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エリシアはジンと数日過ごす間に、彼は魔術ではなく魔法を使っていることに気がついた。

魔術は詠唱が必要なのに、彼が詠唱を行っているところを目にしたことがない。

ならば無詠唱で発動できる魔法を使用しているのだろうと検討をつけた。

ちなみに、魔法を使うことは魔術を使うことよりも格段に難しい。


「ジン様は魔法が使えるのですね。わたくし、魔法を使っている人を見たのは初めてです」


「そうか?だがエリシア、君も魔法を使えるはずだぞ」


「えっ?」


エリシアは驚いた。自分は魔法どころか、魔術すらほとんど使えないのに。


「ジン様、わたくしは魔術すらほとんど使えませんよ?」


「君の場合むしろ魔術の方が扱いづらいだろう。あれは魔力を型にはめるようにして使う。それほどの魔力量なら上手く合わせられないのも納得がいく」


初めて聞く魔術の仕組みにエリシアはポカンとしてしまう。

ずっと、魔術の扱いに長けている者が魔法も使えると思っていた。


「それに君は魔法を扱う素質を生まれながらにして持っている。少し訓練すれば簡単に扱えるようになるだろう」


ジンの言う素質とは、この髪と瞳の色のことだろうか?


「ジン様、その素質とはわたくしの髪と目の色のことですか?」


「ああ。その色を持つものは必ず高い魔力量と魔法を扱う素質を持って生まれる。まあ、その者が災いをもたらすというのは嘘だがな」


今までエリシアは自分のこの色については根も葉もない誹謗中傷だと思っていた。

まさか真実が含まれていたとは。


「わたくし、魔法使ってみたいです!どうすれば使えるようになりますか?」


「ふむ。君なら補助の魔道具さえあれば十分だろう。そうだな、今日は君の魔道具を作りに行こうか」


「はい!」


エリシアにとって初めてのお出かけであり、さらに魔法も使えるようになるという。

エリシアは出かけるのがとても楽しみだった。





ジンの話によるとどうやら、街に彼の師匠が住んでいて、その人にエリシアの魔道具を作ってもらうらしい。

だがその前に寄っていく場所があると言って、大通りから少し外れたところにある薬屋に連れてこられた。


「ベアトリスいるか」


「はいはい~?あら、ジンじゃないの~。いらっしゃい~」


店に入って声をかけると、奥からおっとりとした雰囲気の女性が出てきた。なんだか独特な喋り方をしている。


「それと、小さなお客さんね。この子はだぁれ?ジンが攫って来たのかしら~?」


「ベアトリス、この子はエリシア。攫って来てなんかいないから私を犯罪者扱いするのはやめろ。エリシア、こいつはベアトリス。私の友人だ」


「初めまして。エリシアと申し……むぐっ」


エリシアは言葉の途中でベアトリスにきつく抱きしめられてしまい、最後まで言えなかった。


「まぁまぁ、可愛い子ねぇ~!わたしはベアトリスよ。よろしくね~」


「ベアトリス、それくらいにしておけ。エリシアが窒息する」


「あらぁ、ごめんなさいね~」


ベアトリスはくすくすと笑いながら、やっとエリシアを解放してくれた。

そして今度は優しく抱きしめ、頭を撫でてくる。

ベアトリスからは薬草の匂いと、仄かに甘い花の香りがした。


「君は相変わらず子ども好きだな。ほら、これが頼まれてた薬草だ」


「子どもは天使よ、異論は認めないわ。あぁ、ありがとね~助かったわ~」


ベアトリスはこの間もずっとエリシアのことを抱きしめ続けていた。

彼女はエリシアのことを気味悪いと思わないのだろうか?


「あ、の……ベアトリスさん」


「ん~?なぁに~?」


「わたくしのこと、気味悪いと思わないのですか?」


「ええっ、どうして?こんなに可愛いエリシアちゃんが気味悪いんだったら、ジンなんかどうなっちゃうのよ~。見ただけでおぞましくて気絶しちゃうわよ~?」


ベアトリスは心底驚いたように目を丸くしている。

エリシアはなんと言ったらよいのかわからず、己の肩から流れ落ちる髪にそっと触れた。


「もしかして、髪と瞳の色を気にしているのかしら?わたしはエリシアちゃんの色、とても綺麗だと思うわ。もし変なことを言う輩がいたらここへ連れていらっしゃい。お姉さんがきっちりわからせてあげるから」


打って変わって真面目な顔をしたベアトリスはそう言い、エリシアの長い黒髪を優しく梳いた。

ジンもエリシアの頭をぽんぽんと撫でている。


自分に優しくしてくれる2人にエリシアは戸惑ったが、心の奥がふんわりと温まるような、そんな心地がした。


「そろそろ行くか」


「ええ~、もう行っちゃうの~?もっとゆっくりしていけばいいのに~」


「これから師匠のところに行ってエリシアの魔法補助の魔道具を作ってもらうつもりだからな」


「あらぁ、そうだったのね~。じゃあ師匠によろしく言っといてね~」


ベアトリスはジンにそう言うと、今度はエリシアの方を向いてにっこりと微笑んだ。


「エリシアちゃん。今度は時間がある時にゆっくりいらっしゃい。とっておきのお菓子があるから一緒に食べてお茶でも飲んでお話ししましょ~」


「はい、ベアトリスさん。また来ます」


そう言ってエリシアはぺこりと頭を下げた。

それを見たベアトリスは「可愛い~~!」と叫んで悶ている。

そんなベアトリスにちょっと呆れた目を向けたジンは小さく溜息をつき、「行くぞ」と言ってエリシアの手を取って店から出ようと歩き出した。


手を引かれて歩きながらベアトリスの方を振り向くと、彼女は笑顔で手をぶんぶん振っている。

エリシアは小さく笑って手を振り返し、ジンに続いて店から出た。




ベアトリスさんは見た目はおっとりしていても中身はおっとりとはかけ離れています。いろいろ激しい人です。それをなんとか抑えようとしてあんな口調になっています(笑)




ここまで読んでいただきありがとうございました。

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