森の死闘
相変わらずの文字数です。
「大きく出たものだな、ウェンズデー・テルとやら・・・しかし、その手錠に縛られていては、死ぬことも殺すことも出来ないのではないか?」
ハルス・・・『沃野のハルス』の手錠は鋼鉄を超える強度を誇る合金によって作られている。
当然ながら、人間の腕で引き千切ることは不可能。
だが。
「それはどうかな!!」
テルは剃刀を手錠と手首の間に差し込み、刃を後ろに引いた。
するとどうだろう、剃刀は鋼鉄を超える合金をいともたやすく切り裂いてしまった。
「な、何という切れ味・・・!!」
「さあ脱出したぞ!覚悟しろよ、補佐官殿!!」
鎖を手放し、距離を取ろうとするハルス。
それは、悪手であった。
テルは手錠を巻き取り、その先に剃刀を持参していた荒縄の残りで柄を鎖にくくりつけ、その状態でハルスめがけて投擲した。
こうすればわざわざ取りにいかなくとも、簡単に回収出来ると考えたのだ。
「早速最速で死ね!!」
ハルスはそれを見て、死を覚悟した。
が、予想に反して彼は、生き永らえた。
「やれやれ、情けない奴だ。・・・右腕としては不適合だな」
彼の目の前には、見慣れた上官の姿があった。
帝国軍実地部隊第六号・マルティナ隊隊長『女傑のマルティナ』である。
「私たちには任務があるのだ。・・・敵の方から獲物を放ってくるなど、またとない好機。だからこうして」
マルティナの手には、鎖にくくりつけられた剃刀が。
「キャッチするのが筋だろう。・・・たったこれだけで、任務は完了なんだから」
彼女は荒縄をほどいて、見事剃刀を奪取した。
「!!し、しまった!!」
テルは鎖を引き戻すが、もう遅い。
そして戻ってきた鎖の先には、剃刀の代わりに爆弾が。
「死ぬのはそっちだ、マヌケ」
迷いの森に、爆発音がこだました。
「よし、回収っと。・・・もしかしたら、あいつはコレを盗んだのかもしれん。ということは、コレはディバイドを誘き寄せる餌になるな・・・」
マルティナはそう言いながら、剃刀を見る。
?
剃刀が、光を放ち輝いている。
「な、何だ・・・?」
彼女の身体がその光に照らし出された、その時。
彼女はその身を、九回に渡って切りつけられた。
今回は誰も死にませんでした。
やったぜ。