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マニギアード~ゼロの機士~  作者: 白峰 黒夜
5章 夏の騒乱編
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48 雲の上の存在


 このは は自分の精霊と出会えた嬉しさが滲み出ていたが振り返り固まった。

 「…あの…この子はいったい…」


 このはの言葉を疑問に思い覗き込むと俺を含めた3人が精霊を見た瞬間に固まった。

 「…人魚?」

 上半身は水で形作られた女性的なフォルム、腰から下は翼のようにも見えるヒレと共に水竜の面影を感じさせる尾ひれがついていた。


 「へぇ~…綺麗だな」

 俺の発言に喜んだのか俺の周りを二、三週したら何故かカグツチの頭へ座り込んだ。

 精霊の特性を知る神谷博士と姉さんは一瞬身構えたが何か起こる事はなかった。


 「嘘…反発し合わないなんて…」

 「興味深い現象と言えるね~…」

 姉さんは驚き、博士は好奇心を見せている。


 「俺と このは の波長が近いとかじゃなくて?」

 なんとなく、そんな感じがして言ってみたけれど博士は核心を突いていると思うよ~と肯定的に捉えていた。


 カグツチの頭の上で寄り添っているがカグツチの頭から羽が生えているようにも見える。

 「このは、コイツの名前考えてないの?」

 カグツチの頭の上で、俺に両方の人差し指でほっぺたをムニムニされている水の精霊の事だ。

 ほっぺたは、ひんやり、やわらかくて気持ち良いです。


 「見て浮かんだんですがティアマト…アナタは気に入ってくれるかな?…」


 手を出して水の精霊に呼び掛けるとカグツチの頭から跳ねて、このはの手に飛び乗る。


 「『ティアマト』貴女は私の精霊になってくれる?」

 コクリと『ティアマト』が頷くと触れている部分から深海のような青い光が広がった。


 「今ので契約完了かな?」

 少し姿が変わったティアマトが現れた。人魚形態は変わらず天使のような翼が腰に現れて髪は薄めの金髪に変わっていた。人魚と天使の混ざった姿に見える…と思っていると


 「一つの属性だけじゃないかもね?」

 俺の勘では『水』『風』パッと見た印象だけど『光』も入っていそう…根拠が金髪と天使の翼があるって言うだけなんだけど…


 属性確認を森で行うと暴走の末、木々を薙ぎ倒して更地にするとか…不測の事態に対応できないため戻ってから確認となった。


 その後7ヶ所の同じような精霊が漂う場所を巡り、このはが真っ赤な結晶の場所で尾が二又の白いキツネが傍にいた。


 ちなみに俺はそれぞれの場所で一回ブワッ!っと集合されてサッと解散された。多分着いてきていないはず…悲しい


 一通り巡り終わった時


 悪い知らせが届き、聞きなれない言葉が飛び込んできた。

 『マスター、リンドブルムの脚部製作が難航しているので整備班より招集の願いが届いています。』

 整備班…?ギアは本来自分で整備できるように技術的指導なども行われている。戦場において整備班がいるとは限らないし、軽微な不良も命取りとなる場合もあるため機士の一人一人が整備士を兼ねているのである

 なので…

 「えっ?整備班なんているの?」

 思わず口から出たがよく考えるといても不思議はなかったがそう思い当たるのは後の事だった。

 

 『存在しています。特定条件を満たす機体を所持する方に配属される特殊技巧部隊です。』


 特定条件?…特殊技巧部隊…

 「ほぉ~やっと君にも通達が来たんだね~…実はリンドブルムに大分前から技巧部隊が携わっているけどね」

 悪戯な笑みを浮かべて衝撃の事実を伝えてきた。

 アストルムシステムが積まれている時点で機械に出来る事はパーツの構成と作成のみになったらしい

 組み上げから設定まで自分が行っている事をそっくりそのまま技巧部隊が技術を吸収して活かすらしい。


 今のリンドブルムは暴走機関と言っても過言ではない扱いづらさだ

 念には念を入れすぎた俺の悪い癖がよく出ている。過剰で余剰のエネルギーがうまく循環していないので新しいリンドブルムはソレをコンセプトに設計した。


 そして念願の飛行推進装置ユニットだ


 これが無い事が扱いづらさだの原因とも言える。飛行推進装置ユニットの推進にエネルギーを循環して方向性を持たせる。結果として飛行を含めたマニギアードの性能向上と機体強化ができる…


