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自作ダンジョンで最終ボスやってます!【動く挿絵付き】  作者: ITSUKI
第一章:ダンジョンできました
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第06話:ここにダンジョンを作ろう

 シェリルの「ダンジョン作る」発言でソラが最初に考えたのは、

 ――御主人様がダンジョンの作り方など知っているはずがない。

 しかしシェリルには万にひとつがある。そう思ったソラは念のため確認する。


「それで、御主人様。【ダンジョン術】はどうするんです?」

「何それ?」可愛く首をかしげるシェリル。

「それじゃ、ダンジョンコアはどうしますかねぇ」

「いらないよ、そんなの」と目を丸くして、さも当然そうに答える。


「……ダンジョンを作るにはダンジョンコアに魔力を溜めて――」

「ふーん」もう飽きてきたようだ。

「ダンジョン術を使って、通路と部屋と魔物と罠と宝箱を作るんですが……」

「へー、そうなの」話を聞いてないかもしれない。


「術もコアも神のいただきに行かないと手に入らないのです」

「ソラはなんでも知ってるね」にへっと笑顔で。

「アタシの空間転移で神の頂には行けますが、魔族だと絶対に下賜されませんね」

「じゃあ、やっぱりいらない」一応聞いていたようだ。


「……」ピクピク。


「ソラ、ダンジョン作るのに何処か良い場所に連れて行って」


 説明に全く興味のない態度のシェリルに、ソラは片眉をピクピクさせている。

 さっきまで落ち込んでいたから気を遣っていたのに、この変わりよう。

 ――御主人様はこういう方だった……。

 ソラは改めてシェリルの気まぐれな性格を思い知らされた。


 更に目障りなのは、朝早かったとはいえ話しの途中で寝てしまったシロとクロ。

 ――御主人様が元気になった途端に気を抜きすぎだ。

 だが起きていても何の役にも立たないのだから放っておくしかない。


 取りあえずはシェリルの要求に応えるべく行動を始める。

 まずは広げていたテーブルと椅子の収納。

 寝ている二体は、そのままの姿で空間魔法で空中に固定する。


 それから……少し考えて、思い当たる場所に全員を連れて転移する。


「ここはどうですか。あの町の向こうには三十二階層のダンジョンがあって――」

「ほあー、良い景色だねぇ」

「町にはダンジョン探索組合があるから、短期間で人が来るようになりますよ」

「でも、それって今のダンジョンに迷惑だよね」


「そこは先日行って雇用を断られたダンジョンです」

「それでもねぇ」

「けれどダンジョン探索組合がある町には必ずダンジョンがあるのですから……」

「もっとね、こう街と一緒に発展していくのが良いなぁ……」


「……」わがままな……、とソラは半目で自分のあるじを見る。


 それでも従者人形として忠実に働くソラ。

 シェリルの要望に合う場所を記憶から呼び起こし、再び空間転移する。

 こんなこともあろうかと、世界中を見て回っていたのが役に立っていた。

 転移した場所は小高い丘の上。すぐ近くに壁に囲まれた大きな町が見える。


「この町はどうですか。近くにダンジョンはないけど魔物の多い森があって――」

「ふむふむ」唇を突き出して頷くシェリル。

「大きな魔物ハンター組合があるので、ダンジョン探索業務も兼務させれば……」

「景色もいいし、ここにしよう!」とあっさりと決めてしまう。


 ――まぁ、気に入ってもらえたならそれでいいか。

 とソラは考えて、一番気がかりだったことを聞いてみる。


「それで、どうやってダンジョンを作るんですか」

「ソラ、収納空間からスコップ出して、十本。持ってるでしょ」

「持ってますけど……、えっ、もしかして手掘りですか?」

「あたしの鋼糸を使うの! ――スコップを結んでガシッガシッて」


 シェリルの扱う武器は鋼糸。この世界でもマイナーだ。


 以前ソラが理由を聞いたら「あたしは人形遣いだから」だそうだ。

 何処から仕入れた知識か知らないが「人形遣いなら武器は鋼糸だよね」と。

 本当にそれだけの理由らしい。


 それを聞いてソラは最初唖然とした。なぜ人形遣いなのだと。

 ――御主人様ならもっとすごい肩書き名乗れるじゃないですか!

