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少し短めかもしれません。

「おはよう」


あたたかい温もりの中で微睡んでいたら声が聞こえた。

エリシアは声がした方に顔をむけてーーー盛大に固まってしまった。


なぜ自分の目の前に知らない男性の顔があるのか。


混乱する頭で今までのことをなんとか思い出そうとする。


自分は森に来ていて、大きな狼に会って。

確か、狼と一緒に眠ったはずである。

もしかしてこの人は昨日の狼なのだろうか。


疑問が口から出ていたのか、目の前の男性は何かに気づいたようにぽつりと呟いた。


「そういえば昨日はこちらの姿は見せていなかったな」


ではやはり昨日の狼とこの男性は同一人物なのだ。

確かに、この男性の銀の髪と金の瞳は、狼の毛並みと瞳の色と同じだった。


「昨日の狼さんでしたのね……あの、お名前を伺ってもよろしいですか?」


「ああ。私はジン。一応この森の主だ」


予想はしていたが、やはり森の主だったのか。


エリシアが一人納得していると、ジンは起き上がってベッドから降り、「朝食の準備をしてくる」と言って部屋から出て行った。


エリシアも慌てて身なりを簡単に整えてからジンの後を追って部屋から出た。






「ベッドと朝食、ありがとうございました。とても助かりましたわ」


食事を終え一段落ついたところで、エリシアはそう言いって深々と頭を下げると家から出て行こうとした。


「待て。外へ出てどうするつもりだ?」


「……迎えが来るのを待ちますわ」


エリシアはおそらく、迎えなど来ないことをわかってて言っているのだろう。


ジンは何も言わず、エリシアと共に外へ出た。



狼の姿になったジンは、祭壇のそばに腰をおろしたエリシアに寄り添うように自分も座った。

お互い口を開くことなく、静かに時間が過ぎてゆく。


太陽が真上に登っても、誰も来なかった。


「……わかっていましたわ」


エリシアはぽつりと呟いた。


「ここには王族しか入れないのに、わたくし以外に誰かが来ることなんて……」


空っぽの表情でどこか遠くを見つめるエリシア。

彼女はもう、どうすればいいのかわからないのだろう。


『エリシア』


呼びかけに振り向くが、その目はやはりどこか遠くを見つめている。


『昨日君を見た時から決めていた。一緒に暮らすぞ、エリシア』


今度はちゃんとこちらを見たエリシアの顔が歪み、彼女は声を上げて泣き出した。







気づいたらエリシアは家の中に戻っていて、ジンの膝の上に座らせられて頭を撫でられ慰められていた。

自分がいつどうやって戻ってきたのか覚えていない。


「落ち着いたか」


「は、はい。突然泣き出してしまって申しわけありませんでしたわ」


ジンの問いかけに慌てて答えて謝罪をしたが、泣き止めば今度はなぜ泣いてしまったのか全くわからず頭の中は混乱して、落ち着いたとは到底言えなかった。


しかしジンは別のことが気になったのか、少し困った顔をして口を開いた。


「エリシア、君のその話し方は本来の話し方か?」


「本来…?」


「なんとなく、ぎこちなく感じる。私と話すときは取り繕わなくて良いぞ」


そう言われてエリシアは納得した。

確かにこの話し方はエリシア本来のものでなく、王女らしくあろうと思い姉の真似をしていたものだった。


エリシアが頷くと、ジンは嬉しいそうに目を細めてもう一度エリシアの頭を撫でた。


ぶっきらぼうな口調の割りに表情豊かな人なんだな、と少し不思議に思ったエリシアだった。




なんとかエリシアを子どもに戻そうとするジン様でした。




ここまで読んでいただきありがとうございました。

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