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第27話 魂の繋がり

 俺は今、魔神と呼ばれていた悪魔──ジンの住む山小屋に集まっている。

 俺とジンの他に楓とウォルフ、ラルも一緒だ。

 実はここに来る前、俺達には劇的な変化が起こっていた。




 ──ジンが俺に忠誠を誓ったあの後、俺と雪に新たな能力が発現した。


 正確には雪に発現していたのだが、俺達は今までそれに気付いていなかった。


 雪の能力は【魂の家族(ソウル・パーティー)】。

 どうやら俺の魂との同化が能力の発現した原因らしい。

 そして、この能力は驚く様な効果を持っていた。


 雪曰く、この能力は俺に忠誠を誓った者を俺が配下として認めた時、俺の魂と繋がる事が出来ると言う物らしい。勿論、俺と雪の様な魂の深い所で繋がる様な物ではなく、もっと簡易的なネットワークみたいな物だそうだ。


 そして、この能力で俺と繋がった者は、俺の様に自身が無意識で望んでいた力を得る事が出来るらしい。だがこれは俺の空想能力の下位互換の様な物らしく、それ程強力な物では無いみたいだ。


 魂のネットワークを介すると俺と雪の様な念話みたいな事も可能になる。但し、あくまで会話が出来るだけで俺達の様に感情のやり取りまでは出来ないみたいだけど。


 この能力のおかげで雪はジンとも話す事が出来る様になった。ジンも初めは驚いていたが何かを察したのか、あまり多くは聞かずに黙って事情を飲み込んでくれた。

 一応、念の為に口止めはしておいたけど。


 雪が言うには、これからも俺に忠誠を誓う者が現れれば、その数だけこの能力の力を蓄積して行く事が出来るらしい。しかも誰に能力を与えるかとか、誰と念話を繋ぐか等は俺が全て決めれるそうだ。


 例えば新しく俺に忠誠を誓う者が現れた場合、そいつに能力は与えずにジンに能力をさらに与える、といった具合だ。

 確かに何十人も念話が勝手に繋がるとか、想像しただけでも面倒くさい。


 しかしこれは、雪らしいと言えば雪らしい能力の様な気がするな。雪は早くに母親を無くして、差別の中を一人で生き抜いて来たんだ。そんな雪が家族や仲間を欲していたのは簡単に想像出来る。

 雪のそんな想いとか願いがこの能力を発現させたのかも知れない──




『──しかし驚きました。まさか真人様の中に奥方様がいらっしゃるとは』


『おっ! おく、奥方っ……』


 ああ。ジンは雪を俺の嫁だと思っていたのか。まあ、正確に言うと違うんだけどな。でも俺はそのつもりでいるし雪も照れまくってはいるけど上機嫌だから敢えて訂正する様な事はしないでおこう。


『しかも、この様な素晴しい能力(ちから)……私までその恩恵に預からせて頂けるとは──』


 ジンは両の手をまじまじと見つめながら喜びに震えている。ちなみに右腕は戦いの後、あっさり生えてきた。悪魔は魔力さえ残っていれば、これくらいは容易い事なんだそうだ。


『私がこれまで何百年と研鑽を重ねても届かなかった領域に……まさか手の届く日が来ようとは。感激の余り言葉もございません』


 ジンは俺に配下として認められた事で、新たな力を手に入れたらしい。何でも魔界の(ほのお)とか言う黒い炎を使える様になったそうだ。

 強さのみを求め続けていた男だし、この能力が発現したのは当然の事だと言えるのかも知れない。


 しかし、いちいち仰々しいんだよな……この悪魔は。もう少し気軽に接してくれても構わないんだけど。


『やはり見所がありましたね。真人さんの素晴らしさをよく分かっています』


 雪が俺にだけ聞こえる様に話しかけて来た。

 なんだか雪に任せておくと、こんな奴ばかりになりそうな気がして来た……


「で、これからどうする?」


 俺は何となくむず痒かったので、話題を逸して話を切り出した。


「どうする、と仰いますと?」


 ジンが訪ね返してきた。


「とりあえず目的の魔神……では無かったけど目的は果たしたし、後はこれから暮らしていく場所をどうするかと言う話なんだが……」


「ここでお暮しになる、という訳には行かないのでしょうか? 勿論、この小屋はもっと真人様に相応しい物に建替えさせて頂きますが」


「うーん……そうなんだけどさ……」


 俺は少し悩んでいた。いくらファラシエルの忠告があるとは言え、こんな森の奥で暮らすと言うのもどうかと思う。だって俺、仙人とかじゃ無いし。人間は嫌いだから離れて暮らすのは構わないんだけど、考えてみれば自給自足の生活っていうのもどうなのか……やはり人間らしい暮らしには、多少の文化も必要だと思う。


「やっぱり、人間は嫌いだけど町に住む方がいい様な気もするんだよな……いろいろ便利だし」


 俺は思い切って考えを話してみた。すると、ジンは予想外の答えを返してきた。


「なるほど……確かに町の暮らしと比べれば、ここの生活は不便な物かも知れません。では、人間の町を一つ支配されてみては如何でしょうか?」


「なっ!?」


 今まで大人しく話を聞いていた楓が、ガタッと椅子を倒して立ち上がった。

 驚愕で目が見開いている。それもそうだろう。楓にしてみれば先程、目の前で信じられない戦いを見せた化物二人が、町を滅ぼそうかと話しているのだ。冷静でいられるはずが無い。


