいぞ。何なら、お前等が一番欲しがってる、不可侵条約も付けてやろうか?」


「ま、誠かっ!?」


 家康より先に、土方が身を乗り出して答える。どうやら、この同盟の発案者……家康の参謀的な役割は、土方が請け負っているらしい。そしてやはり、こいつ等が一番欲しい物……それは、俺が今後、敵対しないと言う確かな保証。つまり、不可侵条約。相当、猪熊達の姿(殺られ方)に衝撃を受けていたらしい。俺は、そんな土方に目線を向けて答えた。


「但し、一つだけ条件がある。もし、俺達が差別を受けたと判断したら、その時は容赦無くそいつを殺す。例え、お前等の法律(基準)では無罪でもだ。そして、その判断は俺達がする」


 余りにも暴論。俺もそれは分かっている。しかし、ここだけは譲る気は無い。何故なら、俺は()()()()()()()()()、全く信用していないからだ。


 黙り込む、家康と土方達。おそらく今、必死でこの提案を受け入れた時と、そうでない時の事を、損得の天秤にかけているのだろう。暫く沈黙が続いた。俺は、そんな土方達の迷いに対して背中を押す。


「そんなに心配するな。何も俺達は、傍若無人に振る舞いたい訳じゃ無い。あくまで、人間を信用していない……それだけだ。普通にしていれば、何も問題は起こさないよ」


「う、うむ……」


 土方が唸る。そして、その様子を見ていた家康は決断した。


「良かろう。妾は、お主の言葉を信じる。まずは妾達が信用せねば、お主に信じて貰えそうにないからの」


「し、しかし上様……」


 流石は家康、と言った所か。ここぞという時の決断は、中々、腹が座っている。


「だったら決まりだ。なぁに、心配はいらん。別に俺達は無法者じゃない」


 そう言って俺は、心配そうな表情(かお)の土方に声をかけた。


「うむ。良い同盟を結ぶ事が出来た。これからもよろしく頼むぞ、真人?」


 家康がニコリと笑い、そう告げる。どうやら、腹は括ったらしい。既にその目は、これからの事を見据えている様だ。


「ああ…よろしく頼む」


 俺は、そんな家康に対して簡潔に答える。すると、家康が一つ提案をして来た。


「正式に同盟を結ぶ以上、こちらとしては、家臣(うちの者)を何人か、お主の町にも置いておきたいのじゃが……」


 そう言って家康は、未だに土下座ポーズの忠勝に目を向けた。


 俺の町に常駐……おそらく、大使みたいな物だろう。俺としては、特に受け入れても問題は無い。だが、まさか忠勝を寄越すつもりなのか? 俺がそんな事を考えていると、家康が見透かした様に、その答えを口にした。


「今回の忠勝(こやつ)の謀反……いくら筆頭家老とはいえ、無罪放免では他の者に示しがつかぬでな。忠勝……お主の筆頭家老という役職は剥奪じゃ。ついでに、親衛隊も解散せよ」


「「「──は、ははっ!!」」」


 近藤や土方、新八達が一斉に頭を下げる。(あるじ)の命令だ。誰も異論を挟む者はいない。ただ、忠勝だけが神妙な表情(かお)をして、静かにその口を開いた。


「上様……我の様な大馬鹿者にも、この様な寛大な処置……誠に痛み入ります。我は、謹んでどの様な罰でも受けまする。ですが此度の件、悪いのは全て無知である我。ですのでどうか、こ奴等だけには寛大な処分を──」


「──愚か者!!」


 必死に親衛隊の減刑を訴える、忠勝の言葉を家康は遮った。そして、そのまま忠勝に対して、諭すように語りかける。


「話は最後まで聞かぬか、このたわけが。親衛隊は解散するが、お主等には新たに、妾の直属の部隊として働いて貰う。その部隊の責任者はお主じゃ、忠勝」


「……え?」


 何を言われてるのか分からないといった表情で、忠勝は家康の顔を見返した。家康は、そんな忠勝に対して優しく諭す。


「今度はお主の家臣では無い。お主が組織の(おさ)として、同じ部隊から親衛隊(こ奴等)を率いるのじゃ。役職は変わるが、忠勝と親衛隊(お主達)の関係は変わらん」


 なるほどな。確かに、これなら忠勝は事実上の降格だし、親衛隊も責任を取って解散してる。直ぐに同じ様な組織を作る辺り、屁理屈(やり方)が俺と似ている様な気もするが。忠勝の親衛隊では無く、家康直属の部隊として再結成。本多家の権威は地に落ちるかも知れないが、本人達にとっては無罪みたいな物だ。


