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第32話 意外な展開!?

 ──東の川上流の町。瀬上邸 会議室



「──で、その情報は間違いないのか?」


 進行役のウォルフが尋ねた。


 俺は今、重要な報告があると言う事で会議室にいる。そして、その報告があると進言して来た男は今、ウォルフから事の真偽を尋ねられていた。


「間違いない。斥候の報告を見る限り、裏は取れている」


 ボアルだ。


 実はあの種族間会議の後、獣人種の各種族は改めて会合を開いたらしい。議題は獣人種として、俺の配下に加わるかどうかだったそうだ。


 そしてその会合で、俺の配下に加わる事を宣言したのがここにいるボアルの猪人族と、新たな族長が率いる虎人族だったらしい。ちなみに虎人族の新しい族長の名はベンガルと言うそうだ。さすが虎……


 彼等二種族は会合の後、俺の所へ一族を率いてやって来た。そして、忠誠を誓うから配下に加えて欲しいと懇願して来たのである。

 で、無下にも出来なかった俺は配下に加える事を了承した、という訳だ。まあ、彼等が本当に忠誠を誓っているのは、雪の能力でわかったしな。忠誠が嘘なら俺の魂とは繋がれないはずだ。


「まさかラビリアがそんな動きをするとはな……」


 ウォルフが意外そうな、そして残念そうな顔で答えている。


「既に下流の者共が酒天の配下にあるのは間違いない」


 ボアルが念を押すように話した。

 ラビリアは下流地帯の犬人族と猫人族を引き連れて、鬼人族の配下に加わったらしい。何でも鬼人族の族長である酒呑童子に、配下となり俺達の情報を持ち込む事を条件に、自分達の身を保証しろと迫ったそうだ。


「いざという時、真人様が自分達を守ってくれると言う保証はない、と言うのが奴の主張でしたからな」


 ボアルの横にいるベンガルが話を補足した。

 ベンガルはタイガ同様、斑模様でガッシリした体格の如何にも武人といった感じの獣人だ。タイガよりはまともそうだけど。


 そのベンガルの補足によると、ラビリアは会合の際、俺を信じるのは危険だと声高に主張していたらしい。ラビリア曰く、俺は血も涙も無い悪魔だから、必ず獣人達は見殺しにされるそうだ。


 悪魔はジンだしっ!

 血も涙もあるしっ!

 まあ、完全には否定できないとこもあるけど……


 それにしてもラビリア……ちょっと考えが極端過ぎる様な気がする。もしかして俺に言い負かされたから意地になってるのか? 真面目キャラには有りがちな暴走しちゃうパターンで。

 そんな事を考えていると、さらにベンガルが話を付け加えた。


「しかも、鼠共まで妙な動きをしているらしい」


「妙な動き?」


 ウォルフが聞き返している。


「ああ。何でも鼠共の生き残りが、西の森へ向かうのを見かけた奴がいるそうだ」


「西の森……妖魔種か」


 ウォルフは自分の推測を口にした。


「鼠共は西にも集落があるからな」


 ベンガルは肯定する様に答え、頷いている。


 妖魔種か……確か河童族とか蜥蜴族とかだっけ。

 蜥蜴ってあれか? リザードマンって事か?

 河童も本物なら見てみたい。やっぱり主食はキュウリなんだろうか……皿割ったら死ぬのかな?

 しかし何だか、いろいろと面倒臭い話になって来たな……鬼だの鼠だの妖魔だの。


「で、真人様はどのようにお考えでありますか?」


 突然ボアルが話を振ってきた。

 どうしよう……何も考えてない。


「うむ……そうだな……」


 とりあえずぼやかして時間を稼ぐ。

 てか何が「うむ」だよ……だんだん軽々しく喋り辛い立場になってきた。一応こいつ等の主だし。

 まあいいか。異世界まで来て気を使うのも馬鹿らしい。好き勝手にやらせて貰おう。


「面倒臭いから鬼も兎も殺っちまうか」


 俺が言った瞬間、空気がピリッと張り詰めた。

 ジンだけはニヤリと笑っただけだけど。


「つまり……こちらから仕掛ける、と?」


 歓喜と緊張の入り混じった様な面持ちで、ボアルがボソリと呟いた。ボアルは鬼人族を倒すのが念願だったからな……今まで相当やられてたんだろう。ベンガルも少し興奮しているみたいだ。ウォルフは……パッと見ではわからないな。こいつ、顔に出さないタイプだし。


「まあ、皆の意見を聞いてからだけどな。ウォルフはどう思う?」


 とりあえず俺はひと呼吸置いて尋ねた。


「そうですね……鬼共の狙いはおそらく、ラビリア達を使っての挟み撃ちではないでしょうか。奴等は中央の上流と東の下流を抑えていますので。しかも中流地帯の種族は全て、この町に集まっています。的としても絞りやすいのではないのかと」


 なるほど。確かに俺達が中央に乗り込んだら、その隙を鬼人族は見逃さないだろう。下流の獣人達にこの町を襲わせるか、背後から俺達を挟み撃ちにして来る可能性が高い。


 だがそれは、俺達の戦力がラビリア達の知る情報だけだった場合の話だ。


「あんまり使いたくなかったんだけどな……」


 俺はあまり気乗りがしない声で呟いた。

 本当なら俺とジンが二手に別れれば一発なんだけど……ジンはやり過ぎる可能性があるから、出来ればその手は使いたくない。

 仕方ない。この手で行くか……


「下流にはコンを向かわせる」


 そう。この会議には出て来て無いが、実はコンも俺の配下に加わっていた。あの会合が終わると真っ先にやって来て、俺の配下に加えろと迫って来たのだ。


 コンの場合、目的は俺に虐められたいだけみたいだけど……どうやら俺は、完全に彼女の新しい扉を開いてしまったらしい。殆ど押し掛け女房の様な勢いでこの町に居付いてしまった。今はジンにやられて少なくなった一族達を迎えに、東端の森へ帰っている。


「あの女狐を……奴がおとなしく、此方の指示に従いますでしょうか……」


「従うさ」


 ボアルはまだコンが信じられない様だが、俺は従うと確信していた。動機は不純だがコンの忠誠は本物だったからだ。


「それでは早速、今後の具体的な動きについて──」


 ウォルフはそう言って、具体的な準備について打合せを始めた。俺はある程度内容を確認すると、後は彼等に任せる事にして会議室を出た。


 ちなみにコンはあれ以来、中二ネームは名乗っていない……



 さあ、鬼退治だ──



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