「なるほど……その手があったか」


「まっ! 真人様っ!」


 悪くない、と言う俺の反応に楓が更に困惑している。実際俺はそれも有りかな、くらいには考えていた。人型のウォルフは黙って俺達の動向を見守っている。


「真人様がお出向かなくとも、ご命令頂ければ私が適当な町を一つ落として参ります。近隣の町でしたら半日もあれば充分かと」


「はっ……半日……」


『…………』


 楓は既に泣きそうになっている。俺達の戦いを見て自分達ではどうしようもない事を悟っているからだろう。余りに重大な決議が目の前で決まりそうになり、責任に耐え兼ねているみたいだ。

 雪は俺に判断を委ねる様に黙って聞いている。特に口出しするつもりは無いみたいだ。


 俺は少し悩んだ。

 町を落とす事はさすがに俺も乗り気ではないが、かと言って積極的に反対する程でも無かった。ただ、支配するって言うのは何だか少し違う様な気がした。俺は人間に積極的に関わりたくないだけで、偉そうにしたい訳でも全てが憎いという訳でも無い。ただ無関心なだけだ。


 そんな事を考えていると突然、俺はハッと閃いた。


「──そう言えばウォルフ。お前、新しい縄張りを探してたよなあ?」


「え、ええ。出来るだけ奥地で、未開の地を探そうかと思っておりましたが……」


『なるほど……さすが真人さんです』


 いきなり話を振られたウォルフは慌てて答えた。

 雪は俺の考えに気付いたみたいだけど……


「だったらウォルフ。お前達、ここに住めよ。そんで、ここにお前達の町を作れ。それがこの地域を貸し与える条件だ。魔神の庇護付き、優良物件だぞ? ジン、構わないよな?」


「勿論でございます」


 ジンは何事でも無い様に即座に答えた。


「そっ! それは願ってもないお話ですが……よろしいのでしょうか。私達にはその御恩にお応え出来る様な物は何も……」


「だから、ここに俺が暮らしやすい町を作れ。それで充分だ。この上流地帯は一等地なんだろ? いい話だと思うんだけどな」


 俺はニヤリと笑いながらウォルフに提案した。

 ウォルフは目に涙を浮かべて震えている。よっぽど嬉しかったみたいだ。族長としての責任がプレッシャーになって伸し掛かっていたのかも知れない。ラルが慰める様にウォルフに寄り添って鼻を鳴らしている。

 ふと見れば楓は、泣き笑いした様な顔で頬を引き釣らせて安堵していた。全身の力が抜けた様に、ちょこんと椅子に腰掛けて放心している。


「あ……ありがとうございます……これで、これで一族の者も土地に根を張って暮らす事が出来ます。この様な素晴しい土地を頂いたからには、必ずご期待以上の町をお作りして見せます!」


 ウォルフは決意の籠った目に涙を浮かべて俺に告げた。


「ああ。期待してるよ」


「はい! 早速この朗報を一族の者達に伝えてやりたいのですが……その前に狼人族の族長としてお願いがございます」


「何だ?」


 何か嫌な予感がする。


「私達、狼人族は群れで行動する一族です。そして、その族長は一族全ての決断を任されております。つまり私の意思は一族の意思と言う事です。この度、真人様からお受けした大恩に私達が差し出せる物は何も御座いません。ならば、せめて我が一族の永遠の忠誠をお受け取り頂きたく存じます」


 ウォルフは椅子から離れると、跪いて仰々しく頭を下げた。ラルも傍らで頭を垂れている。


 やっぱりこうなったか……だから、そう言うのは要らないと言っているのに。

 俺はただ、気楽に過ごしたいだけなんだ。


『この人達も真人様の素晴らしさに気付いたみたいですね』


『さすがは我が主です。戦わずして忠誠を誓わせるとは……これこそ強者の極みかと」


 そして勘違いが二人に増えた。扱いがまるで何処かの教祖様みたいだ。一体、俺を何だと思っているんだろう……だんだん聞くのが怖くなって来た。


「いや、ウォルフ……そんなに気を使わなくても……」


 ウォルフがジッと俺の目を見つめている。

 うんと言うまで引かない奴の目だ。ちょっと怖い。

 はあ……仕様がないか。


「わかったよ、ウォルフ。お前達の忠誠、確かに受け取った。こらからも宜しく頼む」


「ははぁっ! ありがとうございますっ!」


 俺は仕方無しに狼人族の忠誠を受け入れた。

 ウォルフはホッとした様にひと息吐くと、満面の笑みを浮かべて礼を述べた。


 ウォルフは俺に一族を迎えに行く旨を伝えると、ラルを連れて足早に小屋を出て行った。チラリと見えたウォルフの表情(かお)は、嬉しさを堪えきれない様な笑っている表情(かお)に見えた。



 そして暫くするとウォルフが一族を率いて戻って来た。ウォルフ以外は狼の姿なので表情はわからないが、何となく皆、嬉しそうな顔に見えた。



 ──こうしてこの日、ジンに加えて狼人族達も俺の配下に加わる事になった。



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