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自作ダンジョンで最終ボスやってます!【動く挿絵付き】  作者: ITSUKI
第一章:ダンジョンできました
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第01話:チート能力者がやってきた(1)

挿絵(By みてみん)


 この世界にはダンジョンがある。


 それは人間に探索されるのを目的とした巨大な地下建造物。

 複数の階層で構成されていて、内部には魔物が徘徊している。


 魔物を倒すとその肉体は光に還り、あとには魔力の塊「魔石」だけが残る。

 階層ごとにボス魔物がいて、そいつを倒すと特別なお宝が手に入ったりもする。


 下層に行くほど魔物は強くなる。

 そして、手に入る魔石もお宝も上等になっていく。

 魔石とお宝そしてスリルと名声、それらを求めてやって来る人間を歓迎する。


 そんなダンジョンが普通にある世界でのお話。



 ◇ ◆ ◇



「ケント……、ほんとにこのダンジョンに巨大転移魔法石があるの?」

「ああ、間違いないよ。ダンジョン探索組合の職員がハッキリ言っていたんだ」

「でも、買った地図だと一階層しか無くて、部屋数が全部で五部屋よ」

「エレン、それなら簡単でいいじゃないか」

「五部屋の内ひとつは回復の泉がある安全地帯だし、どう見ても罠じゃないの?」


 あるダンジョンを三人の探索者がお宝目当てに訪れていた。

 今の場所は始まりの通路。

 ダンジョン入口からまだそうは離れていない。

 彼らの視界を照らしているのは、壁に埋め込まれたほのかに光る石。

 内側の壁は綺麗にならされて、足元は歩きやすく整地されている。


「問題ないさ。俺が持っている無限に近い魔力と、それを使った身体強化と――」

「それに膨大な数のスキルだよね!」

「カナン、俺のセリフを奪うなよ」

「ケントなんか敵のスキルを奪っちゃうじゃない」

「……まぁ、そうだな」


 その探索者の三人は男一人に女二人の組み合わせ。

 全員が装備を整えて通路の中を進んでいる。


 ケントと呼ばれた男性が意気揚々と先頭を歩く。

 その斜め後ろに、寄り添うように元気に歩いているのがカナンと呼ばれた女性。

 楽しそうに話しかけるカナンの言葉にケントの態度は素っ気ない。

 そしてエレンと呼ばれた女性。

 二人の後ろを一歩引くように静かに歩いている。


「ケントのスキル強奪はあくどい技だよね」

「俺は悪い奴からしか奪わないからな。そこは間違えるなよ? カナン」

「わかってるって」


 ケントは【スキル強奪】という特異な技能スキルを持っている。

 他人の持つスキルを奪い自分のモノにし、奪われた者はそのスキルを失う。

 無限の強さを得る可能性を持つそのスキルは、人が持つには大きすぎる能力ちから

 この世界には彼のような、常識外れの能力を会得している人種がいる。


 それが異世界人である。


 異世界から転生もしくは召喚された者たち。

 その能力をチート能力と名付け、神から与えられたとうそぶく。

 そして自らをチート能力者と呼ぶ。

 良きにつけ悪しきにつけ、強大な能力で他者の運命を変えていく。


 このケントも転生者、そういった能力者のひとりだった。


「エレン、俺がいるんだから心配しなくて大丈夫だって。さっさと行こうよ」


 にやけた顔でエレンに話しかけるケント。

 彼はカナンとエレンのどちらが相手かで、あからさまに態度を変えている。


「だから油断しないで慎重に進まないとって言ってるじゃない」


 しかしその違いに気づかないエレン。

 彼の思いなど気にも留めずに、緊張感の足りない二人を注意する。

 そんなエレンの言葉をニヤケ顔で聞いていたケント。


 だが、その直後に何かの気配を感じ真顔に戻って足を止める。

 彼らは曲がりくねった通路を抜けて、広い部屋に辿り着いていた。


「敵だ……」ケントが皆に知らせるように小声で告げる。


 部屋の中央にいたのは、大きなネズミのような魔物が数体。

 このダンジョンで初めて遭遇した敵だ。

 三人の男女は各々の武器を構えて戦闘の準備をする。


 そして、ケントは自分の持つスキルのひとつ【ステータス鑑定】を使う。

 このスキルもチート能力のひとつ。

 相手の情報――名前、強さ、スキル等――を文字や数値として見破れるという。


 その結果、相手の意外な種族名がわかる。


「……何だ? 大ネズミのぬいぐるみ? スキルは……特に無いな」

「敵は九体だね。あたしがやっちゃうよ!」


 眼の前の大ネズミの動きから、敵の強さを判断して即座に動いたのはカナン。

 ケントが欲しい能力がないのならと、手にした細剣で魔物の集団に斬り掛かる。


 バシュッ! バシュッ !バシュッ!


 先頭にいた三体の大ネズミを反撃もさせずにあっけなく切り裂く。

 カナンの見せた動き。

 それは彼女の戦闘能力も、尋常でないほどの域にあることを示していた。


 歴然とした力の差を見せつけられた残りの六体の大ネズミ。

 きびすを返して一目散に逃げ出す。

 その際に口から何かを吐き出して、その場に置いていった。


「なんだ、簡単じゃん」


 逃げる魔物を見送りながら、手応えの無さに拍子抜けしているカナン。

 視線を移して大ネズミの残骸を見る。


 本来なら、倒された魔物は光に還るのだがその気配がない。

 魔力のかたまりの「魔石」だけが残るのだが、その様子もない。

 三体の大ネズミは切り裂かれた姿のまま。


「気をつけて! 光に還らないのは変だわ!」と慎重なエレンが忠告する

「いや、大丈夫だよ。こいつらはもう動くことはない」


 エレンの言葉をやんわりと否定するケント。

 彼はステータス鑑定で相手の状態まで見極めていた。

 その言葉を聞いて、カナンは動かない魔物を腰をかがめて調べ始める。


「……これって、ぬいぐるみだ。中に綿わたが詰まってるよ」

「俺の鑑定通りか……。だが口の中に魔石が入っている」


 カナンに続き「大ネズミのぬいぐるみ」を検分したケントが魔石を見つける。

 その横で、地面に散らばる魔物の残したモノをエレンがひとつ摘み上げる。


「――これも魔石だわ」と彼女が告げる。


 魔石は魔法道具の作成に欠かせない材料で換金がしやすい。

 そのためにダンジョン探索者や魔物ハンターの重要な収入源になっている。


 彼らはいつもと違う状況に、多少疑念を抱えながらも魔石を拾い集める。

 全ての魔石を集めてから「先に進もうか」とケントが女性二人に声を掛けた。


 エレンの顔からは疑念が消えていない。

 だからと言ってここに止まる理由もない。


 エレンは不安を内に秘めて、ケントの言葉に首肯する。

 対照的に、カナンは迷いのない顔で元気よく頷いて歩き出す。


 そして三人は部屋の奥にあったダンジョンの深部に向かう通路に入る。


 そこから先は二方向に道が分かれていた。



 新作「自作ダンジョンで最終ラスボスやってます!」始めました。

 お読みいただき、ありがとうございました。


※11月4日 後書き欄を修正


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