44 天国と地獄
勝利と御褒美?
夢の中で
原因発覚
飛び入り参加した決闘が終わりホッとしたのもつかの間、受け取ったデータを見てニヤニヤが止まらない
《飛行推進装置ユニット製作許可証》
やっと念願が叶い、竜が飛べるようになる。神谷博士は本当なら半年過ぎるまで許可証発行を待とうと思っていたらしいけど、今日の決闘と変に待たせ過ぎて『自主性』が失われてはギアの進歩を止めてしまう損失と考え許可してくれたらしい。
そして、もう一つ実験に参加し気になっていた許可証が添付されていた
《武器の空間転移ユニットの取付許可証》
これを見た時は冷や汗が止まらなかった。あの技術が完成された事によって世界に衝撃が走る事は間違いないだろうから。
しかし空間に干渉できる物の副作用とか無いんだろうか?とか心配したが好奇心には勝てなかった。
そしてこの時、体に軽微な不調が襲っていたのだが興奮しすぎて分かっていなかった。
午後、ガレージで点検をしていると1年次官全員に配属地確定の通達メールが届いていた。
通達
下記地方基地への配属指令
島根県北浦基地
来栖 蒼騎
玖条 このは
以下の配属を任命する
以上
まぁ、なんとなくの場所はわかるけど行った事が無い場所は調べるよね
「…もろに海じゃん」
検索した写真は透き通る綺麗な海が印象的である
そして、この基地の特徴がエリート機士が一番多く学生にとっては憧れで配属場所としては厳しめと言えるかもしれない
「マジか…」
予想外にレベルが高い場所への研修配属は多分リンドブルムのせいな気がする
「海が綺麗な所で良かったですね」
このはが後ろからディスプレイを覗き込んでの発言だった。
「空だったら大喜びだったんだろうけどね…」
…まさかな…と思いディスプレイで通信会議を二人に送ると
『『俺(僕)達も同じ場所だよ!』』
まさかの同じ場所に配属だった。
突然このはが顔を覗き込んできた
「ん~?蒼騎さん?少しお顔が赤いですが大丈夫ですか?」
この時、体調不良だと気付いた
「あぁ~…そう言えば興奮しすぎて分かっていなかったけど体調悪いかもしれない」
全身が気怠く感じ、動くのが辛い…ナノマシン仕事しろ…
「神谷博士に相談した方がよろしいでしょうか?」
「うん、お願いできるかな?ごめん…ちょっと横になるから…」
体調不良は気が付いてしまうと一気に体力的にも精神的にも持っていかれてしまう。
骨折してても気付かないと動けてしまうように…
そう言いつつ、ふらついてガレージ内の簡易ベットで微睡み意識が落ちた。
………
「玖条君が連絡をくれるとは珍しいね?どうしたんだい?」
「突然の連絡失礼致します。来栖の事で御相談があります。」
私は少し緊張している…いや内心焦っている。蒼騎さんが倒れてしまったから…
蒼騎さんが倒れてしまった事の経緯を出来るだけ早急かつ簡潔に伝えた。
「あぁ~…思ってたより早かったけど、ちょっと遅かったか…」
「蒼騎さんは大丈夫なんですか!?原因に心当りがあるんですか!?」
思わず身を乗り出す。心配で礼儀作法が吹き飛んでしまうくらいの精神状態。
「あはは…そんなに心配しなくて良いよ、珍しいんだけど『第二次変成』が起きたみたいでね。命に別状はないよ」
「第二次…変成?」
まだ明かされていない極秘情報がまだまだたくさんあるのかもしれない…
「来栖君は、そこで寝込んでいたりするかい?」
「はい…今後ろで眠っていて…」
寝ている方を見ながら言い、ディスプレイへ向きを戻すと神谷博士は顎に手を当て考えると
「今から検診に行くよ」
この言葉は心強く、少しだけホッと出来た。
5分後、神谷博士と紫苑さんが一緒に来た。
「蒼騎君が第二次変成してるんだって?」
「そう…みたいです。何時もと違うので心配で…」