「やるじゃねえか、家康」


「ふふふ……悪知恵が働くのは、お主だけでは無いわ」


 言いながら笑って見せる家康。俺は、そんな家康に問いかけた。


「だが、まさか新たな部隊(こいつ等)を全部、俺の町に押し付けるつもりじゃ無いだろうな?」


「馬鹿を言うで無いわ。こ奴等を皆んなお主の所にやれば、この江戸の都の戦力はガタ落ちじゃ。使いに出すのは精々、交代で一人。後は、其々の弟子でも連れて行けばよかろう」


 家康はそう言って、俺の言葉を否定した。町に来るのは、交代でこの中から一名……それに、付き人が何人かと言う事らしい。


「まぁ、それなら……」


 俺は特によく考えもせず、何となくそれを受け入れた。すると、家康が更に口を開く。


「ふむ。組織も新たになる事じゃし、いつまでも親衛隊と呼ぶ訳にもいかんのぉ。何か良い呼称は無いものか……」


 そんな、くだらない事を零す。すると、意外な人物がそれに反応した……新八だ。


「上様……恐れながら。それなら俺に名案がございます」


「ほう……申してみよ」


 興味津々に、新八の顔を覗き込む家康。新八は真剣な表情で、その言葉を口にした。


「以前、こ奴……いや、真人殿と対峙した際、ボソリと口にされたのです。『しんせんぐみ』……と。俺はその響きが、どうにも気に入っちまって……」


 ここでその名前を出すのか!? 


 そういえば、当たり前の様に親衛隊と呼んでいたが、確かにこいつ等は元々……。


「ふむ。しんせんぐみ……新選組か。死神の元に行く為に、『新』しく『選』ばれた者達の『組』織。悪くないのお……」


 家康もの表情(かお)も満更では無さそうだ。


「よし! お主等は今日から『新選組』と名乗るがよい。組長は忠勝、お主じゃ。近藤を中心に、新たな組織を編成せい!」


「ははっ!」


 忠勝が神妙に頭を下げる。そして、近藤達も全員それに続いた。


「ははは……。新選組が出来上がっちまったよ……」


 しかも、()()じゃなくて()()が本多忠勝。何その最強集団……。俺は、苦笑いを浮かべずにはいられなかった。


 そんな俺の事など気にも留めず、家康は新たな疑問を問いかけて来た。


「時に真人よ。お主の町……名は何と申すのじゃ?」


「町の名前?」


 思わず間抜けな返事を返す。町の名前なんて……そんな物は決めてない。すると、そんな俺の様子を見て、家康は更に聞いて来る。


「何じゃ、決めておらぬのか?」


「ああ……すまん。考えてもいなかった。まあ、名前なんか何でもいい。適当に呼んでくれ」


 正直に答える。すると、家康が少し困惑気味に提案して来た。


「まあ、今すぐに決めずとも良い。決まったら大使の者に、伝えてくれればよかろう」


 そう言って家康は、町の名前については保留した。まあ、後で適当に考えよう。


 とりあえず、俺の町を江戸の都(家康)が認めてくれたのは大きい。この事実はこれから、町を発展させるのに、何かと役には立つだろう。


 俺はもう一度、雪と暮らす為の安息の地……樹海に町を造り直す決意を固めた。そして同時に、その町の平穏を脅かす存在……秀吉や半兵衛、そして京の奴等に対しての復讐も。だが、とりあえず今はラル達が待つ樹海に帰ろう。





 ──俺はこの日、この異世界での新たな決意を胸に、江戸の都を後にした。



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