 「そうだよな…機械だけじゃできないよな…」

 染々《しみじみ》と俺の口から出た。

 招集願いにメールを返して森を出ると自動運転ではない特別車両がお出迎えしてくれている。


 「神谷博士、式守様、来栖上等機士、玖条一等機士、お待ちしておりました」

 このはと俺は直感で立ち止まった、執事姿をしているのに一線を画す機士としての存在感に…


 「新人を試すなんて…趣味悪いわよ、近藤刹那コンドウ セツナ元帥・・…」

 その言葉で二人は反射的に姿勢を正し敬礼を行った。

 「「失礼いたしました!」」

 そのあとに頭を下げた状態で停止している。

 「流石のボクも趣味が悪いと思うよ…」

 神谷博士の苦笑している雰囲気が伝わってくるが俺達はそれ所ではないパニック状態に陥っていた。


 元帥


 ソレはまさしく雲の上の存在と言える。自分達など末端にも属せていない者には遥か遠くから見ることしかできない機士の中の機士が目の前にいる。


 次の言葉で自分の耳を疑った

 「いや~…この服は趣味でね、一度くらいなら美女に付き従う執事に男は憧れるだろ?軽い気持ちで着たら意外としっくり来てね暇な時に着てるんだ」


 なんとなく残念な目で見てしまった。車の運転も好きなんだけどね!と後付けで言われたが姉さんが軽くあしらい運転手になっていた残念な凄腕機士元帥だった


 そんな畏れ多い方の運転は実に上手く機士の操縦技術が垣間見えた。


 「あの…実のところ近藤元帥は何故こんな事をしておられるのですか?」

 助手席に座らされ、沈黙に負けた俺は単刀直入に聞いてみた。


 「君の機士としての力と突拍子もない創造性なのに現実的な構造に作り込む能力に興味を持ってね…いい機会だと思ってこの場を作らせて貰ったんだ。」


 この言葉で大変心苦しい気持ちになった。

 俺は実現可能な技術を適当に組み合わせて想像した物をがんばって似せてるだけなのに過大評価もいいところだと思った

 ただ好きなものを極める…コレが蒼騎の原点だった。


 「自分の事を買いかぶり過ぎですよ…好き勝手やっているだけですから…」

 「ハハハッ、それでも僕が勝手にそう思っているだけだと考えてくれれば良いよ。」


 光栄でもあり畏れ多い…リンドブルムの脚の事を考えつつ賛辞を噛み締めていた。この話が終わった時、とある倉庫の前についた。


 「あれ?ここって…」

 「そう、ボクの実験に付き合ってもらったアノ倉庫だよ」


 俺の考えを読んだかのように神谷博士は後部座席から身を乗り出して肯定してくれた。やっぱり見間違いじゃなかった。


 そのまま車で倉庫の中まで進み、とある一角で停止すると端末を掲げた。一拍を置いて突然赤いレーザーが車をスキャンした。

 固唾を飲んで見守っていると車の周り2mほどの所から手すりの様な棒がせり出して車が沈み始めた。


 「もう降りても大丈夫だよ」

 もう降りても大丈夫だよ…と言うが絶賛下降中の自分達。実際にどこも行けないし下降中とは言っても斜め下に進んでいる訳だが…


 「こんな下に特殊技巧部隊があるのですか?」

 「そうだよ、ギアだって下でレールに乗って動いているだろう?」

 そしてハッと気付く…その顔を見た近藤元帥と神谷博士がニヤリと笑う。

 「コッチの方が色々と都合が良いんだよ」


 都合が良いに決まっている。

 目の前を勝手にギアが流れていって、どのような構造か見る事も可能。わざわざ呼び出さなくても通り過ぎる時に停止させれば良いし訓練場でギアから機士が降りていればゆっくり見る事も出きる。

 レールで運ばれるのは大抵1度経験すると乗り心地が最悪なので余程の物好きしかやらないのだけれど…

 「アレ?でもそうなると…」

 と考えていると目的地に着いたらしい。


 コツコツとゴーグルをかけた白衣、タンクトップと作業衣を組み合わせたショートカットの女性が現れた。

 「やれやれ…やっと来たか。待ってたよ」


 「お待たせして申し訳ございません。召還に応じお連れいたしました。」

 うやうやしく御辞儀をする近藤元帥をガン無視し通り過ぎて俺の前まで歩いてくる。えもいわれぬ緊張を感じる。


 上から下まで見つめられ

 「やっとリンドブルムの設計者に会えたわ!」

 ガシッっと手を握られる。細いのにかなり力強く簡単には外れない。

 俺が狼狽うろたえていると

 「まぁまぁ…少し落ち着いてください」

 「ん?神谷か、何故ここにいる。アレ?呼んだっけ?」

 扱いひでぇ…と思ったが研究者仲間でときわ機士学校発足式典に来た時にスカウトされた博士とは同期らしい


「工房長!リンドブルムの調整が理解できません!…まさか彼が?」


 俺達が到着した事により、特殊技巧部隊の地下整備場は騒がしくなったのだった。



読んでいただきありがとうございます。

言い訳としてリアルが異常に忙しく…申し訳ありません

今後ともよろしくお願いします

m(_ _)m

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