そんな憔悴している私を見兼ねていられないのか優しく頭を撫でてくれる
「大丈夫よ、私も経験したけど変化と言えば髪がこんな風になったのと…もう一つは人によるからね」
髪が銀色になったのは第二次変成が原因だったと知った。そして後半部分が特に気になった。
「もう一つ…とは…?」
神谷博士は苦笑いをして、紫苑さんはイタズラ好きな子供っぽい笑顔で教えてくれた。
「これよ…」
腕を伸ばし変化が起きた
…………
俺は夢を見ている。
何故夢と理解できているかと言うと…
「まぁ…この出来事が連続する可能性は今は無いし」
銀色の天使『シルバーウィッチ』に出会った時の夢だった。
御丁寧に俺の目の前に子供が二人いる
『俺』と『このは』だ
その時の光景を見回すなんてした事はなかったけど…
「…ん?なんか周りの火が…避けてる気がするような?」
色々と思い出すと、あの時にあまり『怖い』と言う思いはあまり無かった事に気がついた。焔を凝らして見てみる
二つの意味で眼が合った。
「えっ!?」
気が付くと周辺の状況は一変する
赤やオレンジだった火の手が蒼焔へと変化した。
勿論、子供の時と違う事は理解しているけれど自然に口から言葉が零れた。
「リンド…ブルム…?」
言葉を皮切りに蒼焔が一点に凝縮するように集まっていき形が作られていく。
足から5本の爪のある立派な指、太めの尻尾が現れていく、太過ぎない胴体、少し小振りの腕と手が現れる。
蒼焔が長い首に凝縮されて次第に頭が作られていくのが分かる。
ヤモリのような頭部に角が生える
まさしく『竜』と言う存在
竜は3メートル程の大きさだろうか?まるで映画の1《ワン》シーン
だが恐怖は感じず、無意識に手を伸ばしていた。竜も頭を垂れ、鼻の部分が手と触れ光った瞬間に元の蒼焔へと霧散した。
そこで夢から覚めた。
真っ暗な中で横になっている、ゆっくり目を開けるとガレージではなかった。
「…どこだ…ここ?」
全く見覚えの無い一室で心電図が繋がっていた。
「おはよう、蒼騎」
「…姉さん?」
斜め後ろから声が聞こえてきたので顔を向けてみるけれど…いない
「あぁ!ごめんね、オムニスから通信してるから近くにいるけどソコにはいないよ」
いない理由は納得したので向きを直す。
「熱っぽかったから寝たまでは覚えてるんだけど、何でここに?」
「蒼騎はナノマシンを覚えてるわよね?」
あっ…そう言えば殆ど病気になる事はないって話だったな…となると
「まさか…変成?何変化するの?」
「そこはボクが説明しよ~!」
やっと出てきた
「このタイミングに現れると若干の恐怖を感じる…」
「アッハッハッハッハ、間違ってないんだけどね~」
この言葉に表情が引きつる
「蒼騎さん…」
このはが傍に居てくれると分かると無意識にでもホッと出来た。
「このは…二人を呼んでくれてありがとう…で多分この場所って隔離棟ですか?」
「流石蒼騎君、鋭いね~、ココは第二次変成者の為だけにある部屋だよ!」
やっぱりか…
何となく分かるだけでも多少の不安は取れるものだ。ガレージで寝てたら知らない天井の場所で目を覚ました時の不安は言葉にならないだろう
"想定していなければ"だが
「第二次変成?って何『が』変わるんですか」
俺の言葉で神谷博士の目がスッと細められゾクッとするほど冷静なものに変わる
これが本来のこの人なのだろう、伊達に博士と言われているわけではないのだ。
「そこがこれから話そうとしている本題だよ」
普段と違う声音を聞いて、覚悟を決めた
読んでいただきましてありがとうございます。
スローペースですがコメントや誤字脱字等々…色々と書き込んでいただけると嬉しいです。
改めまして、最後まで読んでいただきまして本当にありがとうございます。