 多分スキル【武芸百般】くらいはあるだろう。

 スキル【人形遣い】なんて数あるスキルのひとつでしかないだろう。

 逆に【鋼糸術】なんてスキル持っていないかもしれないのに。


 そこまで考えてソラは気がつく。

 自分たち人形が、シェリルの心の中でどれだけの大きさを占めているのかを。

 ――アタシたちへの思いは、自分を人形遣いと心に決めるほどなんだ……。

 その答えに至った当時のソラは、胸にとても温かいモノを感じたのだった。


 ふと、そんな昔の話を思い出し、少し顔を赤くするソラ。



 ◇ ◆ ◇


 

 さて、ソラが勝手にホンワカ話にしているが、本当の理由は――、


 かつてのダンジョンでシェリルが生まれたばかりの頃。


「得意武器を決めたい!」


 シェリルから相談を受けた当時九十階層のボスを務めていた竜人。

 万能な少女に似合いの武器と考え、悩んだ末にこじつけ気味に提案する。


「シェリル様、人形を配下にしたのですか」

「うん! シロ、クロ、ソラって名前!」


「以前、勇者から人形遣いの定番の武器は『鋼糸』だと聞いた事があります――」

 シェリルの返事を待たずに竜人は言葉を続け、

「勇者も何やら異世界人から聞いた話だとか……」と話の出所を曖昧にする。


「鋼糸?」知らない武器を聞いて首をひねるシェリル。


「強靭な糸です。使いこなせば応用範囲が広く攻守に隙がないのです」

「ふーん」

「使用する者の魔力に応じて強度が増すので、シェリル様にお似合いかと」

「おぉー、そうなんだぁ」


「モノは倉庫にある筈です……、そういえばスキル【鋼糸術】はお持ちですか」

「そんなのないよ」とシェリルが答える。……やはり持っていなかったようだ。

「これは失敬しました。他の武器を考えましょう」

「いいよ、倉庫で余ってるのならそれにする」


 という感じで、シェリルも相談相手の竜人もかなり適当だったのである。

 従って正解は「倉庫で余っていたから」



 ◇ ◆ ◇



 それはさておき、

 ソラはシェリルの無茶なダンジョン作成方法に助言する。


「それならアタシの転移魔法か、クロの重力魔法を使った方が……」

「ダメダメ! 掘るのは自分の手じゃなきゃ!」

「鋼糸は手じゃないってさっき自分で……」

「それと掘った土はクロの重力魔法で圧縮して、ソラが転移魔法で外に運んでね」


 ――結局魔法は必要なんだ……。

 とソラは考えたが、それを言っても話が長くなるだけだ。

「はいはい……」その思いをおくびにも出さずに賛意を示す。


 それから名前の挙がった同僚――隣で口を開けて寝ている――を起こす。


「ほらクロ起きて!」

「決まったぁ?」小さな手で目をこすりながらクロが起きる。

「決まったわよ」とソラが返事をする。

「あと、内側の壁と床もクロの重力魔法で締め固めてもらって――」とシェリル。


 目を覚ましたクロに仕事が追加される。

 ちなみにクロの持つスキルは【闇魔法】と【重力魔法】

 呪いや罠に関係する術は闇魔法、圧縮や浮遊などは重力魔法に属する。


「あと部屋のひとつに回復の泉を作るから、それはシロに頼むね」

「ほらシロも起きなさいって」

「むにゃむにゃ……」寝ぼけているシロ。


 シロの持つスキルは【光魔法】と【神聖魔法】

 呪いの解除――解呪――や回復に関係する術は神聖魔法に属する。


「あっ、ソラは出来上がるまで人間にばれないように空間結界をお願いね」

「はいはい、わかりました」


 なんだかんだで段取りを決めたシェリル。

 丘のふもとに降りて、ダンジョン入口にする場所をさっさと決める。


 その周辺に結界を張るソラ。

 収納空間から剣先スコップを十本取り出しシェリルに渡す。

 スコップは見えない糸に繋がれて、別々の意志を持つように宙を舞い始める。


 準備完了。――シェリルが作業開始を高らかに宣言する。


「じゃあ、ガシッガシッて行くよぉ!」


挿絵(By みてみん)


 第六話お読みいただき、ありがとうございました。


※11月4日 後書き欄を修正


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