27 絆
諦めろよ
暴走
居場所
「辞退する権利は…」
「ありません、だいたい…この時期にカスタマイズがあの段階まで進んでいるのも前例がありません」
教官に辞退を申し出たけど…やっぱり断られた。神谷博士と同じ事も言われた
「玖条さんを選出使用と思ったら神谷博士が『来栖君を出すべきだよ!』と仰っていたからよ」
神谷博士が原因か!
…くっそぉ~
「それにね…他の人を選ぶと来栖君の『オコボレ』を貰ったと思わせちゃう可能性があるわ、貴方のギアが毎日変わっているのをクラスメイトが見ているし…」
…これは何も言えない、確かにカスタマイズしまくって動きが段違いに良くなったし
「すみませんでした…そこまで頭が回りませんでした…」
「分かってくれたのね!正直動かないで負けたら逆恨みされるわよ?」
この言葉を予想していた教官にしてやられた
「はぁ~…」
教官の言葉を思い出していた
「大丈夫…ですか?」
このはが心配してくれてる
「このは…二人で逃げよう、駆け落ちだ」
「はい、どこまでも付き添っていきますよ。だから選抜の実習戦闘をがんばりましょう?」
くっ…このはが逃げてくれない…
「諦めろよ…蒼騎」
呆れてる空
「蒼騎の悪い癖が…」
目頭をつかむ陸
「ソウキ!がんばれ」
ミカエル…
「このは?駆け落ちしないの?」
若干ズレた事を言う雪
「チャンスなのにね?」
乗っかる千花
最後の一撃
「「「「「諦めろ」」」」」
腹を括った
ガレージに行ってギアの状態を見た
換装は完了、唯一やっていない所
胸部の背面のみ
理由は…泣きそうになるから言わない
中距離銃の武器アームを付けておく
後は刀と長距離ライフルで全部練習武器だ、実習戦闘は久しぶりだなぁ~
午後から開始なのは変わらなかった
「行きますか…」
移送され設置された
5、4、3、2、1、0
スタート
少し歩いて屈む
スナイパーライフルを構える
サイト…サーチ…あれ?いない?
いや、倒れてる
1…2…3…4…
背後に気配を感じたが一瞬此方の方が速い、バックアームでバースト
後ろのヤツは吹っ飛んだ
「コイツ速ぇ~…」
4機のギアを倒して音がしなかったから、正直感心した
だが次の瞬間飛び退いた
蹴りを放ってきた
蹴りは反則だ、衝撃吸収が不可能だから…通信で注意する
「それ反則だぞ」
「うるせぇ!いつも俺の邪魔しやがって!」
真っ黒なギア『ケルベロス』だった
よくも…まぁ~コイツとかち合うなぁ
「邪魔って…試合だしな」
「侮辱しやがって!」
はぁ…話にならん…
次の瞬間通信が入った
「無力化しなさい」
「コイツ多分セーフティ切ってますよ?」
セーフティは塗料に反応して動かなくなるシステム、俺が撃ったバーストで立ち上がってきたし
「…武器はあるか?」
「ガレージにならあります、パートナーに届けてもらえば…直ぐにでも」
「許可する、無力化せよ」
訓練で上級生は遠征中らしく、教官のギアも整備中とのこと
この間にも『ケルベロス』は襲ってくる、キレすぎてて動きが単純で避けやすいけど…危ない
恐らく俺に振ってる剣は練習用じゃない
連絡を入れる
「このは」
「聞いていました、刀ですね。今すぐ届けます」
途中から…繋いでおいた
シアターモニターで中継されてるだろうし
「避けんじゃねぇぇぇえ!!」
んなバカな…
「避けなかったら怪我しちゃうじゃん」
ブチキレておられるようだ
銃武器はカスタマイズの項目にはないから撃たれる心配はないけど…
「オルニウム化の武器で切られたらヤバイよな…」
「絶対に当たらないで」
教官が無線で言うが…キツいですよ?
「今着きました!位置を送ります」
「今から行く」
銃を撃ちまくりで全力で逃走させてもらう、なんであんなに恨まれてるのか分からん…
全速力で飛ぶと『シルフィード』が片膝を突き刀を掲げた
「ありがとう」
「少し遅くなってしまいました、無理しないでくださいね」
このはには感謝をしてもしきれない
刀を受け取る
思った通りの馴染み具合、最高の刀として出来上がったようだ
その時、漆黒のケルベロスが現れた
「貴様ぁぁぁあ!」
向かってくる狂犬
「無力化するように、殺しは許可しません」
教官が念を押す
「了解です」
学生に殺しはキツいだろうし最悪、精神が壊れるだろう
俺は刀を構えて走り出す
リンドブルムは伊達にオルニウム化していない、アイツとは出力からして違う
剣の振りがメチャクチャだが剣と打ち合わせる、次の瞬間
ズルッ…ゴトンッ
敵の剣先が切り落とされた
「この刀…ヤバイな…」
業物過ぎんだろ!下手にギアに当てられねぇわ!
剣が無くなったのに向かってくる
「お前がぁぁぁああぁあ!!」
俺だったら剣を切られたら崩れ落ちるぞ…
「お前が悪いんだからな」
一応宣言はしておいてやる
すれ違い様に首を落とし、背中を追撃して両足を切る
倒れたギアの胸部を踏みつけ腕を落とす
スピーカーに切り替えて言ってやる
「まだやんの?」
死刑宣告
普段の練習用じゃない、本当の武器。完全に切り裂かれたギアの残骸
切り裂いた刀を持つギアから突き刺さる言葉
「くっ…ウワァァ…」
…いやいや…泣くなよ…俺がイジメっこみたいじゃん…
踏むのを止めて収納場所のリフトに乗って帰った
ケルベロスに乗ってたヤツは独房行き
殺人未遂だし
俺はやり過ぎと注意を受けた
そしてクラスメイトの見る目が変わった
「スッゲ~!」
「頼りになるね」
「味方で良かった~…」
訂正…変わってなかった
恐怖とか、戦慄、萎縮されたりすると思ってたから唖然とした
「蒼騎さんが良い人だと皆が分かってるんですよ」
このはの暖かい言葉に思わず抱き付いてしまった…
内心、恐怖してた…震えてる
皆も分かってた…恐怖してた
だけど俺が一番前にいたから優しくしてくれる皆
少しだけ待ってくれた
「ヒューヒューあついね~」
冷やかされたが…ホッとしてしまった
自分の居場所が出来たみたいで嬉しかった
「蒼騎…こ・わ・い~」
「鬼神のような戦いっぷり」
「そうね、敵にしたくないわ」
「蒼騎君は守ってくれるよねぇ~」
俺をからかい始める親友達
このはから離れると
「俺の味方でいてくれればな」
軽口を返した
読んでいただきありがとうございました