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白の鬼物語  作者: 枯らす衝撃
白玉との出会い
1/10

始まりは幕開け

どんな時も、いつも君はそばにいたね。


どんな時も、いつも君は笑ってくれたね。


どんな時も、いつも君は僕を守ってくれたね。

だけど僕は君を守れなかったね。


今度こそ、君を守る…永遠に君を…


《八郎!死んではならぬ…》


どこからか声が聞こえる…遠く暗い穴から聞こえてくる様だ。こんどは違う声が…


《お前だけは斬りたくなかったぞ。八。…嫌、八鬼よ》


またさっきの声だ…


《⌘《しらたま記号》起きないと遅刻するぞよボケ助》


っと、優しく起こす私は二足歩行ではなく4足歩行の猫である。


《⁑《はちろう記号》んぁ〜寝むい…っ?白玉?かぁ〜》


背を向けて寝返り、そして二度寝をするボケ助は残念ながら織田信長でも徳川家康でも…ない。津鏡八郎つかがみはちろうという哀れな侍である。


《⌘起きろと言っておるのがわからぬのか?ボケ助》


顔を優しく撫でてやる私はなんて優しい猫なのだろう。


《⁑ん?いでっ!いででぇー!!白玉?頼む、手を…動かさないでくれ。イヤ。爪。つめを》


なんて愚かな人間なのだろうか。


《⌘猫を相手に頼み事とは!…私は、招き猫では……無い!》


白玉の美しくしなやかな前足が剣豪顔負けの太刀を魅せるのであった。


《⁑いってえなぁ!オイ白玉!毎朝毎朝、人の顔をひっかくんじゃねーよ!》


白玉は雪の様に真っ白な身体を一升餅の様に丸めて切れ長で美しい目をゆっくり閉じた。


《⁑白玉!なんだ?その態度はー!》


白玉は目を閉じたまま完全に無視している様に八郎には思えた。


《⁑本当、イタズラさえしなけりゃ綺麗で可愛い猫なのになぁ。お前!》


突然、白玉がスラリと立ち上がり八郎には目も合わさず引戸の隙間に前足を入れた。ガラっと音をたてて10cmほど戸が開いた。


《八郎!!》


突然の大声が8畳間を震わす


《⁑親父!様…》


戸の隙間から覗く形相は織田信長も黙る実の父、津鏡国正である。津鏡国正は津鏡一刀流師範代であり、我が家では徳川家康より偉いお方である。


《お前と言う奴は!神聖な稽古の時間をなんだと思っているのだ!?だいたいなお前はな……、、、》


稽古よりも大変な説法の時間が始まると親父様の足元で白玉がヒョコンと座り私を見つめながら欠伸をした。そして、前足で顔を洗い始めた。八郎はこの時に思った。白玉は今、完全に俺を馬鹿にしてると。


《⌘はぁ〜ぁ。本当、寝ボ助ね。毎朝毎朝起こしても、この有様では…ホント、馬鹿助ね…》


白玉は美しく長い尻尾を国正の足に摺り合わせながら甘い声を出した。怒り狂う国正も思わず足元に目を落とした。白玉は国正の目を金色と緑が輝く宝石の様な瞳で見つめて、優しい声で鳴いて見せた。


《お。そうかそうかご飯だな?すぐに支度をしてやろう。八郎!とにかく分かったな!稽古場に行って先に練習を始ていなさい。》


八郎は地獄の説法よりも日の当たる稽古が好きだったので一目散に部屋を飛び出して行く。一瞬の事だが国正と一緒に木造の廊下を歩く白玉が振り返り、目が合った。そして八郎は感じた、


《⁑まさか…助けられたのか?俺…?。嫌、そんな事あるわけ無いか。》


時々感じる白玉の姉御肌は八郎にとって摩訶不思議なものであった。

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